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ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


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第54話 臼杵城

1569年12月 豊後ぶんご国 臼杵うすき城 筑紫(ちくし)俊介広門


「以上をもって幕府より筑紫広門に上野介こうずけのすけの官位が与えられる」


 広間でよく通る声が響いた。

 ここは臼杵うすき城、大友の本拠地、豊後ぶんごの国にある城だ。


 大友家は宗麟の代になってからここに本拠を移したが、現大分市でもなく別府市でもなく、なんで平野が少ない臼杵に移したのかは結構疑問に思っていた。


 だけど船の中で船長と話して理解したよ。

 府内(大分市)は砂丘のせいで水深が浅く、大型船が停泊しにくいそうだ。


 臼杵は平野が小さい以外は半島と入江に守られて潮流が穏やか、非常に良い軍港だ。大型船も泊まりやすい。


 そして城は丹生島にうじまという島に建てられているから、橋を落とせば侵入はほぼ不可能だろう。

 島には井戸もある。臼杵城は後年の島津軍も攻め落とせず撤退しているほど堅牢だ。


 だがなぁ、それでも府内(大分市)に本拠地を移すべきだ。

 直ぐには無理でも、埋め立てをしてでも移らないと経済的な成長が無くなって詰んでしまう。


 信長だって本拠地を何度も変えていたのだから、一つの場所にこだわるべきじゃないな。俺も気を付けないと。


「筑紫殿?」


 俺が考え込んでしまったので幕府の役人が戸惑っていた。

 そういや官位の授与の最中だった。


「恐れながら、拝命仕りまする」


 今日これから俺は

 源 上野介こうずけのすけ 広門

 

 親しい人は俊介、そうでない人だと役職である上野介か、今まで通り筑紫と呼ばれる事になると思う。上野介こうずけのすけは課長とか部長と同じ感じだ。


 官位についてはこの世界に来てから改めて覚えなおしたが、かなり覚えるのが面倒だった。あんまり興味がわかないからだろう。

 教えてくれた家庭教師の勢福のおばちゃんは俺の態度が悪くてプンスカしていた。


 自称で官位を名乗っても罰せられない世の中で、正式な官位を貰う意味に疑問が浮かんでしまうのだ。

 理屈ではわかってるよ。有難がっている人間がいる限り官位には意味はある。


 自称社長でも、よく分からない人はそれだけで一目おいたりするものだ。


 そして今回頂いた官位は、さすが幕府と関係が深い大友家、自称ではなく正式な官位を授けてくれた。授与してくれた役人もわざわざ畿内から来てくれたらしい。


 ちなみに俺は一銭も払っていない。こういう時は俺が主人である大友に金を払って希望の官位を伝え、大友が手数料を取って幕府に金を渡し、適当な相談の上で官位を頂くのが普通だ。


 今回俺は金を払ってないし、では誰が金を払ったんだと言ったら、主家である大友家だろう。

 感謝しろよ、と押し付けがましく言われているようで良い気分はしない。とはいえ邪険にするわけにもいかず、表面上は感謝しないといけないのが二重にストレスだった。


 弱小領主の官位なんて自称でいいんだ。信長だって長い間、官位は自称だったんだから。


 今回もらった上野介という官位は妥当ではあると思う。今までが自称、従五位下の佐馬頭(さまのかみ)だったのが、正式な従五位下になったんだからランクアップなのかな。

 自称の官位に多少は後ろめたさを感じていたから、そういう気分が無くなったのは良かったと言える。

 だからその金で銃が何丁買えた、とか思わなければ喜べるぞ。


 ……ちびちび小銭作りに精を出している俺には無理だな。


「続けて筑紫上野介(こうずけのすけ)広門を立花山城の城主に任じる」


 ざわざわと騒ぎの声が周りで広がる。


 立花山城の城主? 俺が? これは大抜擢だ。

 博多を治める事になる。

 確かに海が欲しいと言ったことはあるが、石高が今より十倍くらいになるぞ。

 本当に大抜擢だ。


 おかしい、怪しい。断れるのか? 断った方がいいのか?


 広間の一番奥、四段くらい階段になった上で、ヨーロッパの王様みたいな雰囲気で椅子に座っている当主、宗麟を見る。

 先ほどまで落ち着いた様子だったのに、俺の視線のせいとは思えないないが髭を触りだした。


「戸惑っておるようだな。俊介殿」


 そう声をかけてきたのは宗麟ではなかった。近くで謁見の様子を見ていた紹運の父、吉弘よしひろ鑑理あきまさだ。

 怪我か何かで当主の座は紹運兄に譲っているそうだが、今でも相談役として宗麟の傍で仕えている。

 俺は紹運父に答えた。


「身に余る光栄でございます。しかし現城主であられる道雪殿はいかがなりましょうか」


 不敬であるぞ、という声が周りで上がるが無視をして、壇上の宗麟を見る。先ほどから一度も声を発していない。

 まだ髭を触っている……。


 説明が欲しいと目で主張する。

 果たして口を開くのか。

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