第14話 追及の鉄槌(てっつい)、歪められた真実の行方
ちっ、無駄に冷静なメガネだな。
普段ロウソク垂らして遊んでる変態のくせに、こういう時だけ法律の番人みたいな顔をしやがって。
オレが心の中で盛大に舌打ちしていると、我が魂の聖剣(※昨日ケツから出たてホヤホヤ)の波動によって完全に精神をクラッシュされた男性スタッフが、虚ろな目のまま懐から手のひらサイズの『通信水晶』を取り出した。
「わ、分かりました……。僕、長男ですし……、実家の両親にこれ以上心配をかけたくないので、アイツを呼び出します……」
スタッフの名前は、チョウ・ナン。
実家でも長男、名前もチョウ・ナンという、長男になるために生まれてきたような男だった。
チョウ・ナンは震える手で通信水晶に魔力を込めると、カブトムシ臭の常連客へと連絡を繋ぎ、虚ろなトーンのままクズの嘘を吐き出した。
「あ、もしもし……クワカブトさんですか? プリティ・ボム、臨時営業で今から再開することになりましたので、すぐ来てください……」
――それから数分後。ガチャン、と男の娘カフェ『プリティ・ボム』の扉が、勢いよく蹴り開けられた。
「ハァ、ハァ……! チョウ・ナン氏ぃ! プリティ・ボム再開って本当ですかぞ!? 僕の生きがい(男の娘店員)に会わせるでござるぅぅぅッ!?」
そこに立っていたのは、頭にバンダナを巻き、パツパツのチェックシャツを着たクラシカルな見た目の肥満男性オタク。常連客の、クワカブトだった。
店内に一歩入ってきただけで、カードショップの迷惑客と同じ『すえた汗(カブトムシ臭)』がブワッと押し寄せてくる。クワカブトは息を荒くしながらチョウ・ナンに詰め寄った。
「それで、新しい男の娘が入ったってのは本当なんです!? 早く僕に拝ませて……ッ!」「スマン、嘘だ」チョウ・ナンが冷酷に言い放った。
昨日ケツから出たての一本糞を鼻先1センチで浴びた男の目は、すでに人間のそれではない。
「え、嘘……っ!?」クワカブトが絶望に顔を歪めた、その瞬間だった。
ビシィィィッ!!!と、乾いた衝撃音がカフェの天井に響き渡った。
「ぶふぉっぅぅうううッ!?」
「この異臭で人を殺めた大悪党めがァッ! 国家権力をナメるなよ!」
鎧豚隊長が、懐から抜いたしなやかな『ムチ』をクワカブトの背中に容赦なく叩き込んでいた。さっきカクガリクンとSMプレイをしていた時とは大違いの、ガチの殺意がこもった一撃だ。
「ひぎぃっ!? な、何をするでござるか大人の男の人たちぃ!?」
「問答無用です。国家転覆のバイオテロリストには、熱い洗礼が必要ですね」
間髪入れず、浪人生メガネがどこからか取り出した燃え盛る『ロウソク』を突き出した。
冷酷な目のまま、ドロドロに溶けた熱いロウをクワカブトのパツパツのチェックシャツに躊躇なく垂らしていく。ボウッ!と、すえた汗の脂分(?)に引火したのか、チェックシャツが勢いよく燃え上がり始めた。「あづづづづづづッ!? 燃えてる! 僕のチェックシャツがハイパー燃え盛ってるでござるよぉぉぉッ!?」
あまりの阿鼻叫喚に、黒糖パン肌にビキニ一丁の男、ホワイトが慌てて割って入った。
「おい、二人ともはやまるな! まだ確定したわけでは――」ホワイトが止めようとした、が。
ホワイトはふと顎に手を当て、ガバガバな倫理観で呟いた。
「……いや、待てよ。この男の娘カフェで、異臭による殺し(バイオテロ)をやっているという裏は、さっきの長男スタッフの証言で取れてるからいいか。よし、やれ」
まさかの現行犯逮捕(物理)のゴーサインが出た。
(キタキタキタキタァァァーーーッ!!!)
オレの脳内コンピューターが、パチパチパチパチと狂ったような高速音を立てて勝利の計算を弾き出した。
他人の事件に全乗っかりするどころか、向こうから勝手に自滅しにきてくれたのだ。
この罪の擦り付けビッグウェーブ、乗らない手はねえ。
オレは背中のカクガリクンの筒(アヴァンギャルドな鞘)に手をかけながら、クズの脳みそをフル回転させ始めた。




