ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのに〜 44
「それは、模擬戦の時だけだ。実戦は、一対一じゃないからな」
「あ!」
リリスは、左手の平に、右拳をポンっと打ち付けた。
「そっか! レイブンがいくらバケモノでも、数で囲んじゃえば……」
「勝てるぞ」
ドラナはニヤリと笑った。獰猛な肉食獣が顔を出す。
「そのうえ、あたしたちは、自分で回復できるからな。仲間と代わって、少し後ろに下がれれば……」
「自分に回復魔法?! 反則技じゃん!!」
リリスは嬉しそうだ。性悪猫が、獲物を狙う。
「そうなったら、レイブンは……」
「間違いなく、撤退を選ぶ?」
ドラナは、リリスの頭を撫でた。
「正解だ!」
「レイブンみたいなバケモノには、数と反則技かあ……」
「これができるのは、あたしたちだけだぞ。他の神殿の神官戦士だと、こうはいかない」
ドラナは誇らしげに笑った。
「??? 神官戦士なら、自分に回復魔法 、使えるんじゃないの?」
リリスの疑問も、もっともだ。
「いいか、リリス。怪我は……痛いんだ。それと、めちゃくちゃ焦る。死んじゃうかもしれないって気持ちになるからな」
「なんとなく分かるけど……」
「あたしたちなら、痛みを無視して自分に回復魔法 を使うが……普通は、こんな馬鹿な真似は出来ないぞ。冷静さを欠いたら、回復魔法 は発動しない」
「!!!」
戦神の神官……こいつら、どこかおかしい存在である。




