第9話 光の架け橋と、その対価
鎧豚隊長と浪人生メガネの猛烈な攻撃は、まだまだ続いていた。
「待ってください! 殴るのをやめてくれたら、ここからミーナミにすぐ行ける方法を教えますからぁ!」
カクガリクンが涙目で叫ぶ。
「ほう、どんな方法だ?」
「おしっこで虹を作って、その虹で作った橋に乗ると、ミーナミまで瞬間移動できるんです!」
「……は?」
オレと鎧豚隊長の思考が完全に停止した。
何を言っているんだこいつは。許されたいからって、あまりにも適当すぎる嘘を吐くんじゃない。
「適当な嘘をつくな!」
浪人生メガネが冷酷に言い放ち、二人の攻撃がさらにエスカレートする。
「嘘じゃないです! 論より証拠ですぅぅぅ!」
カクガリクンは叫ぶと同時に、その場で凄まじい勢いでおしっこを放出した。
するとどうだ。空中へと噴射された液体が太陽の光を浴びた瞬間、キラキラと輝きながら、なんと高速道路くらいデカい超巨大な『虹の橋』が天空に向かって架かってしまったのだ。
マジかよ。本当に作りやがった。汚ねえ虹だな。
「……しかし、あの虹に乗って本当にミーナミに瞬間移動できるんですかね? 非常に怪しいです」
腕組みをした浪人生メガネが呟く。流石はメガネをかけているだけあって、この狂った状況でも分析が冷静だ。
「よしカクガリクン、お前がまず先に乗って、ミーナミに行ってきたという証拠を持ってこい!」
隊長が命令すると、カクガリクンは「お安い御用です!」と、下半身丸出しのままおしっこの虹の橋へと飛び乗って滑り去っていった。
――それから数分後。
「ただいま戻りましたぁ……」
虹の橋の上から、ボコボコにされて満身創痍になったカクガリクンが帰ってきた。
しかも、その後ろには謎の男が一人立っている。
筋肉ムキムキの坊主頭で、肌のサブレ色がまるで『黒糖パン』みたいに真っ黒な、ビキニパンツ一丁の男だ。
男は静かに胸を張り、オレたちに向かって名乗った。
「私はミーナミ管轄のガーディアン、名前はホワイトだ」
(真っ黒なのにホワイトかよ!!)
オレの心の中のツッコミが炸裂する。名前と肌のギャップが激しすぎるだろ。
「ホワイトさん、うちのカクガリクンが一体何をしたんですか?」
「そこの男が下半身丸出しでこちらへ向かって走ってきたため、猥褻物陳列罪にあたるとして逮捕した。抵抗されたので正当防衛を執行した次第だ」
ホワイトは大真面目に主張するが、オレはカクガリクンの姿を見て絶句していた。
カクガリクンの顔は、蜂にでも刺されたのかというくらいパンパンに腫れ上がり、左腕が不自然な方向に折れている。
(いやいや、正当防衛なのにボコボコにされすぎだろ! 完全に過剰防衛じゃねえか! つーかホワイト、お前のそのビキニパンツ一丁の格好も猥褻物陳列罪ギリギリだろ!)
カクガリクンは確かにミーナミへ行った証拠を持ってきてくれた。
だが、ミーナミの警察(真っ黒なホワイト)をそのまま連れてくるという、この上なく厄介で最悪な証拠を連れてきてしまったのだった。




