第65話 鉄壁
握手を拒否された。
バウンスの手が、宙で行き場を失ったまま固まっている。
その瞬間だった。
「来ないなら、こちらから行くまでじゃよ」
ボワイドーが動いた。
左ジャブ。
連打。
容赦のない速さで、拳が突き刺さる。
「戦い方まで、ホワイトと同じじゃね?」
ロジナスが呆れたように呟いた。
「もしかして、ホワイトの生き別れの弟じゃねえか?」
オレも思わず口を挟む。
「親父みたいな見た目だが!」
「私の遺伝子で作られたサイボーグとかかも知れんッ」
ホワイトが真剣な顔で言い出した。
「子供みたいな事いうんじゃねえ!!」
アーマーが即座にツッコんだ。
そんなやり取りをよそに、バウンスは左ジャブの連打をまともに全て喰らい、地面へと沈んでいった。
「大したことないのう?もう終わりか?」
ボワイドーが鼻で笑う。
「オマエの攻撃がな。」
倒れていたはずのバウンスが、ゆっくりと立ち上がった。
「跳躍偏向」
短く告げると同時に、先ほど受けた左ジャブの威力が、そのまま倍になって撃ち返される。
ボワイドーの体が、大きく吹き飛んだ。
「攻撃力は、ホワイトより少し上くらいだな。大したことない。」
「失礼だぞ!」
ホワイトが怒る。
「つうか、問題は防御力じゃね?」
ロジナスが冷静に指摘した。
案の定、吹き飛んだはずのボワイドーがむくりと起き上がる。
傷一つない。
「なかなかやるな、少しだけ痛かったわい。」
ボワイドーが頭をポリポリと掻いた。
「バウンスじゃ無理だな!」
オレは腕を組んだ。
「オレか、もしくはロジナスが戦う!」
「ロジナスはともかく、大便は強くはないだろ!」
アーマーが即座にツッコんだ。
「役立たずの鎧豚に言われても、オレの心には響かないな」
「なんじゃ、ビビッて逃げる相談かのう?」
ボワイドーが煽ってくる。
「「「誰がビビッてるか!」」」
全員の声が綺麗に重なった。
「ロジナスがやるよ」
ロジナスが一歩前に出る。
「ボワイドー、可哀想にな。」
アーマーがボワイドーに向かって呟いた。
「ワシはタイプの女を殴る趣味はないぞ」
ボワイドーが余裕の表情で言い放つ。
「紳士じゃん? タイプってありがと。」
ロジナスが笑いながら答えた。
「でもジジイだし、ボワイドーの見た目タイプじゃないから」
言い終わるより早く。
神速のトーキックが、ボワイドーの腹部へと深々とめり込んだ。
ボワイドーの体が、地面に吸い付けられるように崩れ落ちる。
「最初からロジナスが行きゃよかったな。終わったことだし、ボイス達を起こすか。」
アーマーが感心したように呟いた。
だが、その直後だった。
「――素晴らしい蹴りだな」
ボワイドーが、何事もなかったかのように立ち上がった。
ダメージらしいダメージが、どこにも見当たらない。
「やっぱ、防御力バグってね?」
ロジナスの声に、諦めにも似た呆れが滲んでいた。




