第51話 粗末
白夜閃光を受けて地面に沈んでいたはずの白パーカーが、ゆらりと立ち上がった。
「……確かに、痛い」
そう呟く白パーカーの声に、思ったより余裕が滲んでいる。
「あれだけの一撃を受けて、まだ立ちあがるかッ!」
ホワイトが警戒するように身構える。
「痛みは感じる。だが、それだけだな。」
白パーカーは軽く肩を回すと、先ほどホワイトが放ったのと同じ構えを取った。右肩を突き出し、突進の姿勢を取る。
「え、まさか……」
ロジナスが嫌な予感を口にした瞬間、白パーカーが叫んだ。
「『白夜閃光』!!」
「なっ……!? オレの技を!?」
ホワイトが驚愕する間もなく、白パーカーのショルダータックルがその体に直撃した。
「グハアッ……!!」
ホワイトは大きく吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。先ほど自分が放った一撃よりも、明らかに重い衝撃だった。
「オマエ……今の技、私より……威力が上がってる……!?」
ホワイトが血を吐きながら、震える声で問いかける。
白パーカーは静かに首を横に振った。
「『跳躍偏向』――受けた攻撃を、そのまま倍にして打ち返す。それが俺の力だ」
「じゃあ、さっきの……」
ボイスが息を呑む。
「そうだ。オマエの白夜閃光を受けた分の威力を、そのまま倍にして返しただけだ」
白パーカーが淡々と告げた。
「……ということは、こっちが強い技を打てば打つほど、返される時はもっと強くなるってことか」
オレが顎に手を当てて呟くと、レンズが冷静に補足した。
「ええ。つまりホワイトさんの攻撃パターンは、今後この相手には一切通用しないということですね」
「な、なんという面倒な能力してるんだ……!」
ホワイトが顔を歪めながら、よろよろと体を起こした。
「そうだ、ホワイト! オマエが好きな『土をすくって投げるヤツ』しろ! アレならさすがに真似できねえだろ!」
アーマーがすかさずアドバイスを飛ばす。
「確かに……! あんな地味な攻撃、真似する価値もないはずだ!」
ホワイトが草原の土をすくい上げ、白パーカーへと勢いよく投げつけた。
「『跳躍偏向』」
白パーカーが静かに構えた瞬間、投げられた土が真正面から白パーカーの手に収まり、次の瞬間には倍量の土が、まるで散弾のようにホワイトへと撃ち返された。
「グハッ……!! 土の弾丸で追加ダメージだと……!?」
ホワイトが顔面を土まみれにしながら、その場に崩れ落ちる。
「アーマー、貴様のアドバイスのせいで余計ヒドイ目にあったぞッ!」
「し、知らん! まさか土まで真似されるとは思わなかったんだよ!」
アーマーが慌てて言い訳する。
「ホワイト!とりあえずビキニパンツを脱いで、粗末なブツを見せて相手が驚いている隙に攻撃しろ!!」
オレが真剣な顔で提案した。
「なっ……!? いや待て、それはさすがに……」
「文句言ってる場合か! やれ!!」
「わ、分かった……!」
ホワイトは意を決したようにビキニパンツを勢いよく脱ぎ捨てると、白パーカーの前に堂々と晒け出した。
「……な?」
白パーカーが一瞬、言葉を失う。
「これが……エリート隊長のブツ、か……」
その哀れみに満ちた沈黙に、ホワイトが得意げに口角を上げた瞬間だった。
「いつまでも帽子を脱ごうとしない頑固なドングリにしか見えないな…」
「なっ……!?」
その一言にホワイトが硬直した、まさにその隙を白パーカーは見逃さなかった。
白パーカーの膝が、無防備なホワイトの股間目掛けて容赦なく突き刺さる。
「ッッ〜〜〜!!」
ホワイトはその場に崩れ落ち、両手で股間を押さえながら、地面をのたうち回った。
「金的まで喰らってるじゃねえか……!」
アーマーが青ざめる。
「ただ、ホワイトのブツが粗末な事を敵にアピールしただけで終わったか…」
オレは、ほんの少しだけ申し訳ないフリをした。
「つうさホワイト、あの男の娘カフェでロジナスがカクガリクンを倒した技、使えばいいんじゃね?」
ロジナスが冷静にアドバイスを送る。
「あ、あの……顎に掠らせて、脳を揺らすやつ……!」
股間を押さえながらも、ホワイトはよろよろと立ち上がった。涙目のまま、震える拳を握りしめる。
「バカめ。勝てないと分かりながら、まだ立ち上がるか」
白パーカーが蔑んだ眼差しを向ける
「これで……終わりだ……!」
ホワイトが繰り出した拳は、白パーカーの顎先を紙一重で掠めた。次の瞬間、脳を激しく揺さぶられた白パーカーの体から、すっと力が抜ける。
「え、何だコレは…?身体の力が抜け……」
白パーカーはそのまま声もなく、崩れ落ちるように地面へと沈んでいった。




