第24話 死闘④
「あー、もう早く唐揚げ食べたいからさぁ。こんなザコどもに構ってるヒマ、ロジナスにはミリもないわけ」
廊下で身構える地雷系黒幕――ロジナスは、ツッと頭の血を拭うと、心底だるそうにそう吐き捨てた。
その言葉に、一触即発の空気を漂わせていた二人のエリートが同時に猛烈な青筋を立てた。
「おい! コイツ(ホワイト)とオレを一緒のカテゴリーにするな!」
「それはこちらのセリフだ、アーマー! 貴様のような豚と一緒にするな!」
お互いにビシッと指を差し合い、身内同士で醜い怒声をぶつけ合う。
「あはは、身内で揉めてて草。でもさぁ、ロジナスから見たらおじさん達どっちもただのザコだから。2人とも綺麗にザコだし♡」
ロジナスはジト目を輝かせ、ケラケラと嘲笑う。
「ザコだとッ!? ならばエリートの一撃を受けてみろォッ!!」
アーマーが激昂し、手に持った愛用のムチを凄まじい速度で振り回した。
ビュォッ! ビュォッ!
と、空気を鋭く引き裂く連続攻撃がロジナスへと襲いかかる。
「だからさぁ、言ってるじゃん。そういうSMプレーなら別料金貰わないと割に合わないって!」
ロジナスは風に舞う花びらのように、アーマーの猛烈なムチの軌道をすべて余裕で、紙一重でかわしきってみせた。
「な、なんだコイツ……ッ!? めちゃくちゃ速いじゃねえか……!」
アーマーの額から冷や汗が流れる。それを見たホワイトが、横から冷酷に言い放った。
「どうしたアーマー、予想外の素早さにビビっているのか?」
「ば、馬鹿を言うな! オレはまだ……本気を出していないだけだッ!!」
小学生のような見苦しい言い訳をぶちかます豚鎧。
「チッ、埒が明かん。アーマー、そのまま攻撃を続けろ! 私も合わせる!」
ビキニパンツ一丁のホワイトが鋭く前に躍り出た。
アーマーのムチの嵐にタイミングを合わせ、ホワイトの鍛え上げられた拳が、ロジナスに向けて電光石火の連撃を放つ。
しかし、ロジナスはそれすらも、ダンスでも踊るかのようにステップを踏んで全てを滑らかに躱していく。
「だから、当たんないって言ってるじゃん? おじさん達マジで無駄――」
ロジナスが冷たく煽り、勝利を確信したその瞬間だった。
バシィィィィンッ!!!
静まり返った男の娘カフェの廊下に、肉を激しく叩く凄まじい音が響き渡った。
「フハハハハッ! 見たか、当たらないんじゃなかったのかなァッ!?」
アーマーがこれ以上ないほどのドヤ顔を浮かべ、腰を大きく反らせて勝ち誇った。
だが、ロジナスは無傷のまま、少し引いた目でアーマーたちを見つめている。
「……いや、当たった。確かに攻撃は当たった。
しかし……私に当たったんだ! しかも頭にッ!!」
ホワイトが怒髪天を突く勢いで、自分の頭頂部を押さえながら絶叫した。
アーマーの放ったクソエイムのムチは、ロジナスの残像を綺麗にすり抜けて、味方のホワイトの頭へと120%の威力で直撃していたのだ。
「な、何をしているんだ貴様はッ!」
「うるせえ! ホワイトがロジナスの近くでチョロチョロと攻撃してるから悪いんだろッ!!」
誤射しておきながら、秒速で逆ギレをかますアーマー。
「あははははッ! ギャグセン高すぎてウケる! ねえ、もうロジナス関係ないし、あんた達2人で戦えば良くね……!?」
まさにその時だった。急にロジナスが言葉を詰まらせ、その場に崩れ落ちるように腹を抱えて
「ヒュー……ヒュー……」
と、激しく呼吸を乱し始めたのだ。
「な、何だ……!? もしかして、さっきの私の目にも留まらぬパンチが、遅れてクリーンヒットしていたというのか……!?」
ホワイトが自分の拳を見つめ、これみよがしなドヤ顔を浮かべた。
すると次の瞬間、ホワイトの前に立つアーマーまでもが、急に膝をついて腹を抱え、
「ヒュー……ヒュー……」と苦しげに呼吸を荒くし始めた。
「ど、どうしたアーマー!? お前には……オレは攻撃していないぞ!?」
ホワイトが狼狽する。
「ヒュー……あははっ、あはははははははッ!!」
ロジナスは床を激しく叩きながら、涙目を浮かべて大爆笑しだした。
「ち、違うから……っ! ヒュー……おじさん、アンタも完璧に味方に致命傷の攻撃(物理)仕込んでるんだよ……!」
「……何だと?」
「アンタの頭……っ! さっきムチが綺麗に直撃したせいでさぁ! ちょうどド真ん中に綺麗なムチの跡ができてて……っ! まるで、まるで尿道みてだし!そのおかげで、デカいチ◯コの先っぽみてえになってるし!!! あははははははッ!!! 形状が完全にそれじゃん!!! マジでウケる、最高!!!」
「ぶふぉっ、あははははははッ!!! 頭が完全にチ◯ポじゃねえかァッ!!! こっちに近づくなホワイト! 笑いすぎて腹筋が千切れて笑い死んでしまうわァッ!!! ガハハハハッ!!」
アーマーも床を転げ回り、涙をボロボロと流しながら大爆笑の嵐に包まれた。
「貴様ら……ッ!!」
ホワイトは頭部にドス黒い血管を浮かび上がらせ、怒りのあまりライ麦パンの肌を小刻みに震わせた。
エリートのプライドを完璧に粉砕され、彼の怒りは限界を突破していた。
「あはははっ! 怒らないで、チ◯ポ頭!!! 怒るとさぁ……! 怒るとますます戦闘態勢に入り狂ったチ◯ポみたいに見えるからマジで怒らないでよ!!! あははははははッ!!!」
「そうだ怒るなチ◯ポホワイト! 血管がリアルすぎて直視できん!!! ガハハハハッ!!!」
その瞬間、歩くチ◯ポ以外は、
もはや異臭騒ぎの捜査も、国家の威信も、唐揚げも、何もかもがどうでもよくなっていた。




