↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/35

其之28 類は友を呼ぶ

<ご挨拶>

 初めての方も、いつもの方も、ありがとうございます!


 今回までは、「いちゃラブ」や「プチざまぁ」があったので、ジャンル的にも〔恋愛〕かなと思ったのですが。

 この先、ダークでヘビーな群像劇っぽい感じになってくるので、とりあえず、ジャンルを〔ヒューマンドラマ〕に変更いたしました。


 また、このシルバーウィークの間に本連載が一時ランクインしていたようです。

・26/9/18(金)4:00-7:00更新 36 位ほか [日間]ヒューマンドラマ〔文芸〕 

・26/9/21(月)4:00-7:00更新 97 位 [週間]ヒューマンドラマ〔文芸〕


 ご評価くださった方、まことに感謝御礼申し上げます!

 

 ランクイン後にこの勢いを維持できないのは、自分の力不足を如実に感じて、「まだまだ頑張らないといけないなあ」と反省するところではありますが。


 それでも、こうしたご反応を戴けるのは本当に励みになります。

 皆様、これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 結局、豪太(ごうた)は、あのまま戻ってきそうもなかったので。


 さっきまで、甘えん坊なフリをしていた紫希(シキ)も、速やかにわたしから離れ、スッと姿勢を正した。嘘泣きだったから、琥珀の瞳も全然濡れてなくて。

 夕紀子(ゆきこ)さんも察したように、わたし達に何も訊いてこなかった。


 1人ついていけてない、わたしは、日が傾きつつある路地で、ぽかんと立ち尽くすばかりで――。


「もう……! いったい何だったの……!!」


 かたや、紫希は半眼で呆れながら、大きな溜息をついた。


「……やれやれ。あ(・)れ(・)し(・)き(・)で当たり散らすとは。辛(・)抱(・)足(・)り(・)ぬ(・)小僧だ」


 そうして、ふと、夕紀子(ゆきこ)さんに向き直り、


「――豪太(アレ)が他を気遣えない小者(こもの)であるのは、大方、想像ついていたが。夕紀子嬢。貴女は、如何様にして、本日はご帰宅されるご予定だったのです?」


 と、やんわり尋ねた。


「え」


 夕紀子さんも目をぱちくりさせながら、気後れしていた。


「そ、そうですわね……。本日は、あちらの百貨店で、お約束のお時間までご一緒する予定でしたから、午後6時には、我が神宮寺(じんくうじ)のお迎えのお車が、あちらの駐車場にくる算段で」

「なるほど。6時――まだ小1時間ばかりは空いておりますね」


 紫希は、どこから出したのか懐中時計を手にして、「ふむ」と思案巡らせる。


 その後、紫希は、ちらと、蘇芳屋(すおうや)さんが建っている方向に目を遣り、じいっと穴が開くくらい遥か先を眺めた。何か、ふつふつと、したたかに訴えるように。


〔-・・・  ・--  ・・・-  ----  ・-  ・・--・

-・・--  -・-・・  ----  --・--  --・〕


 わたしには、折り重なる街並みの陰で隠れて、あの建物なんか全然見えてなかったんだけど。紫希はおキツネ様だから、千里眼でも持っているのかしら。


 そうしたら、そ(・)れ(・)に呼び寄せられるみたいに、ちょっと間を置いて、九鬼(くき)さんが血相を変えた風にバタバタとこちらへ走って来た。


「夕紀子!」

「庚興(みつおき)さんっ!?」


 夕紀子さんは驚いていたけれど、瞬時にカアッと恥じらう乙女の顔になった。

 九鬼さんはガバッと夕紀子さんを抱き締める。


「ああ。なんと可哀想に! こんな場所にか(・)弱(・)い(・)君(・)を(・)1人、置(・)き(・)去(・)り(・)にするなんて!!」


 この場にいなかったのに、九鬼さんは、この状(・)況(・)を(・)悟(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)みたいだった。

 その九鬼さんの逞しい腕の中で、夕紀子さんは、ドキドキした様子で「はあ」と感嘆を漏らす。照れつつもウットリしているのが一目瞭然だった。


「わ……、わたくしは大丈夫ですわ」

「本当に? ああ。しかし、君も行く宛が無いのだろう?」


「え。ええ……。はい。けれど、庚興さんは、どうしてこちらへ?」

「教(・)え(・)て(・)も(・)ら(・)っ(・)た(・)からさ」


 九鬼さんは、戸惑う夕紀子さんをいたわる微笑みを向け、その頬を優しく撫ぜる。


「え?」


 夕紀子さんは目を丸くするものの――。


 九鬼さんは、キッと鋭い瞳で、ちらと、紫希に一瞥(いちべつ)くれた。

 すると、紫希もニッコリとやや嘘くさい笑みを返す。

 この2人の遣(・)り(・)取(・)り(・)に、夕紀子さんもまた「ああ……」と納得したように頷いた。


「貴(・)方(・)に助けていただくなんて。も(・)う(・)2(・)度(・)目(・)ですわね」

「はい。お役に立てて何より。【縁結び】は私(・)の(・)得(・)意(・)とするところですから」


 紫希は酷く愛想のよい感じで相槌を打つ。


 ということは、さ(・)っ(・)き(・)の――。

 紫希は、思念波か何か霊的な方法で、九鬼さんに夕紀子さんのことを伝えて、「迎えに来て」って頼んだのかしら?


(紫希はアヤカシだから当然だけど。九鬼さんも、その手の御力、持ってらっしゃるなら、ありえないことではないわ)


 わたしも「うんうん」と首を縦に振って、1人納得する。


「さ、早く、我が蘇芳屋に」

「は、はい……!」


 九鬼さんに誘われ、夕紀子さんは嬉しそうにはにかんでいた。

 紫希はクスと微笑む。


「これで【借り】は返(・)し(・)ま(・)し(・)た(・)よ。後はどうぞ、お2人で。そちらの事はお任せいたします」

「……」


 九鬼さんもペコリと軽く紫希に頭を下げる。


「面目ない」

「いいえ。お(・)互(・)い(・)様(・)ですから」


 紫希がスッと瞼(まぶた)を伏せる様(さま)に、わたしはわたしで、ドキッとした。

 余裕に満ちた姿が、わたしには、すごく頼もしく見えてしまったから。


(なんだかんだ言って、紫希(このヒト)、やっぱり神様の御使いなんだわ)


 そうして、わたし達と夕紀子さん達は、「じゃあ、また今度」といった感じにお別れの挨拶をして、この日は、それぞれ、自分の帰るべき場所へと帰っていった。


 だけど――。


 わたしは、家路の路面電車の中で、紫希に訊いた。


「……ねえ。九鬼さんに言った『借り』って何のこと?」

「ああ。それは」


 紫希は、スッと、新たにわたしの首に掛かっている純銀の筒型ロケット・ペンダントを指差した。あの蘇芳屋さんで、24回払いの月賦(げっぷ)で買わせていただいた、アレだ。


「どうやら、彼は、君にそ(・)れ(・)を手渡す際、【オマケ】を付けてくれたみたいでね。【君の懐紙入れ(アレ)】を【仮の宿】にしていた時より、いくらか【融通】が利くというか。【紫希の姿(このすがた)】を、若干、長く留(とど)めることが可能になったようだ。ゆえに、その御(・)礼(・)」


 その「オマケ」が何かは、わたしには分からなかったけど。

 九鬼さんは、たぶん、その手の呪法を心得てるんだろう。


 わたしも嬉々とする。


「そうなの……っ!? じゃあ、今夜は――」

「いいや。今宵もも(・)ち(・)ろ(・)ん(・)、【吸わせ】ていただくとも」


「えええっ!?」


 一瞬でも安心した、わたしが馬鹿だった。

 すると、紫希も、至極残念そうな顔をする。


「なぜ驚く? 考えてもみてくれ。本日は、庚興(かれ)を呼ぶのに霊力(ちから)を使ってしまった。無論、きちんと下宿先(いえ)まで持続できるよう調整しているため、途中で『解けて』大惨事になることはないが。それでも、帰ったら補(・)充(・)せねば。私が私(・)で(・)在(・)る(・)こ(・)と(・)ができなくなってしまう」


 紫希の言うことも分かるし、あのまま、夕紀子さんを放置する訳にはいかなかったから、仕方ないのかもしれないけれど。


「そ、それなら、わざわざ、お霊力(ちから)使わなくても、わたし達で夕紀子さんを蘇芳屋さんにご案内すれば――」

「ほう? では、もし、君が夕紀子嬢だったら、どちらが良いかね?」

「どちら……?」

「ただの友人に付き添われるのと、想い人に迎えに来てもらうの」

「そりゃもちろんっ、想(・)い(・)人(・)――」

「――だろう?」

「……ッ!!」


 紫希はクククと笑う。

 見透かされた感じのわたしは、思わず紅潮して、拗ねたようにうつむいた。

 そうしたら、紫希は、わたしの肩を抱き、その耳元にそっと口寄せ、密やかに囁(ささや)いた。


「……知っているかね? 荼枳尼(だきに)とは、密教(みっきょう)由来の天(てん)*(:*神)だが、我等が稲荷(いなり)神とも習合していて。我が国では、白(・)狐(・)に(・)乗(・)る(・)天(・)女(・)として描かれるのだ」


「!!?」


 わたしはドキンと閉口した。


「フフ。まるで、白狐(わたし)と巫女(きみ)のようではないか」

「わ、わたし……っ、は、その……っ! ふ、普(・)通(・)の(・)女学生で……っ!!」

「だが、私(・)の(・)宿(・)主(・)であることに変わるまい? 狐精(わたし)の白銀の毛並みは、絹の褥(しとね)にも勝るのだぞ」

「あ、琥狐(あなた)がモフモフでフワフワなのは、知ってますケド!」

「だが、紫希(わたし)の尾に包まれたことはないだろう?」

「……っ」


 だって、それって、たぶん、「そういうコト」だよね? っていうか。

 でも、ここは、額面通り受け取ったらダメなヤツな気がする。


 紫希はずっと不敵に笑っている。


「ああ。まったく今宵がまこと楽(・)し(・)み(・)だな」

「……もう!」

 

 このおキツネ様は、本当にひねくれているというか、少しイ(・)ジ(・)ワ(・)ル(・)だ。


 でも、そんな彼に惹かれて、うんざりしながらも応えて、かえって求めてしまう、紗江(わたし)は、結構、イ(・)ケ(・)ナ(・)イ(・)女(・)の(・)子(・)なのかもしれない。

<執筆後記>

 徐々に紗江(さえ)とおキツネ様の距離が近づいている様子。

 また、夕紀子(ゆきこ)と庚興(みつおき)は幸せな結末を迎えられるのか?

 と、いったところでしょうか。


 あの一時退却した悪党のことも含め、それぞれの思惑や因果が交錯する中で、「ざまぁ」&「ハッピーエンド」を目指さなければなりませんが。


 次回は、ちょこっと女学校ターンです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。