表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
376/379

大家さんの『サウダージ』 その7

 今回、いつもよりちと短いです。

 その代わり、次回は長くなりそうです。

 『絶交』。


 その単語が小源の口から出た瞬間、大平は時が止まったような感覚に陥った。


 風や車の音は聞こえなくなり、雨がポツポツと肌に当たっても全く感触が無く、視界は洞窟の奥にいるかのように真っ暗。


 脳みそも、思考を一時停止している。


 それだけ小源の発言がショックだったのだろう。


 無理も無い。


 初めて出来た人間の親友から目の前で直接、しかも怒りどころか憎悪すらも混じった眼差しで絶交を言い渡されたのだから。


 気が付くと、目の前にいた小源はいなくなっており、彼一人が路地裏でぽつんと(たたず)んでいた。




 その後彼は、絶交のショックを引きずりながらも、古本屋のアルバイトに行った。


 本当はこのまま帰って布団にくるまりたい気分だったが、家賃やイスチィの事を考えると、どうしてもサボる気にはなれなかったのだ。


 古本屋に着いた時には、仕事を始める時間から既に四十分以上も経過していたが、彼の日頃の行いが良かった事もあって、こっぴどく叱られるのではなく、体調を心配された。


 それからは、いつものように仕事をこなしていき、遅刻した分だけ残業をした後、店長にもう一度謝罪してから帰った。


 「ただいまー。」


 「あっ、チューちゃん・・・・・・おかえり。」


 「?」


 部屋に入ると、いつになく暗い顔をしたイスチィが、テーブルの上にいた。


 もしや、小源に絶交を言い渡された事をどこかで知り、気を遣っているのだろうか。


 それにしても、部屋の中がやけに寂しい。


 家具とかが無くなった訳では無いのに、いつもと比べて何かが足りない気がする。


 大平もそう思ったようで、キョロキョロと周囲を見回していると、イスチィが重い口を開いた。


 「あの・・・チューちゃん・・・」


 「ん?」


 「その・・・突然でゴメンなんだけど・・・・・・アチキ、故郷の島に帰らないといけなくなったの。」


 「えっ・・・」


 瞬間、再び時が止まったような感覚に大平が陥る。


 どうやら、部屋の中がいつもより寂しく感じたのは、化粧品やマッサージグッズといった彼の私物が全て無くなったせいらしい。


 さっきと違って割と早く我に返った大平は、動揺を隠し切れないまま出発日を尋ねた。


 「い・・・いつ・・・?」


 「今日・・・これから・・・」


 「もしかして、故郷にいるご両親の体調が悪くなった・・・とか?」


 するとイスチィが、ばつが悪そうに顔を逸らして答える。


 「う・・・うん・・・・・・まあ、そんな感じ・・・」


 「そっか・・・」


 大平が悲しそうな眼差しで、視線を逸らす。


 イスチィの態度から、二度とここへは戻って来ない事を察したのだ。


 この時彼は、心の中で『故郷になんか帰ってほしくない』、『このままずっと一緒に居てほしい』と、思った。


 今の自分に、イスチィがいなくなった後の『孤独な生活』に耐え切れる自信が無いから。


 でも、それは自分の『わがまま』・・・そして、彼を縛り付ける行為でしかない。


 だからこそ彼は、泣いて引き留めるのではなく、笑顔で送り出してあげる事にした。


 「いってらっしゃい。気を付けて。」


 これに対し、イスチィも微笑んでこう返す。


 「ええ、チューちゃんも・・・・・・無理しちゃ駄目よ。」


 「うん、分かった。」


 踵を返し、窓の方へと歩き出す。


 そして、開けて出て行こうかという所で、急に大平の方を向き、


 「チューちゃん!!」


 彼に飛びついた。


 「覚えていて・・・『遠くに離れていても、アチキはずっとチューちゃんを見守っている」という事を・・・!!」


 「うん・・・!!」


 ぎゅっと、優しく抱きしめる大平。


 その目からは、笑顔でいる為に堪えていた涙が、ボロボロと溢れ出て来ている。


 しかし、そんな彼の口から出て来た言葉は、別れのそれでも、引き留めるそれでもなく、三年分の感謝の気持ちがギュッと詰まったそれだった。


 「有り難う・・・イスチィ・・・」


 こうして、大平とイスチィの共同生活は終わりを迎えた。




 一日の間に小源からは絶交を、イスチィからは別れを告げられ、一気に孤独になってしまった大平。


 だが、いつまでも悲しみに暮れている訳にはいかない。


 彼は翌日気持ちを切り替え、前を向いた。


 一からこの異世界生活を始める気持ちで・・・




 それから数日経ったある日の事・・・


 「おかえり。待ちくたびれたよ。」


 「えっ!?」


 いつものように古本屋のアルバイトを終えて『コワレ荘』に戻ると、門の上で小源の相棒・メティが寝転がっていた。


 次に彼は、背筋を伸ばしながら欠伸をし、『おすわり』の状態になると、驚いた顔をしている大平にこう言った。


 「いきなりで悪いんだけど、一緒に来てほしい所があるんだ。」

 【お知らせ】


 本日、扉絵の追加実装を、以下の通り行いました。


 ●扉絵 (カラー)


 第68話   「好意を押し付けてはいけない」


 第363話  「『Darkest Lady』は、本性を現す」


 第366話  「汚れきったモップ」



 ●扉絵 (白黒デジタル)


 第70話   「陰キャと執事」


 第370話  「大家さんの『サウダージ』 その1」



 上記の他に、「大家さんの『サウダージ』 その3」に挿入する『小源の扉絵』と『日輪の挿絵』を用意していたのですが、容量オーバーで投稿出来ませんでした。(因みにどちらも白黒デジタル)

 すいませんが、3メガ以内に収まるよう描き直しますので、しばらくお待ち下さい。

 これからもこの小説をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ