第44話 絶技
「紫ィ!!」
青フードが咆哮とともに斧を振り上げ、猛烈な連撃を叩き込み始めた。防戦一方となった紫フードは、槍で受け続けるだけで精一杯のようだった。
(……2人が本気で仲間割れしてるってのに、他の3人は止めようともせず、ただ黙って見てるな)
オレは腕を組み、冷静に状況を分析した。赤、黄、白のフード3人は、まるで他人事のように少し離れた場所で立ち尽くしている。
(コイツら、実はそんなに仲良くないんじゃないか?)
そうこうしているうちに、防戦一方だった紫フードが、焦った様子で叫んだ。
「このままではヤラれる!」
紫フードは槍を勢いよく地面に突き刺した。
「『造山運動!』」
次の瞬間、ドゴゴゴゴゴッ! という凄まじい地鳴りとともに、地面から超巨大な岩盤と、鋭く尖った岩の山(岩峰)が猛スピードで突き出した。
その切っ先が、真上にいた青フードの体を、下から串刺しにするように突き上げる。
「な……っ、異世界きて初めて、ちゃんとファンタジーっぽい技を見たぞ……!」
オレは驚きと、ちょっとした感動すら覚えながら、その光景に見入ってしまった。
「あれでケツを刺されたらたまらんでしょうなぁ!」
カクガリクンが目を輝かせて歓喜の声を上げる。
「久々に喋ったかと思ったら、くだらない願望だな……」
アーマー隊長がドン引きしながら呟いた。
尖った岩峰が青フードの腹部を貫き、致死量ではないかというほどの血を、青フードは大量に吐き出した。
「……死んだか? 喧嘩を売ってきたテメエが悪いんだからな」
紫フードが荒い息のまま、勝ち誇ったように言い放つ。
「テメエも……道連れだ!」
だが、青フードはまだ息絶えていなかった。血まみれのまま斧を握り直すと、低く唸るように叫んだ。
「『超音波刃』」
斧が音速を超える速さで振り抜かれた瞬間、目に見えない高密度の衝撃波――超音波の刃が放たれる。
「なっ……!?」
紫フードが驚愕の声を上げる間もなく、衝撃波が直撃した。紫フードの口からも、おびただしい量の血が噴き出す。
「なんかウチらと違って、シュッとした戦い方じゃね?」
ロジナスがしみじみと呟いた。
「まぁ、拳やムチとか薬物だの……泥臭いのは否めないな」
ホワイトが遠い目をしながら同意する。
「明らかにスタイリッシュなバトルで、ジャンルが違う感はありますね」
レンズも冷静に分析を加えた。
「皆さんの感想、戦い方の見た目についてばっかりじゃないですか!」
ボイスが呆れたようにツッコんだ。
そんな中、オレは懐からごそごそと何かを取り出し、ロジナスに手渡した。
「ロジナス、コレをつけろ」
「え、何これ? よく分かんないけど分かった!」
ロジナスは深く考えることなく、素直にそれを顔に装着した。黒いマスクだ。地雷系の私服と相まって、その姿は完全にト◯横界隈にでも生息していそうな見た目に仕上がっていた。
一方、互いの必殺技を受け合った青フードと紫フードは、すでに瀕死の状態でその場に崩れ落ちていた。
再び武器を取り、相手にトドメを刺そうとするも、もはやその手には武器を持ち上げる力すら残っていない。
「テメエを倒すには……コブシで充分だ」
青フードが震える拳を構える。
「武器を使わないんなら……ちょうどいいハンデだな」
紫フードも同じくファイティングポーズを取った。
「――おい」
気づけばオレは、2人の間合いの中に、静かに立っていた。
「黒鎧、テメエ……!?」
紫フードが警戒するように声を上げる。
その隙に、オレは背中の黒い筒から、新聞紙に包まれた聖なるブツを取り出すと、まず紫フードの鼻先へ突きつけ、続けて青フードの鼻先にも突きつけた。
「クサっ、クッサァァァァァァ!!」
2人はほぼ同時に嘔吐しながら白目を剥き、そのまま声もなく崩れ落ちて息絶えた。
「まず2人……!」
オレは満足げに呟くと、聖剣(大嘘)を静かに鞘へと収めた。
「使うなら使うと言えッ!!」
ガーディアンズ全員が、揃って鼻を押さえながらオレに詰め寄る。
「黒マスクしてても臭すぎなんだけど!」
ロジナスもまた、眉間に深いシワを寄せながら涙目で抗議していた。




