第20話 回想の拒絶
「ロジナスね、物心ついた時からさぁ、ガチガチの武術家である父親に、やりたくもない武術を朝から晩まで――」
ロジナスが悲しき過去のトビラを開き、無駄にヘビーなシリアス回想話を始めようとした、まさにその瞬間だった。
ガッシャァァァーーンッ!!!
「誰がそんな長ったらしい回想話を聞くかよォォォッ!!」
凄まじい破壊音とともに、店内の床掃除用モップが、ロジナスの後頭部へと容赦なく叩きつけられた。
「あがッ……!?」
可愛い地雷系ヘアが激しく乱れ、ロジナスはよろめきながらその場に膝をついた。
頭部からツッと赤い血が流れ落ち、床を汚していく。モップをフルスイングでへし折る勢いで殴りつけたのは――完全に精神をクラッシュされていたはずの長男スタッフ、チョウ・ナンだった。
「……ッ、ザコが。ロジナスの美しい顔になに、変なタイミングで奇襲かましてくれてんだよ、殺すぞ」
ロジナスは髪の隙間から、ガチの暗殺者の目でチョウ・ナンを睨みつけた。
だが、チョウ・ナンは折れたモップの柄を握り締め、涙ながらに激怒の声を上げた。
「うるせえ! お前、この店の仲間たちを……みんなを、そんな嫉妬だの後輩総入れ替えだのっていう、くだらない理由だけで全員始末しやがったなァッ!!」
「は? くだる、くだらない。の基準はさぁ、このナンバーワンのロジナスが決めるわけ。ただのザコでペーペーの使い捨て店員が、偉そうに判断してんじゃねえよ」
ロジナスは冷たく言い放ち、ゆっくりと立ち上がった。
「誰も裁かないなら、オレが裁く……! オレは長男だからな、みんなのカタキを今ここで討つッ!!」
実家でも名前でも長男であることだけを武器に、チョウ・ナンが謎の理論を掲げて突撃する。
「わけわかんない正義感でイキってんじゃねえよ、キモいな」
ロジナスは冷めたジト目のまま、スッと片足を限界まで持ち上げた。
前蹴りとミドルキックの中間――正確に斜め45度の軌道を描いて放たれたその鋭い一撃は、空手の『三日月蹴り』そのものだった。
バキィィィィンッ!!!チョウ・ナンが盾代わりに構えたモップの柄が木っ端微塵に弾け飛び、ロジナスの容赦のない蹴りがチョウ・ナンの腹部へと正確無比に突き刺さる。
「ごふぉっぅぅううッ!?」
チョウ・ナンの身体は、さっきホワイトに蹴り飛ばされたクワカブトと全く同じ軌道を描き、男の娘カフェの壁へと一直線に吹き飛んだ。
ドゴォッ!!!壁に激突したチョウ・ナンは、そのまま床に転がっていたクワカブトの腹の上に、まるでパズルのピースのよう綺麗に重なってドッキングした。
「ぶふぉっぅぅううッ!?(2回目)」
チョウ・ナンの体重がダイレクトに腹にのしかかり、かろうじておばあちゃんとの対話から生還しかけていたクワカブトは、白目を剥いて再び完全に気絶した。




