第12話 簒奪(さんだつ)の真実、閉ざされた未来
おしっこの虹という最悪のハイウェイを爆走したオレたちは、ついに南の都市ミーナミへと到着した。
目指す現場はただ一つ。
地域密着型男の娘カフェ『プリティ・ボム』だ。
だが、店の前に着いた時点で、鎧豚隊長がムチをピシャリと鳴らして号令をかけた。
「おい、今回の突入メンバーは、オレ、浪人生メガネ、カクガリクン、ホワイト、そして大便の5人に絞る!」
「え? 他のガーディアンズの団員たちは連れて行かないのか?」
オレが尋ねると、浪人生メガネが冷酷な目でメガネのブリッジを押し上げた。
「大勢で突入したら店の空気が終わります。ほら、カードショップにいる一部の迷惑客みたいな……あの独特の『カブトムシ臭』が店内に充満してしまうでしょう。ただでさえ異臭事件の現場なのに、これ以上のバイオテロは避けるべきです」
無駄に冷静で辛辣な分析だった。
エリート部隊の汗臭さはカブトムシ並みらしい。
男の娘カフェは現在、事件の影響で『クローズ』の看板が出されていたが、そこは国家権力のガーディアンズだ。
職権乱用で鍵の閉まった扉を勢いよく蹴り開けて中に押し入る。
店内は静まり返っており、
オレがほんの8割ほどの期待と2割の恐怖を抱いていた「男の娘たち」の姿はどこにもなかった。
チッ、嬉しいやら悲しいやら、
いや、普通に悲しいが8割だ。
ファンタジーの義務教育(エロ軽装美少女)に続いて、男の娘の癒やしすらオレから奪うとは、異臭魔め、絶対に許さねえ。
「おい、そこの貴様。ここのスタッフか?」
ホワイトがビキニパンツのゴムを引っ張りながら、店内で一人、床をモップで清掃していた男性スタッフに声をかけた。
「ひゃいっ!? は、はい、そうですけど……」
怯える男性スタッフに、鎧豚隊長が凄む。
「ガーディアンズだ。1週間前の事件当時の様子を話してもらおうか。犯人の目星はついているのか?」
男性スタッフはゴクリと唾を飲み込み、震える声で証言を始めた。
「あ、あの……犯人はおそらく、うちの常連客の男です。あいつが店に入ってきた途端、ものすごい異臭が立ち込めて、何人ものお客さんがバタバタと倒れていって……」
「その匂いってのは、アレだろ!? 排泄物の匂いだったんだろ!? なあ、そうに決まってるよな!?」
オレはスタッフの言葉を遮り、食い気味にゴリ押しした。頼む、そうであってくれ。
そうじゃないとオレのケツの立場がない。
しかし、男性スタッフは首を横に振った。
「いえ……なんというか、カブトムシみたいな……さっきのメガネの人が言ってた、カードショップの迷惑客みたいな、すえた汗の匂いでした」
「な……んだと……?」
オレは絶望した。
ジャンルが違う。
オレの聖剣は「純粋な汚物」だが、
犯人の武器は「洗ってない人間の業」だ。
「フム、どうやらギルドを壊滅させた悪臭とは毛色が違うようだな」
「ええ、あちらは鼻が溶けるような化学兵器(物理)でしたが、こちらは生物的な生乾き臭。犯人は別人と見ていいでしょう」
鎧豚隊長と浪人生メガネ、そしてホワイトが顎に手を当てて納得しやがる。
マズい。非常にマズい。
このままだとオレのギルド大量殺人の容疑が、再びガチで浮上してしまう――!




