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ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


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第91話 高橋鑑種宗仙

1571年1月 勝尾かつのお城   宗仙そうせん


 なるほど、と戦の準備をしながら思う。


 こうやって準備万端のところを待ち構えられて自分は殺されかけたのだ。若いのにえげつない真似をする。いやあの時、水城みずきで戦った時はもっと若かったか

 だがどんな真似をしても勝つというのは自分好みではあった。


 自分はかつて高橋鑑種(あきたね)の名で武勇を示していた。だが今は宗仙と名乗っている。

 大友から毛利へと、身の全てを投じた賭けに負けた敗将である。


 だが幸運にも生きながらえることが出来、今は筑紫のやっかいになっている。


 二年前、水城での戦に敗れ、九死に一生を得た。


 筑紫の大将になぜ助けたのか尋ねると、生きていれば人質にして開城を迫るつもりだったのだが、その前に宝満城が落ちたのだという。

 今となっては生き死にはどちらもよいが、せっかく拾った命なのだ。ゆっくりと養生しろと御答えになった。


 養生と言われたが自分の傷は深かった。立ち上がれるようになるまで一年。元の体に戻るまでには更に一年を要した。

 その間、自分は小さな里山で匿われていた。


 不思議な里山だった。

 住民は皆、何かしらの怪我を抱えており、見たことも無い物を作って生活していた。


 年が明け、ようやく体に何の違和感もなくなり、これから如何いかがしたものかと、いつもの様に外で体を鍛えながら考えておると、自分を瀕死にした張本人である筑紫俊介広門がやってきた。


 俊介殿とは昨年の秋ごろから何度か会話を交わしていた。この日もいつものように首巻を付け、隣には七尺にはなろうかという大男を連れていた。


 戦の事だ。水城での出来事について俊介殿に恨みは無かった。

 ただこれから先は如何するかと思い悩んでいた。


 体が完全に回復した礼を述べて、これから先の事を決めるのに世の中の事を聞いておきたいと思っていた。

 何しろこの二年近くもの間、自分はずっと隠居同然であったのだから。


 自分に外の事を教えると体が癒える前に無茶をするのではないかと、今までは意図的に情報を伏せられていたようだ。

 あるいは自分をどう扱えばいいものかと持て余していたのかもしれない。


 だが十分に癒えた体は、外の話を聞き、外に出たいと欲し始めていた。


「筑紫広門だ。寒いのに精が出るな。体は元に戻ったのか」


「はい、おかげさまで。お命をお救い頂き感謝申し上げまする」


 自分は鍛錬の最中であったので上半身が裸のままであった。直ぐに膝をついて身を正し、改めて礼を述べてから頭を下げた。


「気にするな。元はこちらが付けた傷だ。それにしてもあの怪我から完全に回復するとは大した体だ。どこかしら不自由が残るようならば、今後もこの里に居てもらい皆をまとめてくれればと考えていたのだが……」


 自分を里に残そうと考えていたことは以前にも教えられていた。だが自分はどうも不器用であるらしい。

 世話になりっぱなしでは心苦しいので、物作りを手伝ってはいたが、どうにも上達しなかった。力仕事の方が性にあっているのだろう。


 俊介殿はそれでもいいと仰っていたが、職人の村の長が不器用であるのはよろしくないだろう。

 それに体が完全に癒えたので山を降りたいと思っていた。刺激を欲していたのだ。


「ここではじっくりと話が出来ぬ。里長さとおさの館にお邪魔するとしようか」


 そう言って迷わずスタスタと歩き始めた。

 どうやら俊介殿は自分と話すために来たようだ。外で何かあったのやもしれぬ。


 この里には慣れているのだろう。迷いのない足運びだった。

 里長の元に向かう道中、俊介殿は幾人もの里人に捕まり話を交わしていた。頭を下げるよりも話をしようとする里人の方が多い。

 漏れ聞こえる話は、どうやら専門的な内容であるようだった。


 奇妙な光景だと思った。教えを乞う弟子と師匠のようであった。

 本当に筑紫広門であるのだろうか、その様な疑問が浮かばずにいられない。


 だが目的地に着くと里長は俊介様と呼んで歓迎していた。

 慕われてるのは間違いない、か。


「高橋殿、汗を拭きとって来るがいい。案件が溜まっており落ちついて話ができそうにない」


「はっ、それでは失礼いたしまする」


 どうやら着いて来た里人との話を最初に締めるつもりのようだ。

 自分はいったんお暇し、格好を整えてから再び訪れることにした。


 再び里長の館に足を運ぶと、まだ残っていた里人が追い出され中へ通された。

 世話になった事に礼を述べて、里人を追い出してよかったのかと聞くと


「なに、ただの雑談だ」


 手元の茶を飲みながら、自分にも勧めてきた。


「失礼いたす」


 初めて飲む、洗練された茶の味だった。


「自分に何かしらお話があるとのことですが、何なりとお聞きくだされ」


 命を救われたのだ。嘘偽りなく答えるつもりだった。


 すると俊介殿は口に手を置きながら、少しばかり言いにくそうに眉を曲げて話を切り出してきた。


「正月に宗麟様に会ってきた。一見今までと変わらぬように振舞っていたが、義父殿によると随分とふさぎ込んで政務が滞っているらしい。大変困った事なのでご注意すべきと申したのだが、義父殿どころか道雪殿でさえ歯切れが悪くてな。高橋殿であれば事情を知っているのではないかと思い話を聞きに参ったのだ」


「なるほど、俊介殿の義父ですと斎藤鎮実(しげさね)殿ですな」


 黙って頷かれるのを確認する。

 斎藤殿と道雪殿であれば昔からの大友の重臣だ。大友重臣が口に出しにくい、宗麟がふさぎ込むような出来事には心当たりがあった。


「お話をする前に自分がいない間の大友家での出来事について、世相と共にお教えいただけますでしょうか」


 そして自分は毛利が敗れたこと、龍造寺の躍進、我が宝満城に紹運が入り家名を襲名したこと。そうした様々なことを聞かされた。

 二年あれば世相はここまで変わるものか。


 そして宗麟様の弟、もう一人の八郎殿が亡くなった事を聞いた。

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― 新着の感想 ―
宗仙は高橋だったか。 以前乃美新三郎が名前偶然かと思ってたから今回もたまたまかと思ってた
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