第13話 深淵の一秒、歪められた証言
「犯人は別人と見ていいでしょう」
鎧豚隊長と浪人生メガネ、そしてホワイトが顎に手を当てて納得しやがる。
マズい。
非常にマズい。
このままだとオレのギルド大量殺人の容疑が、再びガチで浮上してしまう。
完全犯罪の崩壊という人生最大の危機に、オレの脳内コンピューターが超高速でクズの言い訳を弾き出した。
「お前ら全員バカかーーーッ!!」
オレは男の娘カフェの天井が震えるほどのハイトーンで熱弁を振るい始めた。
「いいか!? 犯人の攻撃が1種類だけだと誰が決めた!? 奴は複数の違う悪臭を使い分ける、ハイブリッド型のマルチ異臭テロリストかもしれないだろ! 月曜日はカブトムシ、火曜日はウンコ、みたいに気分でローテーションしてる可能性をなぜ疑わないんだ!」
「まあ……確かに、それも一理あるか……?」
オレのあまりの気迫に、鎧豚隊長たちが
「お、おう」と気圧され始める。
よし、チョロいぞエリートども。だが、現場の真実を知る男性スタッフだけは違った。
「いや、でも、あの常連客はいつもカブトムシの臭いしかしてなくて、違う悪臭なんて――」
スタッフが正論を吐きかけた、その瞬間だった。オレはガーディアンズの4人が死角になった一瞬の隙を見逃さなかった。
背中のカクガリクンの筒から、新聞紙に包まれた我が魂の聖剣(※昨日ケツから出たてホヤホヤ)を、音もなく一瞬だけ引き抜いた。
(喰らえ……ッ!)
そして、男性スタッフの鼻先1センチの距離で、
「1秒間だけ」その生剥き出しの波動を浴びせた。「ぶほっぅぅぅうううッ!?」
スタッフの顔面が、一瞬で一晩中おしっこの虹を浴び続けたような土気色に変色する。
白目を剥き、激しい吐き気で今にも意識を失いそうになっている男性スタッフの胸ぐらを、オレはガシッと力強く掴み取った。
正式には、昨日ケツから出たばかりの新鮮な一本糞だが、この1秒の破壊力は凄まじかった。
オレは、耳元で悪魔のように低く、冷酷なイケメンボイスで囁いた。
「――なあ? 違う悪臭の可能性も、大いにあるよな……?」
ガチで命の危機を感じたのだろう。
男性スタッフはダラダラと冷や汗を流しながら、この世の全てを諦めたような虚ろな目でオレを見つめ、涙ながらにこう絞り出した。
「は、はい……。僕は最近すごく疲れていたし……、実家でも長男だからってずっと色んなことを我慢して生きてきたので……、きっと……違う悪臭の可能性もあると思います……」
「よし、よく言った。お前は立派な長男だ」
オレは満足してスタッフの胸ぐらを離した。
長男の悲しき忍耐力が、
オレの完全犯罪(3回目)の強固な礎となった瞬間だった。




