第69話 相違
興味がないと言われた事実が、どうやらホワイトの胸には地味に突き刺さっていたらしい。
肩を落としたまま、しばらく誰とも目を合わせようとしない。普段のやかましさが嘘のように、その場に立ち尽くしている。
さすがに可哀想になってきた。
「そんなことより」
オレは話題を変えるように割って入った。
「ヘリックス博士が、ホワイトを使ってボワイドーを造ったって話だろ。そっちの方がよっぽど重要なことじゃねえか?」
その一言で、ホワイトの顔がぱっと上がった。沈んでいた目に、一瞬で生気が戻る。
「何故だッッ!」
ヘリックス博士へと勢いよく詰め寄った。
「何故、私を元にボワイドーを造ったッ! 理由を言えッッ!」
「ガーディアンズの中で、一番でかくて強そうだったからです…。」
ヘリックス博士が、特に悪びれる様子もなくあっさりと答えた。
「……ふっ」
ホワイトの口元が、わずかに緩んだ。腕を組み、まんざらでもなさそうな顔で軽く胸を張っている。
「コイツ、褒められたの初めてなんじゃねえか?」
オレが隣で呟くと、ロジナスも同意するように頷いた。
「確かに、あんな得意げな顔、初めて見たかも…」
だが、ヘリックス博士の話は、そこで終わらなかった。
「十一年前、ホワイトさんの眉毛を、ガーディアンズの隊員から頂戴しましてな。それを元にボワイドーを造ったのですが……」
一拍置いて、ヘリックス博士は心底がっかりした様子で続けた。
「最初は、見た目ほど強くなかったんです!」
「コイツ!殺すッッ!」
ホワイトが拳を握りしめ、鬼の形相で殴りかかろうとする。
「待て待て待て!!」
アーマーが慌てて飛びつくように腕を掴んだ。
「落ち着けって! まだ話の途中だろ!」
バウンスも反対側から体を押さえにかかり、どうにか暴走を食い止めた。
「だから、筋肉強化剤を打ち続けたところ、防御力は最強になりました。しかし攻撃力は、誰に似たのか、あまり強くならなかったのです…。」
ヘリックス博士は淡々と、まるで実験レポートでも読み上げるかのように続ける。
「コイツ、やっぱ殺すッッ!」
再びホワイトが暴れ出し、今度はさっきよりも力が強くなっている。アーマーとバウンスが二人がかりで、必死になだめていた。
「そういや、殺すで思い出したが…」
その騒ぎをよそに、オレは冷静に話を戻した。
「ヘリックス博士、レンズを殺さなくていいのか? 気絶してる今なら、絶好のチャンスだろ!」
「大便くん、焚き付けてなくない?」
ロジナスが胡乱げな目を向けてくる。だが止める気配はなかった。
「そうだ!殺しに行こう!」
ヘリックス博士が目を輝かせ、白衣の裾を翻しながらレンズのいる方向へと猛然と駆け出した。
「そうだ!京都に行こう!みたいなノリで言うな!」
オレは思わず全力でツッコんだ。衝動に身を任せすぎだろう、この博士は。
「レンズが殺されねえよう、オレたちも追うぞ!」
アーマーが叫び、一行は慌ててヘリックス博士の背中を追いかけ始めた。
洞窟の少し手前。
そこには、燃え尽きたカクガリクンが、まるで掛け布団のようにレンズの上へ覆い被さる形で倒れていた。気絶したまま、両者ともぴくりとも動かない。
その無防備な姿を前に、ヘリックス博士が白衣の懐へと手を差し込んだ。
ゆっくりと引き抜かれたのは、刀身が淡く輝く、神々しい一振りの剣だった。
「この聖剣エクスカリバーのサビにしてくれるわ!」
重々しくそう告げながら、剣を正面に掲げる。
「なんで白衣のジジイが、そんな神々しい聖剣を持ってんだよ!!」
オレは思わず叫んでしまった。
「そこは見た目的に、医療用メスとかだろ!」




