第8話 血の洗礼、あるいは狂気への目覚め
カクガリクンが馬を馬刺しにして食っちまったせいで、オレたちの足は完全に消滅した。
「おいカクガリクンッ! お前が馬を食ったんだから、お前が今すぐ代わりの馬を用意しろ!」
「そうですよ! このまま42キロも歩かせる気ですか!?」
鎧豚隊長と浪人生メガネが、顔を真っ赤にしてカクガリクンにブチギレている。当然だ。
だが、怒られたカクガリクンは、あろうことかフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「えー、やだ。代わりの馬を探すなんて面倒くさいじゃないですかぁ」
逆ギレである。
この態度に鎧豚隊長の堪忍袋の緒が完全に切れた。
「私の命令に背くか! ならば力ずくで言うことを聞かせてやるわッ!」
まさかのバトル勃発である。
ガチャリと金属音を響かせ、鎧豚隊長が懐から取り出したのは――なんと、一本のしなやかな『ムチ』だった。
(いやいや、武器がムチって嘘だろ!? 男戦士の武器つったら普通はドデカい斧とか大剣だろ! ムチが武器なのはエロいボディラインをしたセクシーなお姉さん系キャラの特権だろ! なんでむさ苦しい鎧のブタがムチ握り締めてんだよ!)
オレのツッコミを置き去りにして、隊長は「ぶちのめしてやる!」とムチを振り下ろした。
ビシィッ! と鋭い音が響き、カクガリクンの体にムチの痛撃が叩き込まれる。
「あ、うあぁっ……!」
カクガリクンが声を上げてのけ反る。流石に効いたか、と思いきや。
「はぁ、はぁっ……! 隊長、もっと……もっと激しく叩いてくださいぃっ♡」
カクガリクンは赤面しながら、プロレスラー体型の巨大なケツをグイッと隊長の方へ突き出した。いつの間にかズボンを脱いで下半身丸出しになっていやがる。完全に興奮していやがる。
「なっ、この変態めッ! ならば僕がトドメを刺します!」
今度は浪人生メガネが、どこから取り出したのか燃え盛る『ロウソク』を手に、カクガリクンの前に躍り出た。
メガネは冷酷な目で、カクガリクンが突き出した生ケツに向けて、ドロドロに溶けた熱いロウを躊躇なく垂らしていく。
「あはぁっ! ありがとうございますぅぅぅッ!!」
熱いロウを尻に注がれたカクガリクンは、恍惚の表情を浮かべながら口元からダラダラとヨダレを垂らしていた。
オレは、グリップの新聞紙を握り締めたまま、ただただ遠い目をすることしかできなかった。
(セツコ、これは攻撃やなくてSMや……)
南の都市ミーナミへの過酷なロードムービーが始まる前に、オレの目の前で始まったのは、ただの熱烈な緊縛調教プレイだった。




