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銀のペンと魔法の回路 ―見習い修復師リリスティアと氷魔法を使う謎の少年、ときどき食いしん坊精霊のモフモフな日々。―  作者: 海優璃


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46.防波堤の攻防

 リセの周りはブランのおかげで安全になったが、5メートルも先にいけば魔物がひしめき合うように押し寄せて来ている。


 ラルフさん達は、ブランの作った結界を背にして、魔物と対峙していた。ラルフさんが剣を一振すると、何匹もの魔物が倒れるのに、どんどん後ろから新しい魔物が湧いてくるようだった。


 堤防の奥へ目を遠くに向ければ、先ほどまでは、黒い山のように見えていたその奥に巨大な竜が見えた。


「どうしよう。えっ?竜なの?あんなに大きいのまで⋯⋯。この魔物除けの防護石何とか起動しないと⋯⋯」


 リセは少しまだ震える手で修復筆を握り締めた。


 キラキラと筆の周りで光が舞う。空中に精緻な魔導回路を描き出し、復元された硬晶石の表面へゆっくりと焼き付けていく。そこからさらに先へと続く回路の光を繋げていく。遅くてもいい、確実に。リセはただひたすらに、目の前の光の軌跡へと集中していった。




 ――リセが港の端で硬晶石の修理を行っている頃――



「よし、氷結魔法の充填完了だ!坊主、まだ魔力は大丈夫か?」

「はい。魔力の注ぎ方も分かってきた気がします」

「よし、もう少し頑張ってくれ! 次の砲台に行くぞ!」

 防波堤の上で、ジャンは息を荒くしながらも、並べられた魔導砲台へと次々に両手をかざしていた。


 ――魔力を込める感覚に慣れていく中で、ジャンはふと、リセと一緒に氷結魔法のスクロールを直した時のことを思い出していた。あの時、自分はなるべく低い温度になるように意識して魔力を込めたはずだ。


 (……待てよ。ただ魔力を流すんじゃなくて、温度を極限まで低くして、ぎゅっと圧縮するようなイメージで注ぎ込んだら、もっと威力が上がるんじゃないか?)


 はっと閃いたジャンは、目の前の砲台に視線を据えた。

 頑丈な金属製の台座に固定されたその砲台は、先端に大きな六角錐の魔導結晶が埋め込まれている。


 ジャンは今度はただ流すのではなく、自分の中で冷気を限界まで凝縮させ、一気に結晶へと流し込んだ。


 その瞬間、砲台の結晶がこれまでとは比べ物にならないほど、青白くギラギラとした圧倒的な冷気の輝きを放ち、周囲の空気が冷えたのか分かった。


「おいおい……なんだ今の冷気は!? おい坊主、お前一体何をした!?」

 隣にいた冒険者が、思わず腕を擦りながら声をかけてきた。


「えっ、あっ、温度を下げて圧縮出来ないかなと思ってやってみたんです。これ、成功ですかね?」

 ジャンは、魔導砲台にしっかりと魔力が込められていることを確認しながら言う。


「マジかよ……おい、俺たちもそれやってみようぜ!」

「魔力を圧縮か、試してみる価値はあるな!」

 ジャンの言葉を聞いた周囲の冒険者たちが、次々と魔導砲台へ温度と魔力の圧縮を意識して魔力を込め始めた。


「こっち終わったわよ!」

「こっちも、これで最後だ!」


 仲間の声が響く中、ジャンもまた、残っていたひと回り大きな魔導砲台へと向き合う。

 港の奥へチラリと目をやると、シャンパン色の光が見えた気がした。


 ジャンは深呼吸をして、再び最大限に魔力を圧縮して、魔導砲台へと流し込んだ。先ほどの砲台の倍以上の時間がかかって、目を上げると近くにいた冒険者たちにじっと見られていたことに気がついて焦る。


「これは、今日一番の威力のなりそうだな!すげーよ!」素直な称賛に少し照れながら周りを見渡した。


 周りでは数人の冒険者が時々飛んでくる魔物を弓矢や魔法で仕留めている。


 そして。炎、風、水、そして氷。様々な属性の魔力が込められた魔導砲台を前に、鋭く海を見据えていたギルド長と目が合った。


「よし、全砲台の充填完了だな! 全員、これより港の広場へ撤退し、魔物を迎え撃つ!」

 ギルド長の地鳴りのような怒号が防波堤に響き渡る。


「大量の魔物が、まもなくこの港へ押し寄せてくる。この防波堤の魔道具は、防波堤から引き揚げた後に遠隔で順次起動させ、港へ流れ込む魔物の量をコントロールする。街へは一匹たりとも通すな! この港で全て殲滅する!」



 港の広場へ戻ると、黒い影が今にも防波堤に届く所まで迫っていた。ギルド長は遠隔での魔導砲台の発射を指示した。


 ドォォン!! と激しい音を立てて、まず炎の砲台が火を噴いた。海面を跳ねて突進してきた黒い影――魚型の魔獣たちが、爆炎に包まれて弾け飛ぶ。「よし、いけるぞ!」誰かが叫んだ。


 続いて風の砲台が鋭い真空の刃を放つのが見えた。攻撃の隙間をすり抜けた魔物が港へ突っ込んで来たのを、危なげなく大剣をもった男が仕留める。


 防波堤の砲台による防衛策は、確実に魔物たちの進軍を遅らせていた。


 ゾクッ、と背筋を凍らせるような強烈な不快感が、港全体を包み込んだ。


 黒く蠢いていた海から巨大な竜が突然顔を出した。

 ギルド長が叫ぶ。「防波堤を多数の魔物が抜けた!しっかり迎え撃て!」同時にいくつかの砲台から魔法が発射された。

 ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。続きが気になる、あるいは気に入っていただけましたら、ブックマークや評価で応援いただけますと大変励みになります!

 これからも、よろしくお願いいたします。

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