表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/128

第49話 新婚旅行をしよう

1569年12月 筑紫館  筑紫ちくし俊介広門


 太陽がまだ昇らない朝。朝と夜の狭間の時間。頬に触れる空気だけがやけに冷たかった。


 戦が終わって一カ月後、俺はようやく琴音と一緒に布団に入る事ができる幸せをかみしめていた。


 そう、布団だ。領内で綿が普及し始め布団を用意することが出来たのだ。このぬくぬく具合は何物にも代えがたい。


 思いつく限りの言葉で布団を絶賛していたら、夢の中でアヒルとガチョウがライバル心むきだしで羽毛の素晴らしさを主張しに現れた。


 羽毛か……羽毛布団もいいよな。


 調べたらアヒルもガチョウも日本に伝来されているらしい。が、お前たちは戦乱の世で安定して飼育するのが難しいんだ。ごめんな。作ろうとは思ったんだよ。けど売れるだけ作れるとは思えなかったんだ。


 ガァーガァー、と夢の中で抗議する鳥達のせいで目が覚めた。


「お起きになられましたか」

「……ん」

「どうかなされましたか?」

「変な夢を見た」


 ふふふ、と笑う琴音にバツが悪そうな顔をして見せる。変な寝顔をしていたかもしれない。

 寝起きに腕に乗せられた重みと、柔らかな髪が腕にかかる感触が気持ち良いと思った。ただ何となく違和感を感じ、その理由をぼんやりど考えていた。


「腕が痺れてないな」

「?」

「以前、目が覚めると琴音の重みで腕が痺れていたが……」


 そういえば腕枕していたな。

 一度してから琴音が催促するそぶりを見せるので良くするようになった。この時代の愛情表現としては珍しいのではないだろうか。 


 だけど無いとは思えない。

 男女の身長差と人間の体の構造的に起こりやすい体勢だ。


 この一年ずっと鍛えていた結果をこんなところで感じるとは……。


 今年はかなりの期間を城ではなく山で過ごした。その間に背丈も急激に伸びた。自分じゃよく分からなかったが、その事は周防組からネタにされているようだ。


 曰く、今までは小さかったから訓練中に隠れた俺を見つけるのは難しかった。今なら簡単に視認できるとか何とか。



 外を見てもまだ暗いようだった。もう少し寝るべきか、起きるべきか。

 頭はそう考えているのに寒いし体が勝手に布団に潜り込んだ。琴音の体へ頭を擦り寄せる。


 石鹸……作って正解だったな。


 ハッカの石鹸は話題は呼んだが売れ行きは微妙だったようだ。今感じている匂いがハッカだったら……うん、売れそうにないかな。


「お起きになりませんか?」

「もう少し琴音を感じていたいな」


 そう言うと細い腕で頭を押さえつけられた。苦しい。これでは会話どころか息もできないんだが……。

 力の加減具合が分からないところや、恥ずかしがっている初々しさが愛おしい。そうして束の間の幸せを噛み締めた。



 俺が息がもたなくなりフガフガしだしたら、ようやく琴音は腕を緩めてくれた。


 息が続く間だけの短い幸せタイムだった。

 解放され深く息を吸うと甘い空気で肺が満たされる。


「そういえば豊後行きの件だが一緒に行くか?」

「良いのですか!?」


 頭に絡められた腕が無くなる。布団から顔を出すと目の前に琴音の顔があった。


「問題無かろう。義父殿も良いと仰っているのだ」

「でも女の足だとお時間が掛かるのではなくて?」

「途中で道雪殿へ挨拶に寄るから博多から船で行く。たいして時間に差はない」


 ここから大友の本拠地である豊後ぶんご臼杵うすき城へは女の足ならば七日はかかろう。馬なら三、四日か。

 船だと博多まで歩いて一日、その後に天候次第で船で二、三日ってところか。


「嬉しゅう御座います」


 琴音が笑顔で礼を述べる。

 うん、一緒に行くことに決めて良かったな。たぶん本当に喜んでそうだ。


 俺が豊後に行くのは恩賞の話だった。入道殿が倒れたトラブルで戦功評価に時間がかかったが、ようやく決まったようだ。

 どんな恩賞を頂けるのか義父殿からこっそり教えてもらおうと思ったが、義父殿も知らないご様子だ。

 しかしながら俺と道雪と紹運以外の恩賞は既に決まって、もう済んでいるらしい。


 自分が落とした宝満城と、そのセットになる岩屋城くらいは頂けると嬉しいんが……。高橋氏は千人ほど兵を連れていたから、あの辺りは三万石くらいはあるはずだ。

 捕らぬ狸の皮算用だが欲しい。喉から手が出るほど欲しい。そうすれば今の四倍くらいの石高になる。


 これから隣の龍造寺の勢力がとてつもなく伸びる可能性があるのだ。地力を高めておきたい。脊振せふり山地でこっそり銭作りをやっているだけでは限界がある。


 既に隠れて作る必要がなさそうな酒、油作りは片隠れ里から領内に製造を移管した。

 綿と酒、油を作り、そして博多に店も構えた。大々的に作って売る事ができる準備が整ったのだ。だが七千石の領内は狭い。土地が欲しかった。



 豊後へは褒賞を貰う目的ではあったが、琴音も一緒ならちょっとしたハネムーン旅行だな。

 戦国時代に夫婦揃って船旅が出来る人間がどれだけいようか。

 いつか本当に楽しむだけの旅行に行けると良い。

 そうだな瀬戸内海を船で旅行して、宮島を見て、堺、京都に寄る。そして秀吉が建てる大坂城に、絢爛豪華な聚楽第じゅらくていなどを見る。現代にある大坂城は徳川時代の城だから比較しても楽しめそうだ。

 そんな事を夢見る。


 そのためにも生き延びなくては。


 あれこれ体を動かしながら考えていると、起きるのか、と言った視線で琴音がこちらの様子を見ていた。


 目を細めて彼女を見て話す。


「まだまだ寒い。もう少しこうしていよう」


 琴音の頭を抱き寄せて、今度は俺の胸の中で抱きしめる。

 このまま空が明るくなるまで一緒に居よう。なんならもう一度寝てしまっても良い。

 こうして始まる朝がある事を大事にしたかった。



――― ◇ ――― ――― ◇ ―――



 これより第二章が始まります。


 続きが気になると思っていただけましたら、ポイントをお寄せいただけますと作品を続ける大きな力になります。


 どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ