第4章 4
「民の為だというなら、同じ国の者らと戦うのだ?……」
蒼琥は厳しい顔で郭瑜に尋ねた。
郭瑜は目の前の地図を見詰めながら
「そうだな…… お前が言う通りだ。だが、この国は
今、悪しき者らにより、壊れている! 小狼様はそれを
元の正しき、民が平和で暮らせる国にしたいだけのだ……
我らはそれに共に協力をしているだけだ。
お前はここで何をしたいのだ?……」
と逆に蒼琥に訊いた。
答える事が出来ず、立ち去ろうとした蒼琥は
言うべき事を思い出し、
「そうだ。この硬直状態を打破したいなら、
この沖に暗躍している海賊らと手を結ぶと良いぞ」
というと部屋を後にした。
蒼琥が立ち去った後、目の前に広げてある
地図を見詰めながら、蒼琥が言った事が気になり、
郭瑜は手下の者に近くの海を探らせた。
確かに蒼琥が言ったように近くの海には
雷神丸が率いる海賊集団がいた。
その事を郭瑜はすぐさま、劉・小狼らに伝えると
「なるほどなぁ…… 話はわかった。
だが、その者らを説得し、我らに協力をしてもらえるのか?」
劉・小狼は郭瑜にそう言うと郭瑜は少し顔色を
曇らせながら
「さあ。わかりません…… ただ、蒼琥殿が彼らの事を
知っているようですから…… もしかしたら……」
と言った。
郭瑜の話を訊いた劉・小狼は近くの海の海賊・雷神丸に
協力を仰ぐ事にしたがその使者に蒼琥をあてるのには
少し不安があり、郭瑜らと相談の上、海賊・雷神丸の使者には
孫嘉にし、その護衛に蒼琥をあてた。
郭瑜の命(令)を受けた孫嘉と蒼琥は準備を整えると
近くの海の海賊・雷神丸のもとに向かった。
孫嘉らが雷神丸の隠れ家に近付くと
「お前らは何者だ?……」
と言い、孫嘉らの前に雷神丸の配下の 風鬼が
自分の手下を引き連れ、現れた。
「風鬼の兄者。久しぶり……」
蒼琥は親しげに風鬼に挨拶をした。
「おおぉ…… その声は風の一族の蒼琥か!」
風鬼は久しぶりに聞く懐かしい顔に
顔をほころばせ、喜んだ。
蒼琥が知り合いだった為、風鬼は孫嘉と蒼琥を
自分の頭【かしら】の雷神丸のもとに連れて行った。
雷神丸は風鬼が突然、自分の元に孫嘉らを
連れて来たことを驚きながら
「風鬼。その者らは?」
と風鬼に孫嘉らのことを尋ねた。
風鬼は自分が連れて来た孫嘉らのことを一瞬見ると
再び、雷神丸の方を見ながら
「頭【かしら】に会いたい者らです!」
と言うと孫嘉は雷神丸の前に歩み出ると
「劉・小狼様の使いでやってきました!」
と雷神丸にそう言った。
雷神丸は劉・小狼らがいる、遥か遠くの
三埜宮の関を見ながら
「ほぉ…… 劉・小狼の使いね……
まあ。客人を中に……」
というと自分らの隠れ家の中へと孫嘉らを招き入れた。




