第16話 圧倒的現実
オレが背中のカクガリクンの筒(アヴァンギャルドな鞘)に手をかけ、クワカブトにすべての罪を擦り付けるための完璧な大演説をぶちかまそうとした――その瞬間だった。
ガチャン、とカフェの扉が勢いよく開き、一人のキャストが息を切らせて入ってきた。
「ハァ、ハァ……遅刻ロジナス〜! って、お店の中どうなっちゃってるの!?」
そこに立っていたのは、この世のものとは思えないほど綺麗な顔をした美少女だった。
髪型は半分が鮮やかな金髪、もう半分が艶やかな黒髪という、セミロングヘアのハーフ&ハーフ。フリフリのニーハイミニスカートを身にまとった、ゴリゴリの地雷系ファッションだ。
「ロジナス、ちょっとお友達と旅行に行っててさ〜。今日から出勤だったんだけど、これ何事!?」
どうやら彼女――いや、ロジナスは旅行中だったため、一週間前のバイオテロの難を奇跡的に逃れていたらしい。床でハイパー燃え盛っているクワカブトが、涙目で彼女を見上げる。
「ロ、ロジナスたん……! 拙者の指名キャストのロジナスたんでござるぅぅぅ!」
オレはその圧倒的な美貌を前にして、我知らずカクガリクンの筒を握る手に力を込め、激しく机を叩いた。
「嘘つけえええーーーッ!! こんなに可愛い子が男の娘なわけないだろ! どこをどう見ても、オレのなかのちっぽけな倫理観が『ガチの美少女だ』って大歓声を上げて応援しているわ! お前、本当は女だろッ!?」
年齢=彼女いない歴の悲しきチェリーボーイであるオレは、現実を受け入れられずに絶叫した。すると、ロジナスはフッと小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、スカートの裾を大胆にたくし上げた。
「あは、男の人が現実逃避してて草。じゃあ、ロジナスが男の子だって証拠、今ここで見せてあげるね♡」
次の瞬間、静まり返った店内に、ボロン……と、あってはならない重量感のある音が響き渡った。
そこに現れたのは――高速道路のサービスエリアで売っている、あの極太のフランクフルトと見紛うばかりの、天を衝くような立派すぎるブツだった。
「……なっ!?」
オレ、ホワイト、レンズ、アーマー隊長、放置されていたカクガリクンまでもが、あまりの衝撃にその場に凍りついた。
「嘘だ……認めん、認めんぞ! 国家権力の威信にかけて、男のプライド勝負だ!」
謎の対抗心を燃やしたアーマー隊長を筆頭に、オレたち男5人は、無言のまま自らのブツをボロンと解禁した。
しかし。勝負は一瞬で決した。並べて比較するまでもなかった。オレたち全員のブツを集めても、ロジナスのフランクフルトの半分にすら満たなかったのだ。
圧倒的なサイズの暴力。男としてのプライドを根底から粉々に打ち砕かれ、全員がガタガタと震えながら心が完全にポッキリと折れた。
特に、アーマー隊長のそれは悲惨だった。どう見ても、その辺の山に落ちているドングリ。
それも、小ぶりで可愛らしいタイプのドングリそのものだった。
オレは折れた心をなんとか奮い立たせ、ドングリを指差して罵った。
「おいアーマー!! お前よくそのドングリ(物理)をぶら下げたまま、ガーディアンズの隊長になれたな! どんな不正入隊だよ!」
「そうだそうだ! エリート部隊のトップがドングリなんて、国家の損失だ!」(レンズ)
「オレの生ケツをお仕置きする資格はありませんぅぅ!」(カクガリクン)
「シンプルに気持ち悪いから今すぐしまえ」(ホワイト)
身内からの容赦ない罵倒の嵐に、アーマー隊長は顔を真っ赤にして涙目を浮かべた。
「うるさいわいッ! 今から! 今から半立ちにさせて本気を出せば、少しは大きくなるんだからな! 見てろよッ!!」
必死の形相で自らのドングリに気合を注入し、半立ちにさせようと怪しいポーズを取り始めるアーマー隊長。
そのあまりにも見苦しく、かつ悍ましい光景に、ビキニパンツ一丁のホワイトの堪忍袋の緒が切れた。
「おい、公共の場でそんな気持ち悪いマジックを披露しようとするなッ!!」
ホワイトのガバガバな倫理観から繰り出された、ガチの殺意がこもった過剰防衛のキックが、アーマー隊長の股間へと正確無比にクリーンヒットした。
ドゴォッ!!!
「あがッ……!?」
アーマー隊長は、白目を剥いて綺麗なスライディング土下座の姿勢のまま、一瞬で意識を失って床に崩れ落ちた。




