第7話 喪失の獣(けもの)と、歩むべき明日
「おいおいおい待て、鎧豚隊長。まさかとは思うが……その42.195キロ、まさか徒歩で行くのか?」
オレは思わず問い詰めた。いくら一介の剣士に目覚めたオレでも、ウンコを握ったままフルマラソンを走る体力はない。
「流石に徒歩で行けるわけがないだろう」
「馬車で行くに決まってるだろうが」
鎧豚隊長と浪人生メガネが、心底呆れたように言った。
あ、まあそうか。異世界にもちゃんと馬車という概念があって安心した。
オレたちは全滅したギルドの外へ出た。
しかし、オレの目に飛び込んできたのは――馬車の車部分しかない無惨な光景だった。
……あれ? 馬は?
「おい、どういうことだッ!?」
隊長が慌てて周囲を見回すと、見張りをしていたガーディアンズ一番の男が口を動かしながら現れた。
プロレスラーみたいに角刈りポッチャリの、ゲイ界の橋◯環奈みたいなやつだ。
この、でかい食いしん坊のカクガリクンが、信じられない報告をしてきた。
「お腹が空いちゃって、馬を食べてしまいました。でも安心してください、オレ、調理師免許があるから馬刺しにして美味しく食べました」
「美味しくいただきました、じゃねえよ!!」
なんだその腹立つ報告は! 調理師免許を持っていれば馬を食っていいわけがあるか!
馬がいない。あるのはただの重い木の車部分だけ。
つまりオレたちは、42.195キロという絶望的な距離を、己の足だけで駆け抜けなければならなくなったのだ。
これではフルマラソンならぬ、ただの過酷な『フル徒競走』をしないといけない。オレはグリップの新聞紙を握り直しながら、遠い南の空を仰いだ。




