第49話 希薄
レンズがすぐさま回復薬をアーマーへ注射する。
アーマーがゆっくりと目を開けた。
「……あれ? 親父とオフクロは?」
アーマーが寝ぼけたように呟く。
「どうやら、三途の川で亡くなったご両親と会っていたみたいですね」
レンズが淡々と説明する。
「逝ってしまうほどの蹴りをくらって、羨ましいです!」
カクガリクンが目を輝かせて言った。
「カクガリクンも、さっき死んでたじゃないですか」
レンズが呆れたように返す。
「もっと欲しいですぅ!」
カクガリクンが物欲しそうにねだる。
「さっきのボウガンの矢が心臓に刺さったままですから、抜いたら逝けますよ」
レンズがあっさりと矢を引き抜いた。
「ヤバいですぅ!」
カクガリクンの心臓から、大量の血液が噴水のように吹き出した。
「アーマーの喉に蹴り打ったロジナスが言うのも何だけど……レンズ、やってる事やばすぎ」
ロジナスが乾いた声でツッコむ。
「本当に、オマエが言うな!だな!」
ホワイトが呆れたように同意する。
「カクガリクンには、後遺症なしの回復薬もったいないので……1週間後に死にたくなる激痛がくるほうの回復薬を打ちますね」
レンズが躊躇なく注射器を突き刺した。
「本当、レンズは鬼畜だな…」
オレが心底そう思っていると、ボイスが焦った声を上げた。
「皆さん! 白パーカーを無視してません!?」
ボイスが慌てて指摘する。
「「「あー!」」」
全員が声を揃えた。
「オレを無視して、ワチャワチャしやがって」
白パーカーが怒りをあらわにする。
「仲間が全員やられたことより、無視されたことのほうが腹立つのかよ」
オレが呆れて言う。
「仲間?」
白パーカーが鼻で笑った。
「アイツらは仲間じゃない。金で雇われ、集まっただけだからな」
白パーカーが冷めた声で言い放つ。
「何か、闇バイトみたいだな」
オレが思わず呟く。
「闇バイト?」
白パーカーが首を傾げる。
「いや、何でもない」
オレは軽く受け流すと、話を戻した。
「金で雇われたってことは、雇ったヤツが黒幕だな」
「そうさ。オレたちを雇ったのは……」
白パーカーが言いかけたその時、真横からフッと人影が現れ、その肩を叩いた。
「白パーカー、話しすぎ」
現れた黒パーカーが、静かに制した。
「く、黒パーカーさん……」
白パーカーが露骨に怯えた声を出す。
「今更だが、コイツら呼び名が『白パーカー』やら『黒パーカー』やら、色で呼び合うのイイ加減だな」
オレが場違いな感想を漏らす。
「いや、今そこじゃないですよ、問題は!」
ボイスがすかさずツッコむ。
「急に現れたから、手品を使ったとみた。黒パーカーは手品師だな!」
ホワイトが自信満々に分析する。
「ホワイトはアホだな。黒パーカーはいきなり現れたんだぞ? 透明になれるマントか何かで隠れてて、それを使って今現れたんだろう」
焼豚のままのアーマーが、したり顔で反論した。
「どっちもアホですか!? 透明になれるマントなら、手品とカブってるじゃないですか!黒パーカーの能力ですよ!」
ボイスが頭を抱えてツッコむ。
「いや、ずっといたんだけど……」
黒パーカーが、少し気まずそうに呟いた。
「ずっと居たのかよ、存在感なさすぎ!」
ロジナスが噴き出した。
「存在感ないの、気にしてるから言うのやめろ!」
黒パーカーが慌てて制した。
「何人かで飲食店行った時、水もらえないヤツいるな。黒パーカーはそのタイプだ!」
オレが思わずツッコむ。
「それの究極みたいですね」
レンズが冷静に追い打ちをかける。
「やめろやめろ……」
黒パーカーが頭を抱えて呻いた。
「めっちゃ効いてるじゃん」
ロジナスが笑いを堪えきれない様子で言った。
「こんな目にあったのも……お前のせいだ」
黒パーカーがそう呟くと同時に、白パーカーの左人差し指を無造作に折った。
「うわあああッ!」
白パーカーの絶叫が響き渡る。
「すごい八つ当たりだな!」
アーマーが眉をひそめる。
「確かに、白パーカーは悪くないのにな」
ホワイトも同意した。
「痛いだろ?痛いのイヤだろ?なら、アイツら全員殺れ…」
黒パーカーが冷たく命じる。
「ハイ……」
白パーカーが涙を流しながら頷いた。
その瞬間、ホワイトが白パーカーの脇腹目掛けてドロップキックを叩き込んだ。
白パーカーは地面に叩きつけられるように倒れ込む。
「白パーカー、同じ白色同士で対決だ!」
ホワイトが叫ぶ。
「白パーカー、可哀想すぎ」
ロジナスがしみじみと呟いた。
「確かに、仲間に指折られた直後に敵からドロップキックされるのキツイよな」
アーマーも同情するように言う。
「黒パーカーより弱いから、戦おうと言ってんじゃねえか?」
オレが冷静に指摘する。
「ガーディアンズ隊長が不意討ちとは、情けないです!」
ボイスが厳しい声で批判した。
「今まで、言うタイミングなくて言えませんでしたが……紫のビキニパンツ、本当に気持ちが悪いですよ!」
レンズが唐突に爆弾を投下する。
「やめろやめろ……」
ホワイトが、数分前の黒パーカーと同じように頭を抱えて呻いた。




