クラスメイト
「ってことがあったんだよ」
《もうすでに喧嘩腰なのねあなた達は……》
挨拶に行った日の夜、部屋に届いていた黒いズボンに白いブレザーの制服に細工をしながら今日あった出来事を電話で香苗さんに伝えた。つうか、白い上着ってホストじゃないんだからさ……
「そういえば、なんか俺の情報を結構持ってたんだけど知らない?」
《それは、たぶんおじいちゃんのせいだと思うわ》
「どういうことさ?」
《なんであなたは書類審査だけで合格したかわからない?おじいちゃんが詳細なデータを渡して無理矢理ねじ込んだみたいよ?》
「マジか!あの爺さんはどんだけ俺をこの学校に入れたかったんだよ!」
まさかの、裏口入学に持っていた針を落として叫んでしまった。 確かに、葵や夏奈は試験をやったって言ってなんで俺はいいの?って思ったけどまさかそんな……
《まぁ、良いじゃない。だってそこなら『あれ』の成績は関係ないじゃない》
「……そうだけどさ~、いくら俺はだって思うことはあるんだぞ?」
《まぁ、頑張ってトップを目指しなさいよ。あなたなら出来るから》
俺が、うなだれていると電話口から励ましの声が聞こえてきた。ヤバイな、弱ってる時に優しくされると惚れてしまいそうだ……
《そういえば、有『美恵』には会った?》
「誰だそれ?」
《私の同級生なんだけど、今はその学校で担任をやってるのよ。もし会うようだったら、挨拶くらいはしておいてね》
「ん?担任、ちょっと待てよ」
今日、オッサンから貰った書類を開いてみると確かに担任の欄に『若月美恵』の名前が載っていた。
なになに、クラスは……ん?これは……
「香苗さん、多分すぐに会うことになりそうだよ」
《なんで?》
「そりゃあ、なんせ俺の担任だったからな」
《え、本当に?……可愛そうに、ストレスで死なないといいんだけど》
「オイ!どういう意味だよ。まるで俺が問題児みたいな言い方だな」
全く失礼な話しだ、俺ほど態度が良い生徒はなかなかいないぞ。葵を見て見ろよ!常日頃厄介事を持ち込んで来やがったぞ。
《あなた、今自分は素行が良いと思ってない?》
「香苗さん、いつから心が読めるようになったんだ?」
《あなた、馬鹿でしょ?あなたほどの問題児はこの世にいないわよ!》
「……はい?」
あれ、なんかおもいっきり叫ばれたんだけど……俺が自分からやったことなんて、ビニールハウス付きの畑を作ったくらいだぞ?それくらいは誰でもやるよな?
ほかにもなんかあった気がするけど基本は葵のせいだから俺じゃないよね?
《忘れたとは言わせないわよ!あなたは月に五回は警察にお世話になっていたでしょうが!》
「いや、あれは俺のせいじゃねえよ。向こうから面倒がやってくるんだって!むしろ俺は被害者だ!」
何が悲しくて、毎回毎回外出する先々で面倒事に出くわさなきゃならないんだよ!そのせいで、月見署の署長には名前まで覚えられて連絡先まで交換させられたんだぞ?
《それは、あなたが何でもかんでも首を突っ込むからでしょ!少しは心配するこっちの身にもなってよ……》
「……悪い気をつけるよ」
全く、こう言うしかねえだろ?俺だって突っ込みたくて突っ込んでるわけじゃねえんだから……
だから、そんな泣きそうな声で言うなよ……
《本当にわかったの?もう、有が病院に担ぎ込まれるのを見るのは嫌だからね!》
「了解、怪我はしないようにするよ」
《私が言いたいのはそんなことじゃないんだけど……》
「あ~、そろそろ遅いし続きはまたにしないか?また寝坊しちまうぞ?」
《ちゃんと起きます!もう、馬鹿にして。それじゃお休み、また明日ね。くれぐれも美恵には迷惑かけないようにね~》
「はいはい、わかったよ。それじゃまた明日な、お休み」
まさか、こんなに長く電話することになるとは……壁に掛けてある時計を見ると二本の針が真上を指したところだった。
というか、さっき『また明日』って言ったけどまさか、毎日電話するのか?これは、無料通話のプランに加入しておいて正解だったな。
俺は、細工の終わった制服をハンガーに掛けると、スリープ状態のパソコンを起動しメールを確認して寝る事にした。
「さて、明日からは俺も高校生か~」
この学校では問題が起きない事を祈るけど……葵がいる時点で無理だよな~
フラグが立った気がしたが気にせずにベッドに入って俺は電気を消した。
「大丈夫だよね⁉」
ピピピッピピピッピ
目覚まし時計のアラームで俺は、いつも通り目を覚ました。
「ふわ~あ、さってと。もうちょい寝たい気もするけど起きるかね」
枕元に用意した制服に着替えながら時計を見ると、現在時刻は5時半、これは実家の手伝いをしていたときからの習慣になっている。実家で暮らしていたときは、朝の仕込みをしてから毎日大量に送られて来るメールをチェックしていたが、今は仕込みが無いので優雅にコーヒーを飲みながらパソコンに向かえる。
その前に、洗濯機を回す事を忘れてはいない。朝食を作ろうにも冷蔵庫の中には調味料しか存在しない。つか、食材ってどこで買うんだよ!こんな山ん中にスーパーなんてねえぞ?
まさか、学食のおばちゃん達の殿様商売か?だとしたら『動く』しかねえな……
メールの確認をしてパソコンをスリープ状態にし、椅子の上で伸びをしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
《有、起きてるでしょ?学食に朝ごはん食べに行くよ!》
《葵!うるさいですよ、ここは家じゃないんですから自重しなさい》
時間は六時、そろそろ連絡は来ると思っていたがまさか俺の部屋まで来るとは……一応ここは男子寮なんだけどな。
椅子から立ち上がると、財布と携帯をポケットに入れ部屋鍵を持ち玄関先で言い争いをしている二人の元へ向かった。
食堂で、夏奈と俺、葵の制服の色が反転していることに気づき、夏奈が葵の制服を奪おうとしたり、周囲から多くの視線を浴びたり、朝食に疑問を持ったりとなんだかんだ忙しい朝を過ごして俺は今『専門科』の職員室にいた。
「えっと、君が月見有君でいいんだよね?」
目の前には、担任となる若月美恵さんがいる。彼女は身長が香苗さんより小さく一五〇センチほどしかないように見える。それに動きやすいように少し癖のある黒い髪の毛をショートカットにしていてどちらかというと可愛らしい女性だ。
なんか、顔がこわばってるけどどうしたんだ?少々気になることがあったが俺はきちんとした挨拶を行うことにした。
「はい、このたびこの学校に編入してきました月見と申します。至らぬ点も多いと思いますがどうかご指導ご鞭撻の方よろしくお願いします美恵先生」
なぜか、余計に顔を引きつらせたんだけどなぜ?【初対面の人にはとりあえず猫を被る】月見家の家訓が通じないのか?
「ごめんなさいね、香苗からは『暴虐武人な態度をとるから気を付けるように』って言われてたから?」
「いえ、お気になさらないで下さい。それはきっと彼女の悪戯でしょう、僕の方からも注意しておきますから」
まったく、香苗さんにも困るな~、人間関係は初対面が大事なのに。
「(うわ~、この子ホントに猫被ってるよ香苗の言ったと通りだし)」
「はい?すみません考え事をしていたので聞き漏らしてしまいました。なにかおっしゃいましたか?」
「気にしないで、そういえば校長の方からも話があったと思うけど君は私が担任をしている『D』クラスになるんだけど……仲良くしてね?」
「なぜそんなに泣きそうな顔になるかわかりませんけど、自分は人と仲良くなるのは割と得意なので大丈夫だと思います」
そういった瞬間、若月先生の目には涙が浮かび満面の笑みを浮かべて俺の手を両手で包んだ。
「本当⁉お願いね!」
「え、ええ」
なんなの、そんなに喜ぶことか?なんか鼻歌まで歌いだしたぞ、え!スキップまで?なんかスゲー怖いんだけど……
俺は、終始びくびくしながら後をついていくしかなかった。
「ここが、今日から君が勉強する教室よ?」
「ここか……」
1―Dと書かれたプレートが下がっている教室の中からは、不自然なほど物音が聞こえてこなかった。
「じゃあ、行きましょうか?」
「はい」
俺の返事と共に、若月先生が扉を開けた。このとき俺はクラスメートに対して期待を大きく持っていた。
「はい、みなさん今日からこのクラスで一緒に生活する仲間を紹介します。じゃあお願いね?」
「えっと、月見有と申しますよろしくお願い「クルッポー」しま……は?」
なぜにハトが飛んでる?というか制服着てるやつ少なすぎるだろ!なんだよ、窓際にはメイド服着て紅茶飲んでる奴いるんだけど⁉ちょっと待て!迷彩服着て机の上に枕出して寝てる野郎、腕の下から銃っぽいのが見えてんですけど?それに、なんかシルクハットからめっちゃハト出してるのがいるんだけど?おい隣の金髪何とかしろよ!ほらあの茶髪の子怯えてるじゃん!あれ?なぜに注射器を……なるほど睡眠剤かとんでもない威力だな。
「すみません間違えました」
あれだな、ここは世界ビックリ人間コンテストの会場かな……俺の教室ってどこかな?
「まってよ!月見君?」
「先生すみません僕には理解が追いつきません」
「あら?転校生さんはお帰りになるのかしら?」
俺が、若月先生を引きはがそうとしているとメイド服を着た釣り目でショートカットの美人が声をかけてきた。
「いやなんて言うか……」
「まったくはっきりしない人ね、これだから童貞はダメなのよ」
「はい?」
俺の気のせいか、顔に似合わずとんでもない事言われたんだけど?初対面だよね?
「聞こえなったの、それとも頭が弱くて理解できなかったのかしら?」
「いやいやいや!いきなりのことでびっくりしたんですよ、まずお名前から聞いてもよろしいですか?」
「なに、いきなりこのわたくしを口説こうとしてるの?百年早いわよ。それに人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんでしょ?」
「いや、そんなつもりはないですけど……自分は月見有ですって、俺さっき名乗ったよな!なんでもう一回名乗らなきゃいけないんだよってかお前は、初対面の奴にいきなり暴言から入るのか⁉そんなやつ誰も口説かねえよ!」
俺は、つい被っていた猫を脱ぎ捨ててメイド女に食ってかかった。あ~あ短い猫かぶりだったな~、そういえばうちの家訓って基本十分くらいしかみんな守れないんだよな。なんでだろ?
「あら、本性を出したわね?この香坂瑠璃を口説こうなんてホントいい度胸ね」
「だから、てめえなんて口説かねえって言ってんだろうがメイド女!」
「あらあら、人は見かけで判断するなんて屑がやることよ?そこのとこどう思うかしら」
「じゃあ、あなたはなんなんですかんね、香坂さん?」
「見てわからないの?その眼はビー玉かしら、わたくしはメイドですよ転校生さん」
「あってんじゃねえか!なんで屑呼ばわりされたんだよ俺は!」
まさか、こんな女がいるなんて葵並みに面倒だぞ?というかほかの奴は止めろよ、若月先生なんて椅子に座って虚ろな目で外眺めてるし。
「オイ、あの転校生すげぇな香坂とまともに言い合ってるぞ」
「たしかに、このクラスの人なら心折られておしまいなのに言い返してるからね」
「これはもしかして、『問題児たち』を何とかしてくれんじゃね?」
なんか、数人を残してクラスの奴が固まって話てるんだけど何取り残された人はなんなの?
「ああそうだ転校生さん?質問してもいいかしら?」
「なんだよ、ていうか名乗ったんだから名前で呼べよメイドさん」
「わたくしが名前で呼ぶのは人間だけですよ転校生さん」
「俺は人間ですらないのか⁉」
「はは、ツッキーおもしれえな!ルリちーとそうやって話せる奴は少ねえんだぜ?」
そういって声をかけてきたのは、金髪でヘッドホンを首にかけているチャラそうな男だった。
「俺は、雪本海斗。一応スパイやってたんだ。ツッキーは何で入学したんだ?」
「え?俺は一応家事ってことになってるけど……今スパイっていった⁉」
「あら、転校生さんはメイドのわたくしを差し置いて家事なんてほざくんですか?」
「何がほざくだコラ!ってか今スパイ「コロコロ」って……ねぇ、なんで手榴弾が転がってるのかな?」
「あ、ごめんそれ、おれの、君驚かないんだね?不思議、おれは、花咲亜貴よろしく」
と、さっきまで机で寝ていた迷彩服の寝癖頭で寝ぼけてるような表情の男が俺に挨拶をしてまた席に戻っていった。
「なんなんだ?っつ誰だよこんなとこにカッターおいてそのままの奴は……」
怒涛の勢いでいろんなことが起きて少し休むために、近くの机に手をつくとおいてあったカッターで手を
切ってしまった。
「絆創膏どこにしまったっけか?」
「あ、あのこれあげます」
「え?あ、ありがとう?っひ」
「っきゃ!」
「あ、ごめん脅かすつもりじゃなかったんだよ……」
「あの……なんで姫那の方を見ないんですか?」
「いや、その実は俺茶髪が怖いんだよ……」
「そうなんですか……姫那と一緒ですね、姫那も人と話すのが苦手なんです」
そういって、俺の指に絆創膏を巻いてくれた子は、茶髪で体の前におさげを垂らした背の小さい可愛らしい子だった。
「姫那は、七尾姫那っていいますよろしく」
「ああ、よろしく」
俺たちは、背中合わせでそう挨拶を交わした。あれだね、いい加減この『茶髪恐怖症』直さないと不味いな。こういう時はカウンセリングでどうにかなるもんなのかね?
「あらあら、転校生さんは姫那さんを手籠めにしたようですねとんでもなく手が早いですね汚らわしい」
「なあお前はさっきから喧嘩売ってんの?」
「いいえ、わたくしは見たままのことを言ってるだけですが、お気に障りましたか?」
「すっげー、ツッキーもうヒメと話してるし!」
「ねえ、君もさっきから何言ってるのさ?」
「君じゃなくて、海斗って呼んでくれよツッキー!」
「あら、金髪とも仲良くなった見たいですね、まさか男でもいいなんて不潔ですね」
「もう!なんなんだよお前は!」
「じゃーんうさちゃんでーす!」
いきなり、俺の目の前に赤い目が可愛らしく、何ともうまそうなウサギが差し出された。なに?調理していいんですか?
「はあ⁉誰だお前!」
「ウチの事知らないの?折角クラスメートになったからマジックでもしてあげようと思ったのに!」
「タイミング考えろよ!なんで今だよ!つか最初にもハト出しまくってたよなお前!つうか、知らねえよ!今日が初対面だろうが!」
「お前じゃないよ。ウチは、八実アイラっていうのよろしくね?」
そういって、手を出してきたのは綺麗なプラチナブロンドの髪を頭の横で一つにくくった楓よりも背の小さい女の子だった。
「あ~もう、タイミングが掴めん!」
「ウチもよくそう言われるんだよ~あ、これ財布ね?」
「お前の事だよ!ってこれ俺のじゃねえか!いつ取ったんだよ⁉」
再び差し出された手には、去年の誕生日に香苗さんから貰った俺の財布が乗っていた。
おい、マジでいつ取ったよ。もうこれマジックじゃなくて、どう贔屓目に見てもスリだよな?
最近のマジシャンは泥棒で生計を立ててるんですか?
俺は、目の前の少女を犯罪者を見るような目で見ながらそう考えずにはいられなかった。
「さっき握手したときにね、ウチのマジックすごいでしょ?」
「アイラさんのそれはマジックっていうよりスリですよね?」
「あ~瑠璃ちゃん酷いんだ~これだってれっきとしたマジックだよ!」
「けど、姫那もそれはなんか違うと思うよアイちゃん」
「アイっちはスパイにいいかもねその手口」
「おれも、ターゲットから情報奪う時頼みたい」
「ウチは泥棒じゃない!」
あれ?なんかコイツら仲良いのか、よく見たら、毒舌メイド服の瑠璃、プラチナスリのアイラ、注射器娘の姫那、金髪チャラ男の海斗、迷彩寝癖の亜貴、この五人なんかヤバそうだぞ?キャラが濃すぎて飽和してんだけど。周りも、『あ~あ問題児が集まりやがった』とか言ってるし。オイなんでみんな距離取るんだよ、普通は、編入生ってだけでちやほやされるんじゃないんですかね。
このままだと俺までコイツらと一緒にされそうだからな。秘儀フェードアウト!
「ツキ君はウチのマジックどう思う?」
あれ?失敗?普通に話かけられたぞ。これ、一応『師匠』のお墨付きをもらった術なんだけど……
「え?正直財布とるのはスリにしか思えなかったけど」
「あら、いたんですか転校生さん」
「……こいつには効いたのか」
「?なにか仰いましたか」
「いや、なんでもない」
失敗はしてないってことは、アイラってやつが特別に鋭いのか?いや、何人か気づいてるな視線感じるし。
何とも、怖いとこだな……マジで帰りたい!
「あの月見君?そろそろ次の事に進みたいんだけどいいかしら?」
「あ、はい」
そういえば、今って俺の自己紹介の時間だったな。あまりにいろんなことがあって忘れてたぜ……
「えっと、じゃあまず月見君の席なんだけど……あれ私、昨日机持ってきたよね?」
「先生、机なら邪魔だったのでわたくしが片付けておきました」
「香坂さんあれは使うって言ったじゃないですか⁉」
「けどいつ使うかは仰っていなかったのでいいかと、まあきっと転校生さんがご自身で運んでくると思いますよ?ねえ?」
「場所も知らねえのに⁉無茶言うなよ!」
「仕方ありませんね、じゃあ後で用意して差し上げますわ。それまでは空気椅子と空気机をご利用くださいませ」
「なんだよ、空気机って!今持って来いよ!」
「先生、転校生さんが早く持って来いって騒いでいますわよ?」
「てめぇに言ってんだよ!」
なんで、編入一日目からこんなに疲れなきゃならんのだ!
何とか、机が用意されやっと話が進む。
机は誰が持て来たかって?そんなん俺に決まってんだろ!何が悲しくて編入初日に自分で机と椅子を用意しなくちゃいけないのか教えてもらいたいもんだ!しかも席は、メイド女の隣だぞ⁉陰謀としか思えん。
「えっと、落ち着いたみたいなので改めて。今年も皆さんの担任となりました若月美恵ですよろしくお願いしますね?」
そういって先生はにこやかに笑って挨拶をした。というか今年もってことは中等部から高等部に移ったのに担任が変わらなかったってことだよな?なんだろう、すごい苦労人な気がするんだけど……
「それでは、まず初めに高等部での専科生のカリキュラムについて説明します。基本的には中等部の時と変わりはありませんが、『選択科目』という授業が時間割に組み込まれることとなります。これは個人で自身に必要だと思われるものを選択して学んでもらいます。専科の皆さんは基本的に実践的な授業になると思いますが……まあ、このクラスの皆さんはくれぐれも問題だけは起こさないでくださいね!……コホン。えっと、それでは進級試験についても軽くお話しておきます。まず、数学や英語などといった一般科目は筆記試験を行いますが……よほどのことがない限り大丈夫でしょう。そして、専科の試験では実地試験として、実際に稼いで貰うことになります。初期資金はランダムで決まり、それを期限内に何倍にできたかによって合否を判定します。ただ、この試験をパスできない方は退学という大変厳しい処分となります。以上ですが何か質問はありますか?」
「先生、それって個人単位でやるんですかね?」
俺は、手を挙げ発言をした。やっぱり発言するときは手を挙げるのは常識だよな。そうでもしないと誰が喋ってるかわからないし。
「あっそうか、月見君は編入生だからわからないか~この実習では人との協力ってのが重要になるから数人のグループ単位でやるんだよ。そのグループ分けは今から皆でやってもらうね?」
『グループ分け』といった言葉が出た瞬間にクラスの雰囲気が変わった。なんなの皆、牽制しあってるけどそんなに殺伐としたもんなの?班分けと同じだろ?
「それじゃあ~人数が月見君が入ってちょうど四二人になったから六人グループを七つ作って、できたとこから報告して?」
そう若月先生が言い切った瞬間、クラスが揺れた。
「「「「できました!」」」」
「はい?」
「……やっぱりこうなったかな?」
いや、皆早すぎでしょ?話し合いとかしてるの見てないんだけど、その結束力はどこから来るんだよ?っていうか、俺は誰と組むんですかね?
「じゃあ、残りの六人で最後のグループでいいかな?」
「残り?……え?」
俺は、周囲を見渡して絶望の淵に立たされた。
「おう、ツッキーとアッキーと一緒か~よろしくな!」
「ZzzZzz」
「あら、変態と一緒になるなんてわたくしの運も尽きたようですね」
「いいじゃんいいじゃん、仲良くやろー」
「姫那は、えっとその頑張るです」
「すみませんチェンジで‼」
なんで、コイツらと一緒なんですかね⁉オイテメェら後で裏行こうぜ?俺を生贄に捧げたこと後悔させてやるよ!
「諦めて下さい」
「ノータイムで返事しないで下さいよ先生!しかも、最後に疑問詞ついてなかったですよね?」
「え~それでは、グループの順番をくじで決めるので代表者出てきてくれますか?」
「シカトですか⁉」
俺の叫び声は、クラスの喧騒に紛れて消えた。香苗さん、編入初日から限界を迎えてるんですけど僕はどうすればいいんですか?
ここまで読んでいただきありがとうございました。




