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銀のペンと魔法の回路 ―見習い修復師リリスティアと氷魔法を使う謎の少年、ときどき食いしん坊精霊のモフモフな日々。―  作者: 海優璃


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27.潮溜まりの宝物とウニポテサンド

「あ、これ! おじいちゃんが言ってた『銀河結晶(ぎんが結晶)』じゃない? 空から降ってくるって。この海星もしかして、『流星海星(ながれぼしひとで)』じゃない? 魔力伝達の触媒になるやつだったはず! ……あ、これ『絢織(あやおり)ウミウシ』じゃない? この赤と金、大きめのひだが特徴的で……」


 海星は素材取得用の袋に入れた後、マジックバッグにしまっていく。銀河砂は瓶の中にそっと入れた。ウミウシは持ってきたピンセットで丁寧につまみ、別の瓶に入れて特殊な液体を数滴垂らす。軽く振ると、赤と金が分離した、見たこともないほど綺麗なインクが採れた。

「ありがとうね」

 リセはウミウシをそっと元の場所へ戻してあげた。


「ねぇ、ブラン。さっきのって魔力探知? 便利だよね。私にもできないかなぁ?」

「どうやるの?」

「うーん? あそこにジャンがいるでしょ? 目を閉じても、あそこにジャンの魔力を感じるんだよ」

 ……うん。やっぱり、ブランの説明はレベルが違い過ぎてよく分からない。

「でも、リセは修復の時によく魔力の痕跡は感じ取ってるでしょ? それと同じだよ」

 言われてみれば、確かに似ているような気はする。練習あるのみと、リセがブランの魔力を感じ取ろうと集中すると、「あっ、僕の魔力は感知出来ないようにしてるから、ダメだよ」と遮られてしまった。

「むぅぅ、精霊様め」


 時には岩陰に潜む小さな蟹と追いかけっこをしたり、打ち上げられた不思議な流木を鑑定したり。そうして夢中で素材を集めているうちに、いつの間にか太陽は真上に昇っていた。


「よおし、昼メシにしようぜ!」

 ラルフさんの豪快な声が響く。


 ジャンは基礎練の後、ラルフさんに剣を当てられるかというゲームを最後にやっていた。「いけるっ」と思って突っ込んではヒラリと避けられ、そのたびに砂浜へダイブして全身砂まみれになる。それを何度も何度も繰り返し、ようやくラルフさんのブーツにほんの少しだけ切っ先が触れた瞬間、ジャンは跳び上がって喜んだ。

 今は木剣を杖代わりにするほど疲れ切っていたが、その表情はどこか清々しい。


「リセ、サンドイッチ出してくれるか? ……あ、あと、せっかくの海だ。おかずを現地調達しようぜ」

 ラルフさんはそう言うと、服をまくり上げて浅瀬へと入っていった。驚くほど素早い動きで岩の隙間に手を突っ込んだかと思うと、次の瞬間には大きな蟹を二匹、さらにいつの間にかトゲだらけのウニを四つも掴み上げていた。


「カニと、そのトゲトゲ……何?」

 ブランが浮遊したまま首を傾げる。ラルフさんはどこからか見つけてきた大きな葉で蟹とウニを別々に手際よく包むと、そのまま焚き火の端に放り込んだ。


「えっ、ラルフさん、そのまま!? 焦げちゃわない?」

 リセが驚いて声を上げると、ラルフさんはニヤリと笑った。

「蒸し焼きにして旨味を閉じ込めるのさ。……ほら、匂いがしてきただろ?」


 パチパチと爆ぜる火の中から、葉の焼ける香ばしい匂いと、濃厚で甘い磯の香りが溢れ出してきた。ジャンも匂いに引き寄せられてやってきたが、葉の中から現れた「中身」を見て、顔をひきつらせた。


「……ラルフさん、これ、本当に食べられるんですか? その、トゲトゲの中にあるドロっとしたオレンジ色のやつ……」

 ジャンは未知の食べ物を前に、後退りしている。ラルフさんは「冒険者は見た目に惑わされちゃいけねえぞ」と笑いながら、熱々のウニを貝殻で掬い、豪快に口に放り込んだ。


 それを見ていたリセは、バスケットからポテトサラダのサンドイッチを取り出すと、好奇心に目を輝かせた。

「ねえ、これに挟んだらどうかな……?」

 リセは、黄金色のウニをサンドイッチの上に贅沢に乗せてみた。


「……それって合うの? おいしい?」

 ブランが不思議そうに覗き込む中、リセはその『ウニポテサンド』を頬張った。


 リセの目が大きく見開かれる。

「……美味しい!! ジャガイモと、ウニが溶けてソースみたい! ジャン、怖いなら私、全部食べていい?」

「えっ!? ほんとに? いや、僕も食べる。何事も経験だよね!」


 ジャンは、恐る恐る一口食べた。その瞬間、彼の表情は劇的に変わった。

「……っ! あれ? なんだこれ、とろける……! 全然臭くないし、甘い!」


「……僕にも。ひとつ、ちょうだい」

 ブランもそれまでの怪訝な顔はどこへやら、自分も一口もらおうとリセの周りを飛び回り始めた。


 結局、ブランは一番大きな蟹の脚を抱え込み、魔法で殻を取り除き、「あち、あちっ」と言いながら爆食した。

「……海、おいしかったね」


 お腹がいっぱいになり、満足したブランは、今度はリセの膝の上で丸くなった。

 波の音を子守唄に、午後の柔らかな日差しが、三人と一匹?を優しく包み込んでいた。


ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。


もし、続きが気になるな、ブランをまた見にきたいな、と思ってくださったら、ページ下部の【ブックマークに登録】をぽちっと押していただけると、作者が嬉しくて工房の床を転げ回ります!

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