第5話 名探偵の逆質問
「おい……! ならば貴様、その真犯人らしき奴の姿や特徴を見たか!?」
鎧が本体なんじゃないかってくらい金属に埋もれたブタ戦士が、焦ったように身を乗り出してきた。
フッ、素人め。ここでオレが「黒いマントを着た怪しい男でした」なんて適当な嘘を吐いたらどうなる?
「そんな男は街の検問を通っていないぞ」とか言われて、後から容疑者の幅が狭まり、オレの嘘がバレるリスクが跳ね上がるだけだ。一介の剣士たるもの、そんな二流のポカは犯さない。
「いや、見ていない。オレが来た時には、ただ静寂が包むギルドの真ん中に、この新聞紙に包まれたウンコしかなかった。それだけだ」
オレは頑なに『先客はウンコだけだった説』を突き通した。
正式には、聖なる教えの新聞(聖◯新聞ではない)に包まれたウンコだが、そこは重要じゃない。そして、ここからがプロの交渉術だ。オレは主導権を握るべく、逆にガーディアンズの連中へ向かって鋭い視線を投げかけた。
「むしろ、治安維持のプロであるお前たちに尋ねたい。過去の事例で、このような『ウンコを使った凄惨な大量殺人事件』の記録はなかったか?」
オレのブッ飛んだ逆質問に、ガーディアンズの面々がざわざわとざわめく。
その時、部隊の後ろの方から、メガネをかけた浪人生みたいな無精髭の男が、おずおずと手を挙げた。
「……あ、あの。そういえば、ここからずっと南にある都市『ミーナミ』で、最近ひどい異臭騒ぎがあって、実際に何人か死者が出たっていう噂を報告書で見ました」
グッドタイミング。神はまだ、オレを見捨てていなかったらしい。
「それだ……!」
オレはパチンと指を鳴らした。
「間違いない、その南の都市ミーナミの異臭騒ぎを起こした大量殺人犯が、今度はこの街に遠征してきたんだ! この事件に乗じるしかない!」
他人が起こした(かもしれない)本物の事件に、自分のケツから出た不祥事をそのまま全乗っかりさせる。
我ながらクズの極みみたいなライフハックだが、背に腹は代えられない。これでオレの無実(※大嘘)への道が開かれたのだ。




