ある神官の成長日誌 〜ジュール編・そのに〜 10
キンっ! 澄んだ音が響き渡った。慌てて戦場に目をやると……ドラナの剣が弾き飛ばされた所だった。
「上手いっ!」
「あの灰色熊、見た目とは、裏腹だなっ!!」
レイブンの妙技を見せられ、観戦者が沸いた。
「あれは……」
ジュールは悔しそうだ。つい先程、自らの剣を弾き飛ばした妙技なのだから。
「あれ……ズルいよねっ! どうやっても、剣が飛ばされる!」
バルナスも、悔しそうだ。
「相変わらず……嫌らしい技じゃ。アレは、ズルいのう」
審判をしているガロンも、思わずボヤいた。
レイブンが行ったのは、単純である。巻き込むように剣を叩きつけ、相手の剣を飛ばしたのだ。
盗賊が使う武器落としの一種ではあるが……成功率が、とてもおかしい!!
レイブンは、剣を大きく振り被った。
「往生……」
渾身の力をこめて、振り下ろす。
「……せいやあ!!」
ドラナが革鎧を着けているから即死しないとはいえ、殺意が高すぎである。
ドラナは、自然に右手を下ろした。右腰に吊った短刀の柄を握り込み、親指で留め革を外した。
“もうちょい。もうちょい”
ドラナはタイミングを計っていた。
“今っ!”
ドラナが短刀を振り上げた。
キンっ! 澄んだ音と共に、レイブンの剣を受け流す。同時に、左拳をレイブンの右小指に叩き込んだ。
「ぐうっ……」
レイブンの口から苦痛の声が漏れた。どうやら、骨が逝ったらしい。
「貰った!」
ドラナは、レイブンの剣に左拳を叩き込んだ。
握力が弱まっているところに拳を叩き込まれては、たまらない。レイブンの剣が宙を舞った。




