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ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


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第66話 戦の準備(今山の戦い)②

1570年2月 立花城  筑紫ちくし俊介広門


 島にどこを戦の相手に想定しているの聞いてみた。間違えるはずはないと思うが、たまに状況を正しく理解しているか確認しないとな。


「龍造寺で御座らんので?」


 俺は黙って頷いて肯定した。


 毛利の撤退と共に秋月は降伏した。近場で大友に臣従していない勢力は龍造寺だけだ。

 前回の戦では降伏して差し出された龍造寺からの人質が、僅か二カ月で逃げ出すという舐めた態度を取っている。

 そういう訳で大友としても罰を与えねば示しがつかないのだ。


 俺は次に爺と薦野こものに向き合って二人に語り掛けた。


「戦になればまた何カ月も城を空けることになる。俺がいない間の立花城は爺と薦野こものに任せる。二人でよくよく相談して沙汰を下してくれ」


 基本は筑紫では筑紫の法を、博多では立花の法を踏襲とうしゅうする。だがあまりにもその二つに差異があれば不満が起こるから、その場合は都度二人で相談してもらう形になる。


 それで最低でも赤点にはならない治め方が出来るはずだ。


「年貢は収穫に合わせて二人で決めてくれ。混乱が起こる様ならば大判振る舞いしても良い」


「殿は秋までに戦が終わらぬとお考えですか?」


「わからぬ。普通なら負けぬが……。龍造寺は手ごわいぞ。不甲斐ない結果になることは十分ありえる」


 龍造寺は不思議な家だ。負けそうな逆境にあっても逆転し勝利を治めるくせに、最後は有利な状況で大負けして滅んでしまう。

 兵数が少ない方が凄味というか、不気味さというか、なんとも形容しがたい雰囲気を持っている。


「殿、大友は兵数を出し渋っておるので御座ろうか」


 島は俺があまりに警戒するのでそう思ったのだろう。


「宗麟様が自ら出陣なされる気配であるようだ。あえて兵数を抑えるとは思えぬな」


「それでは我が軍はどれだけ連れて行かれますか?」


 この質問は薦野こものだ。大友当主が自ら出陣するのであれば、家来である我々も少ない数で行くわけにはいかない。忠誠を疑われる。


 薦野こものとしては立花城からどれだけ兵を徴収するつもりか気になるのだろう。


「立花城から二千。勝尾かつのお城から千と考えている」


「勝尾城から千とは、限界まで連れていかれるので御座るな」


 こう言ったのは勝尾城の城主となった島だ。


「勝ち戦が続いて死傷者も少ない。筑紫の兵にはここで無理をしてもらう。立花城からは本来もっと連れていけるが……」


 立花城の二千は石高からするとあきらかに少ない。


「戦続きで疲弊しております。領内全てを見回れたわけでは御座いませぬが、所領の様子を見た限り妥当かと思いまする」


 博多領内は、地元である立花の人間を中心に回ってもらった。庄屋しょうやとも顔見知りであったりするそうだ。見回りで従来のやり方を踏襲とうしゅうすることも伝えてもらった。それで多少は安心したんじゃないかな。


 他領では戦続きでも兵を限界まで出すところはある。だから査定が少し甘いかもしれないが…… 薦野こものの妥当だと言う言葉を信じて二千にするか。


「殿、失礼を承知で言わせてくだされ。まことに此度の戦は手ごわいとお考えでござるか?」


「思っているぞ、島。龍造寺は兵数の違いだけを見て侮っては決してならぬ相手だ。今までの戦いと遜色ない、いや、それ以上の危険をはらんでおる」


「であれば、博多周辺からの兵は三千までお集めくだされ」


 ……確かに島の言うとおりか。余裕なんか見せている状況じゃない。

 俺がそのように言っているのに、指示と行動が話と違っていたら部下たちが危機感を持つはずがない。


「…… 薦野こもの、集められるか?」


「無理をすれば能いまする。しかしながら殿、それでしたら一つ提案が御座います。櫛田くしだ神社を復興し、社殿を建立なさりませぬか」


 櫛田神社か、およそ千年前に建てられた博多で最も古く、権威がある神社だ。たしか秀吉が博多を支配する時に社殿を建立したはずだ。


 兵を徴収する不満をそれで抑えるか。

 さすが地元の人間だからこそ思いつく献策だな。


「いくらかかる?」


「まずは戦で壊れたところの修繕だけ、それならば四百貫もあれば……社殿の建立は後になっても良いかと思いまする。まずは大事にすることをお示しする事が肝要です」


「良い考えだな。必ず進めてくれ」


 薦野こものが承知したように頭を下げる。


「殿、立花城からの兵は筑紫と比べ数こそ多いですが、これを決して当てになさいますな」


 島が心配そうに忠告した。


 数を増やすとはいえ、集める兵のほとんどが百姓兵だ。俺は今まで訓練された兵しか扱ったことがない。初陣のつもりで慎重に使うつもりだ。さもないと痛い目に会うだろう。


 弾正が居てくれれば心強いのだが……そばに付けるか迷うところだ。

 弾正は平野が広い佐嘉城の戦では以前のように騎馬を率いてもらうつもりだった。


 どうするかな。


 いや、弾正には傍に居てもらおう。最大戦力の三千がまともに機能しなかったら意味がない。

 三千を弾正に任せられれば、俺も自由に動ける。念のためあとで相談だな。 


 将が足りないな。薦野こものを連れていければ解決するのだが……。

 大都会の内政をやったことがない爺と、まだどこまで信用できるのか分からない薦野こものはペアにしておきたかった。


 そして戦についての話がひと段落ついたところで、宅之丞から新たな議題が上がった。堺から大量の割銭の修繕を依頼されたのだった。

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