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銀のペンと魔法の回路 ―見習い修復師リリスティアと氷魔法を使う謎の少年、ときどき食いしん坊精霊のモフモフな日々。―  作者: 海優璃


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19.氷結スクロールの修復1

 ボロボロの氷結スクロールを前におじいちゃんも絶句した。

 大きく2つに千切れてしまっているし、耐火加工してあるはずなのに、ところどころ焦げてしまっている。


「⋯⋯⋯⋯これは、ちょっと難しいな⋯⋯」

 とおじいちゃんは顔をしかめる。


「やっぱそうだよな。西の山の方の火竜と戦った時に、あいつ氷苦手だから、氷結スクロール使ったらさ。必死でスクロールをダメにしようと火を吹くわ、爪で引っ掻くわ大変でさ。氷結のスクロールなんて貴重だからさ。諦めきれなくて、じいさんでダメなら墓まで持っていくかね⋯⋯」

 とラルフさんは、肩を落とした。


「えっ?もう使えないってこと!えっ?ラルフさん。練習用に貰えない?」


 っとリセは目を(きら)めかせてラルフさんを見上げた。


「あぁ、リセの練習用か!いいぜ。変わりに直ったら、修理代払うから絶対返せよ」

 豪快にラルフさんは笑った。

「ギルドで、氷結魔法使えるやつか、スクロール探してみるよ。動きを止めるとなると、雷、土系の魔法も効果があるかもな。」


 おじいちゃんは、じっとスクロールを見つめるリセを見て聞いた。

「リセ、直せそうか?」

「損傷は、酷いけど大事なところは残ってるよね?」

 おじいちゃんは、頷く。

「そうだな、微妙なところだが、可能性はあるかもしれないな⋯⋯」


「ラルフ、もし見つから無かったら、悪いがもう一度こっちに寄ってくれないか?何かいいアイテムが無いか探してみるよ」

 ラルフさんは「わかった。助かるよ」と言うと工房を出ていった。


 ラルフさんを見送った後、すり鉢の準備をしてから、おじいちゃんの様子を伺う。

「ねぇ。おじいちゃん。この間見せてくれた、カイロウドウケツの変異種⋯⋯白磁の契り⋯⋯少し使えないかな」


 おじいちゃんが、これは珍しいんだぞ!3年ぶりに手に入れたんだと嬉しそうに言っていた素材だ。2つのものを結びつけると言う素材で、夫婦がペアのアイテムを持って置くと、いつまでも仲良くいられると言う言い伝えがあり、結婚する時の贈り物として喜ばれる。魔力を通すと自分の場所を相手に伝えられたり、簡単な音声や文字を伝えられるものが人気だ。これで、おじいちゃんはリセが結婚する時のお祝いを作ってくれるつもりだったらしい。さすがにまだ早すぎると言ったけど、なかなか手にはいらないから、早めに準備しておくものらしい。

「⋯⋯どう使うつもりだ?」

「白磁の契りは、くっつけたり、繋げるのが得意でしょ?これも、引き裂かれた運命の二人だからくっつかないかなって?」

 リセは両手にスクロールを片方ずつ持って、「ね?」と同意を求めた。


「なるほどな。確かにくっつける点では、いい視点だ。だが、『白磁の契り』はただの糊じゃないぞ。ただ溶かして塗っても、すぐ剥がれる。網のようにする事で、つよい強度がでるんだ。ただ、スクロールの回路部分に、大きい凹凸が出来ると、魔法の発現に問題が出るぞ。」


「う〜ん。そっかぁ。薄く薄く水スライムの脱皮した皮みたいに出来たら使えるかな?」


「⋯⋯そうだな。そのぐらいまで薄くして網状にする必要がある。」

 おじいちゃんは、迷いながら頷いた。


 水スライムの脱皮した皮はとても薄い、髪の毛よりも薄く、透明で、そして脆い。一度天日でしっかり乾かした後に、水で戻すと、火傷などの時に冷やしたり保湿したりするのに使える。何かと混ぜて強度を出したら、使えそうな素材だとリセが注目している素材だ。

 水スライムの大量発生が半年ぐらい前にあって、その時に大量に仕入れたものがこの工房にもある。


 この半年、リセは魔力操作の練習と実験を兼ねて、水スライムの脱皮した皮と魔鹿パウダーで色々試してみていた。

「ねぇ。おじいちゃん。水スライムの脱皮した皮を粉状ににすり潰して、7対3の割合で魔鹿パウダーを入れるとね少し強度が上がるのね。でね。ちょっと魔力操作の練習としてね。レース編みみたいにしてみたの!!これ使えそうじゃない?」


 リセが机の上から半透明で細かなレース編みになった小さな布を見せる。

「これは、凄いな!魔力操作も中々なもんだ。それになんだか綺麗だな。」


「これに、『白磁の契り』を少し足して、スクロールをくっつけられそうじゃない?」


 おじいちゃんは、頭を掻きながら言った。「これは、参ったな。いや、いいと思うよ。儂じゃあ。こんな事は思いつかないな。焦げたのも水スライムを通してある程度修復できそうだし。これなら可能性がありそうだ」


 そう言いながら、棚から箱に入った『白磁の契り』を持ってきてくれた。


「他に使うのは、魔鹿パウダーと水スライムの脱皮した皮、後は氷色ウミウシのインクと氷結海月の膠かい?氷蜂の針も必要かな?」


 おじいちゃんが確認してくれる。 

「基本は⋯⋯そうだよね。後、氷蜂の針と一緒に、魔力をためる性質のある素材をインクに入れられないかなって思ってるんだけど、出来ないかな?ジャンの氷結魔法を閉じこめたら、スクロールがパワーアップしそうだなって。」

 リセが言うとおじいちゃんは頷いた。

「それなら氷晶石がよさそうだな。氷晶石の欠片が、倉庫にあるよ。⋯⋯よし!やってみるか!」

「ジャンもいいかな?」

 と、リセがジャンを見つめる。

「もちろんです。」

 ジャンも真剣な顔で頷く。心の中で、リセって実は凄いんじゃ⋯⋯と思い始めた瞬間だった。


 おじいちゃんが、こりゃあ、リセは大物になるなぁ。っとボソリと呟きながら準備を始める。


 リセにはその呟きは届かず、キラキラとした目で「やったぁ!」と必要な素材を集め始めたのだった。


リセは自分のやってみたい修復を試せそうでご機嫌です。


本日もう1話更新予定です。


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これからも、よろしくお願いいたします。

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