第43話 策士
「僕達はガーディアンズです!」
ボイスが胸を張り、堂々と名乗りを上げた。
「いや、オレとロジナスは違うだろ」
「そうそう、勝手に入れんなし」
オレとロジナスが即座に横からツッコミを入れる。ボイスは「あ……」と気まずそうに視線を泳がせたが、特に訂正はしなかった。
紫フードの男は、そんなオレたちのやり取りを見て、面白くもなさそうに鼻を鳴らした。
「ガーディアンズか、どおりで。アイツらの敵討ちか?」
「アイツらとは? ヒガーシのガーディアンズを知ってるのか?」
オレが問い返すと、紫フードの男の口元が、フードの陰でわずかに歪んだ。
「ああ、知ってるも何もオレ達5人が、全滅させたからな」
その言葉と同時に、紫フードの男の背後から、ぬるりと4つの人影が姿を現した。赤、青、黄、白――それぞれ違う色のフードを目深に被った男たちだった。
「え、いきなり遭遇とかヤバくね?」
ロジナスが半歩後ずさりながら呟く。
「探す手間が省けていいじゃないか」
ホワイトがビキニパンツをパチンと鳴らして、余裕を見せる。
「さっきの小便の虹みたいな色が、集まりましたね」
レンズが眼鏡を光らせながら、いつも通りの毒舌を挟んできた。
「小便の虹?」
紫フードの男が怪訝そうに片眉を上げる。
「こっちの話です」
レンズが笑顔のまま、しれっと流した。
「――ここじゃ人が多くて目立つ。場所を変えるからついてこい」
紫フードの男が短く告げる。
「分かった」
アーマーとホワイトが即答した、その瞬間だった。
「場所を変えるのはいいが、オマエ達が指定する場所は断る」
オレが即座に割って入る。
「何でだ?」
紫フードの男が鋭い視線を寄越した。
「ついていった先に、オマエらの仲間が多数いるかも知れないからな」
オレは、街の外へ視線を向けた。
「場所は、少し先に見えるあの草原。人がいないあそこなら、行ってやってもいい」
「……大便さんは強いだけでなく、頭もキレるんだなあ」
ボイスが感心したように呟いた。その一方で、視界の端では、迷いなく紫フードについていこうとしていたアーマーとホワイトが、ボイスの静かな軽蔑の眼差しを浴びていた。
(バカすぎる……)
「フン。ガーディアンズはバカばかりかと思ったが、少しはキレる奴もいるんだな。いいだろう」
紫フードの男が、値踏みするような目でオレを見た。
こうして一行は、人気のない草原へと移動した。
フードの5人と、ガーディアンズ一行が向かい合う。
「ヒガーシのガーディアンズの敵討ちがしたいんだろ? 死にたいやつから来い」
紫フードが槍を肩に担ぎ、真っ先に仕切り始めた。
「おい紫。勝手に仕切るんじゃねえ」
青フードが斧を握りしめ、不機嫌に割って入る。
「青は相変わらず短気だな」
紫フードが鼻で笑う。
「なんだと!」
青フードの声が一段と低くなった。
「なんだ、仲間割れか?」
ホワイトとアーマーが顔を見合わせる。
「おい青フード」
オレは腕を組み、わざとらしく声をかけた。
「さっき移動中に、紫フードがオマエを見ながら、やたら舌打ちしてタメ息ついてたぞ」
「――は?」
青フードの纏う空気が、一瞬にして凍りついた。
「紫のヤツは、やっぱり気に入らねえ!」
青フードが右手の斧を振りかぶり、紫フードへと斬りかかる。
「おい、黒鎧の言うことを間に受けてんじゃねえ!」
紫フードが慌てて斧をかわしながら怒鳴り返す。
「殺す!」
青フードが斧を振るう。
「話を聞け!」
紫フードが槍を構え直し、その一撃を受け止めた。ガキン、と鈍い金属音が草原に響き渡る。
「あれ? ガチ仲間割れじゃん」
ロジナスが目を丸くして呟いた。
「大便さん……紫フードは移動中、そんなことしてましたっけ?」
ボイスが小声で尋ねてくる。
「いや」
オレはニヤリと口の端を上げた。
「タメ息も舌打ちもしてない。これで2人は潰し合いだな」




