↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/57

第37話 回復


「ロジナスさんの防具についてですが……」


ボイスは用意された装備品を眺めながら、ロジナスの華奢な身体を見つめた。


「普通の鎧ではなく、軽くて丈夫な服にしましょう。それなら可愛いデザインも作りやすいでしょうし」


「やった!」


ロジナスのジト目が、一瞬でキラキラと輝いた。


「それならデザインはロジナスがする! せっかくなら、めちゃくちゃ可愛い服にしてよ!」


「デザインなら、オレが考えてもいいがな?」


ホワイトが腕を組み、妙に自信ありげな顔で口を挟む。


「いや、アンタが考えたらビキニパンツ一丁になるし」


「オレは考えてビキニパンツではないわッ!!」


ホワイトが顔を真っ赤にして怒鳴った。


「オレみたいなセンスのある男なら――」


「ブタが考えたら牧草や野草で作りそうでヤダ」


アーマーが語り始めた瞬間、ロジナスが食い気味に遮った。


「それは放牧飼育のブタが食べるエサじゃねえかッ!!」


アーマーが即座にツッコミを入れる。


「そもそも、なんでオレが服を作る話でブタ扱いされなきゃならんのだ!」


レンズが眼鏡のブリッジをクイッと押し上げた。


「私から一つ提案するとすれば……ロジナスさんは防御力が低いですから、頑丈なワニ皮のジャケットと、ワニ皮のズボンなどはいかがでしょう?」


「それ、若作りしようとして若作りできてないオッサンが着てる服じゃん!」


ロジナスが即座に拒絶する。


「ダサくてイヤだし」


「そうですか……。残念ですね」


レンズは特に気にした様子もなく肩をすくめた。


「まあ、素材については頑丈なものを使えますから。デザインをロジナスさんが決めていただければ、それに合わせて仕立てますよ」


「マジ!? ありがとう、ボイスくん!」


ロジナスは嬉しそうにボイスへ抱きついた。


「えっ!?」


突然のことにボイスの身体がビクッと跳ねる。


「ロジナスさん、いい匂いがします……」


思わずボイスがそう呟くと、ロジナスは嬉しそうにジト目を細めた。


「でしょ? ロジナス、結構いい匂いするんだよね♡」


「ちょ、ちょっと恥ずかしいです……」


ボイスは顔を赤くしながら、ロジナスから視線を逸らした。


「アーーーーーッ!!」


突然、ホワイトが叫んだ。


「そうだ! 回復する薬を準備する話で、思い出した!」


「どうしたんですか、突然」


ボイスが驚いて尋ねる。


「六日後だ!」


ホワイトの顔から、みるみる血の気が引いていく。


「六日後には、オレとアーマーに死にたくなるような激痛が襲ってくるではないかッ!!」


「……あ」


アーマーも同時に思い出した。


「そういやそうだったな……」


二人の顔が一気に青ざめる。


「死にたくなるような激痛だからといって、実際に死ぬわけではありませんからセーフです!」


レンズは笑顔でサラッと言いのけた。


「アウトだろオォー!何とかならんのか!?」


「頼む! オレたちを助けてくれ!」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


二人はそのままボイスに抱きついた。


「えっ!? 僕ですか!?」


ボイスは左右から身体を挟まれ、困惑した表情を浮かべる。


「何ですか、このクサい匂いは……!」


「仕方ねえだろ! オレだって必死なんだ!」


「オレも死にたくないんだよッ!」


二人が必死にボイスへ縋りつく。


「ロジナスさんからは、あんなにいい匂いがしたのに……!」


ボイスが涙目になりながら、鼻をつまんだ。


「この二人はクサすぎます! 吐きそうです!」


「誰がクサいだッ!!」


「オレたちは生きるために必死なんだぞッ!!」


「生きるなら、まず匂いから必死になんとかしてください!」


ボイスが必死に二人を引き剥がそうとする。


「それに僕は医療の専門家じゃありませんから! そういうことはレンズさんに聞いてください!」


「そうです」


レンズは爽やかな笑顔で眼鏡を押し上げた。


「医療に関しては私の専門分野です」


「だったら何とかしてくれッ!!」


「頼むッ!!」


ホワイトとアーマーが再びレンズへ向かおうとする。


「大丈夫ですよ」


レンズは二人を見て、ニッコリと微笑んだ。


「昨日の夜、こういう事もあろうかと、実は激痛を消す薬を作っておいたんですよ」


「本当かッ!?」


「マジかよッ!?」


ホワイトとアーマーの目が一瞬で輝いた。


「ありがとうございます、レンズ様ぁぁぁッ!!」


「これで六日後も安心だァァァッ!!」


二人は涙を流しながら喜んだ。


しかし、しばらくすると――。


「……待て」


ホワイトが急に真顔になった。


「何です?」


「そんな都合のいい薬を、レンズが何の副作用もなく作るとは思えん」


「確かに……」


アーマーも疑いの目を向ける。


「激痛がなくなる代わりに、別のとんでもねえ副作用があるんじゃねえだろうな?」


「ありませんから、安心してください」


レンズは爽やかな笑顔のまま、二つの小さな薬を差し出した。


「これは純粋に痛みを消す薬です」


「本当だろうな……?」

「信じていいんだな……?」


二人は疑心暗鬼になりながらも、飲み薬を受け取った。


そして――。


「ええい! こうなったら飲むしかねえッ!」

「オレもだッ!」


ゴクッ!


二人は同時に薬を一気に飲み干した。


「やったぁぁぁッ!!」

「これで六日後は安心だァァァッ!!」


抱き合って喜ぶ二人。


そんな二人を、レンズは相変わらず爽やかな笑顔で眺めていた。


「これで六日後に死にたくなるような激痛はありません!」


「よっしゃあああッ!!」

「助かったァァァッ!!」


二人が歓喜の声を上げる。


だが、レンズは眼鏡をクイッと押し上げ、爽やかに続けた。


「ただし――」


レンズが親指を下に向けた。


「死んだ時に魂が地獄へ行くだけです!死んだ後のことだから、副作用ではないです!」


「「エエエエエエエエエエッ!!?」」


宿屋の一室に、ホワイトとアーマーの絶叫が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。