第48話 炎上
「火を気にするのはヤメだ!」
アーマーが吼えると同時に、全身を炎に包まれたまま、赤パーカーへと殴りかかった。
「見苦しい特攻なぞ見たくもない! 死ねッ!」
「『揺灯火舞』!」
再び放たれた炎の刃が、アーマーの体を容赦なく刻んでいく。全身がさらに激しく燃え上がった。
だが、アーマーはその炎に怯むことなく――むしろ真っ直ぐに突っ込み、赤パーカーの体に力いっぱい抱きついた。
「貴様……コレを狙ってたのか!?」
赤パーカーが驚愕の声を上げる。
「悔しいが、全てにおいてオマエの方が上だ。だから、相討ち狙いしかない!」
「離れろ! 熱い! そして口が臭い! オマエ、きのう何食べた?」
赤パーカーが炎に焼かれながらも、律儀に問いを投げかけた。
アーマーは答えることなく、ただ力いっぱい抱きつき続ける。炎はやがて赤パーカーの体をも包み込んでいった。
「離れろ、ちくしょおぉぉ……ッ!」
赤パーカーの叫びが、断末魔のように草原に響き渡る。
「アーマーさん……命を賭して、赤パーカーを倒すつもりだ……」
ボイスが息を呑む。
「アイツ、あんな根性あったとは」
ホワイトが呆然と呟いた。
「アーマー、やべえじゃん!」
ロジナスが目を見開く。
「アーマーはガーディアンズの死亡保険に入ってるのか? それを受け取る家族はいるか?」
オレはふと思いついて、レンズに尋ねた。
「ガーディアンズは死亡保険に全員加入してますね。あの人は両親も亡くなってますし、独身なので、受け取る人はいないですね」
「そうか。なら保険金が入ったら、せめてデカい墓を立ててやろう」
(何とか保険金を着服する方法ねえかな?)
「大便くん、イイヤツじゃん!」
ロジナスが感心したように言う。
「イイヤツではないさ。アーマーという漢がいたってことを、大きく示してやりたい個人的な願望さ」
(ロジナスは男の娘カフェの美人局で保険金殺人に過敏だから、コイツにはバレない方法を考えるか。バレたらオレはアーマーの後を追うことになっちまう)
炎に包まれた2人は、そのまま地面に吸い込まれるように崩れ落ちた。
やがて炎はすべて消え、後には黒ずんだ二つの亡骸だけが転がっていた。
「炎が消えたのは……赤パーカーが死んだからでしょうね」
ボイスが静かに呟く。
「アーマー……!」
ホワイトが泣き崩れる。
「もっとムチで殴ってほしかった……」
カクガリクンが涙を流す。
「こんなことになるなら、ションベン飲ませてあげりゃよかったな……」
ロジナスが珍しく暗い顔で俯いた。
「オマエのおかげで敵はあと1人だ。アーマー……安らかに眠れ」
――と、その時だった。
黒ずんだ焼豚が、むくりと起き上がった。
「勝手に殺すな!」
「「「アーマー!!」」」
全員が声を揃えて叫ぶ。
「レンズが回復薬の錠剤をくれてたんだ。赤パーカーに抱きつく前に、燃えてる最中にアメみたいにして舐めてたから、それで回復して生きてるんだよ」
アーマーが生きていた理由を説明した。
「ほら、カクガリクンも男の娘カフェが燃えた時、回復薬を注射され続けて死ななかっただろ? だから、オレも同じ手を使ったのさ」
「アーマーさんが飲む回復薬が苦いから、甘い舐めるトローチタイプで作ってくれと言われてまして。アーマーさん曰く、理由がバレたら恥ずかしいとの事でしたので伏せていました」
レンズも続けて説明した。
「だから、レンズだけ慌ててなかったわけだ」
オレは納得しながらも、内心で舌打ちした。
(クソ、生きてるから保険金おりねえ……)
「そういうことです」
レンズが涼しい顔で頷いた。
「生きてて、よかった……ッ!」
ホワイトが泣きながらアーマーに抱きつく。
「口が臭い! オマエ、きのう何食べた?」
アーマーが即座にツッコんだ。
「……つうかロジナス? さっき『ションベン飲ませてやればよかった』って言ってたな? オレはいつでも構わんぞ」
アーマーがニヤリと笑い、大きく口を開けた。
「調子に乗んな!」
ロジナスの容赦のないトーキックが、アーマーの喉元に炸裂した。
アーマーは盛大に吐血し、そのまま地面に吸い寄せられるように崩れ落ちる。
レンズが慌てて駆け寄り、その首筋に手を当てて脈を取った。
「アーマーさん……脈がないです!」




