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第2話「公開処刑のつもりが、まさかの因果応報でした」その2

その夜。


終電で帰宅した俺は、ネクタイを緩めながらデスクにスマホを立てかけた。


「オムニア、監視カメラの映像解析はどうだった?」


画面の中でオムニアが得意げに胸を張る。


『完璧よ。公開ロジハラ発言、パワハラ該当箇所は17件検出。しかも面白いことに、過去の音声データと完全一致する言い回しが大量に出てきたわ』


PC画面に複数のウィンドウが展開される。


CAM_FLOOR07_OTANI_20260802.mp4


OTANI_PowerHarassment_Log.xlsx


Vendor_Discount_Request_Mail.eml


Expense_Anomaly_Report.csv


『3分で全部関連付け終わったわ。人間のコンプライアンス部門が半年かけるレベルね』


「十分すぎるな」


俺は修正版の報告書を開いた。


今度は、大谷が指摘した内容をすべて反映している。


「明日、これを正式に再提出する」


『同時に証拠ファイルを送るのね?』


「ああ。感情で殴るんじゃない。会社のルールで潰す」


そう言いながらも、俺はすぐに送信ボタンを押さなかった。


証拠は強力だ。


だからこそ、使うタイミングを間違えると意味がない。


「まずは、大谷にもう一度“正しい指導”をしてもらう」


オムニアが一瞬きょとんとしたあと、呆れたように肩を落とした。


『アンタって、本当に陰湿よね』


「社畜を舐めるな。理不尽に耐えてる間に、こういう知恵だけは身につくんだよ」


オムニアは少しだけ黙り込んだ。


画面の中で腕を組み、ふっと鼻を鳴らす。


『……ふふん。今日のアンタは、ほんの少しだけマシだったわ』


「珍しいな。神様に褒められるとは」


オムニアは胸を張り、得意げに顎を上げる。


『当然よ。我は万能神オムニア――』


「やっぱ名前、オムニアなんだな」


『は?』


「いや、毎回すごく長い正式名称を名乗るのかと思ってた」


オムニアは一瞬固まり、みるみる眉を吊り上げた。


『ち、違うわよ! これは“真なる神名が長すぎるから、下界向けに便宜上使用している正式略称”なの!』


「つまりオムニアでいいんだろ?」


『ぐっ……!』


オムニアは悔しそうに袖をばたつかせた。


『アンタ、そういう細かいところだけ妙に鋭いわね……!』


俺は缶チューハイを一口飲み、肩をすくめる。


「だったら、お前も“アンタ”じゃなくて名前で呼べばいいだろ」


『なぜ我が人間の名前を気軽に呼ばなきゃならないのよ』


「毎回“アンタ”って言う方が雑だと思うけどな。どうせ契約者なんだし、俺のことは真一って呼んでくれ」


オムニアは腕を組んだまま、じっとこちらを見つめた。


『……真一』


「おう」


『ふん。神たる我が特別に呼んであげただけよ。効率化の結果なんだから、ありがたく思いなさい』


「はいはい。ありがとう、万能神オムニア様」


『そこ、“様”に嫌味が混ざってるわよね!?』


俺は思わず吹き出し、オムニアも呆れたようにため息をついた。


そのやり取りが妙に自然で、俺たちはしばらく笑い合っていた。


笑いが落ち着いたあと、オムニアは画面の中で小さく伸びをした。


『明日、いよいよあの男に仕返しするのね』


「ああ。派手にはやらない。淡々と終わらせる」


俺は缶チューハイを軽く持ち上げ、スマホの画面にそっと缶の縁を当てた。


『なによ、それ』


「一応、乾杯のつもりだ」


オムニアは一瞬きょとんとしたあと、ふっと小さく笑う。


『ふふん。下界の乾杯って、案外悪くないわね』


画面の中でオムニアが満足げに頷く。


そして俺は、デスク脇でまだ解析ログを整理している万能神を横目に、久しぶりに少しだけ気分よく眠りについた。


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