ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのに〜 06
そんな混沌とした状況の中、ヌルリとにじり寄る肉食獣が一匹。
「戦士、レイブン! あんたに、真剣での立ち合いを申し込む!!」
筋肉ムキムキの、ゴリゴリお姉さんである。
彼女の名前は、ドラナ。
神官戦士の枠に収まりきらない、筋骨隆々の戦士だ。
身長は175cm。体重は78kg。彫刻のように鍛え上げられた鋼の筋肉の上に、意志の強さを感じさせる凛々しい顔立ちが乗っている。そんな感じの女性である。
肌の色は健康的に焼けた褐色で、髪の毛は短く刈り上げられている。
琥珀色の瞳が、戦場では鋭い殺気を、平時には姉御肌の包容力を宿していた。
「ドラナの姉さんかぁ……」
レイブンは嬉しそうに笑った。まるで、灰色熊の哄笑である。
「めちゃくちゃ楽しそうだし、めちゃくちゃヒリヒリするけどよ……」
レイブンはゆっくりと剣を抜いた。
「あんたとオレが真剣で立ち会うと、腕の1本や2本は……平気で飛ぶぜ?」
ドラナは、鼻で笑った。こちらも、ゆっくりと剣を抜く。
「ここを何処だと思ってるんだい? 戦神様のお膝元だよ? 下手な傭兵団より、実戦経験は豊富だからね! 神官も、修羅場を潜ってるさ!!」
ニヤリと笑った。八重歯が、牙にしか見えない。
「ガロンのおっさんの教えてくれた、分割回復魔法もある」
そこで、苦笑を浮かべた。
「さすがに、1人で分割はムリだけどねぇ……」
「いいか、お前ら!」
観戦者に向かって吠えた。
「回復班! ここからは修羅場だ! 普通の回復魔法だと、手遅れになる!! だから、2人一組で、回復魔法を使うんだ! 1人が血管。1人が筋肉と神経! 役割分担を、決めておきな!」
「ガロンのおっさんが、あの職人技を思いついた元ネタだな? 二人一組での回復魔法。教えられてないのに、気が付くのか……」
「人間という種族は……面白いの。創意工夫の固まりじゃ」
ガロンは1人頷いていた。
“ワシの分割回復魔法を見て、元ネタを思いつく……か。因果は回る糸車……とは、良く言ったものじゃな”




