ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのに〜 42
「カワイイが……あたしには、通じないぞ」
ドラナは、笑ってリリスの頭を撫でた。その琥珀色の瞳には……慈愛の光が籠もっていた。
「ドラナが、遠くにいっちゃた……」
リリスは、泣き真似をしてみせる。その紫色の瞳には……ドラナに対する、絶対の親愛の情が籠っていた。
君たち、ずいぶん仲良くなったね?! 昨夜、なにがあったの?!
「まずは、傭兵。彼らは……生き残って、カネを貰うために戦う。ここまでは、いいか?」
「うん」
「次に、あたしたち神官戦士。あたしたちは、信徒を守るために戦う」
一拍置いて、続けた。
「兵士が、町を守るために戦うのと、同じだな」
「うんうん。ドラナ、話すのうまいよね」
「だから、あたしに褒め殺しは、通じないぞ?」
「あたしにしては珍しく、本心なのに……」
リリスの視線とドラナの視線が熱っぽく絡み合う。
一瞬の間。平常に戻ったのは、二人同時だった。
「で、あたしたちの場合だが……」
「どうなるの?」
切り替えの早さが、尋常じゃなかった。さすが一線級の戦士と、性悪猫である。
「無意識のうちに、敵を戦闘不能に追い込もうとするからな。剣の振りは大きくなるし、急所狙いになってくる」
「ん? それって……」
リリスが何かに気づいたようだ。
「お? 気づいたか?」
ドラナはニッコリ笑った。
「レイブンには、どこに攻撃が来るか……分かる?」
リリスは、顎に右手人差し指をあてながら答えた。計算されつくした、あざとさである。




