表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/37

第26話 初夜

1569年3月 筑紫地方 勝尾かつのお城筑紫館 琴音


 僅かに月明りが寝所を照らしていた。

 外ではまだ、祝言に酔った兵たちが騒ぎ合う声が遠くに響いている。


 風に揺られて竹のきしむ音と笹が擦り合う音が心地良く耳に聞こえる。



 二人で布団に並んで横たわっていた。


 私は疲れていつの間にか眠りに入ってしまっていた。布団の中でそっと手を握る感触がありビクッと目が覚める。


「……俊介様」


 思わず小さい声で口が開いてしまう。目の前で夫となった人がこちらを見ていた。


「起こしてしまったようだな」


「……っ! 申し訳ありません。先に寝入ってしまいました」


 体を重ねあった後、弥生やよいの夜なのに熱くて布団を跳ね飛ばしたかった。

 だけど体を見られるのが嫌で我慢して布団に包まっていたらいつの間にか寝てしまったようだ。


 今は寒いくらいだから布団が気持ちいいけど、汗で体が冷えたかもしれない。匂いは大丈夫だろうか。


「緊張で疲れていたのであろう。私こそ起こしてしまって悪かった。愛おしく思えたのでな。嘘ではないぞ? 寝顔を触りたかったのだが起こしては不味いと思い手を握ったのだ」


 まぁ起こしてしまったのだがな、と言って握った手で強く引き寄せてくる。


「勿体ないお言葉でゴザイマス……」


 恥ずかしくて頭まで布団の中に入り込みたかったが、それでは子供だ。見つめられる眼を見ないようにして返事をするのが精いっぱいだった。急に起こされてこんな言葉をかけられたら誰だって混乱する。取り繕うことが出来ない。


 恥ずかしがる私を見て俊介様が笑っている。ズルい人だ。本当に私より三つ年下なのだろうか。


「あ、あのっ! 俊介様は齢十三とお聞きしていますが本当でしょうか」


「ああ、そう見えぬか?」


 外見は男の子っぽいけど……。


「私には兄上がおりますが、兄上より大人びて思えます」


 兄上というより、父に似ていると思ったが流石に言えない。


「会って半日と経っておらぬが、どういった点をそう感じた?」


「えっと、落ち着いているところとか。そうだ、衣替えが終わって私、俊介様と入道様がお話ししているところをふすまの隙間から見ていたんです。何か、その、じ、邪魔をすると悪いと思って」


 言わなきゃよかった。覗きなんてはしたないと思われる。

 だけど落ち着いてお話してしいる俊介様を見ていて、見入ってしまったのだ。 

 入道様と対等にお話している様に見えたのだ。それでなんだか私も落ち着いてきて……。


「私、入道様とは何度もお話ししたことがあるんですっ。父に会いにいらした時にお茶をお出しするのはいつも私の御役目だったし」


 父と入道様がお話しするのは幼い頃から見ていた光景だ。

 その光景と今日の祝言での様子が重なって見えた。

 父のところに俊介様が座っていた。


 そういえば……。

 二人が会話している間、父は一言も口を開かなかった。もしかして祝言を喜んでいなかったのだろうか。だけど入道様があんなにお酒をたしなんで楽しくしているご様子は初めて見たし……。


 良い祝言だったのよね?


 俊介様は考え込んでしまった私の様子を見て静かにほほ笑むと手をお放しになり、部屋の外に声をかけた。


「誰かいるか」


 すぐに鈴が入って来た。

 ずっと控えてくれていたに違いない。


「鈴といったな。水を持ってきてくれ、それと隣の部屋に孫大夫まごだゆうがいるはずだ。起こして湯を沸かせてくれ。体を清めたい。あぁ、それと何か食べれる物も用意してくれ。琴音が祝言で何も手を付けていなかったのでな」


「かしこまりました」


 私の名前を呼んでくれた……。


 鈴がちょっとだけこちらを見て笑う。

 私も顔を見れて少しホッとした。


 鈴が下がるといつの間にか俊介様が立ち上がっていた。

 私も立って掛け物を手に取り、俊介様の肩にお掛けする。

 近くで見るとやっぱり背は年齢相応だ。とても大きな印象を受けるのに、なんだか不思議。

 それに首の傷……。


「うん? 気になるのか?」


 思わず手を傷に伸ばしてしまっていた。

 不愉快に思われただろうか。


「そなたの父君との戦で観念して自害しようとしたことがあってな。深い傷だろう?」


 首を傾けて私に見えやすくしてくれた。御不快ではないらしい。

 だけれど、ご自害……、この方が……。

 想像できない。


「そなたがいれば二度としまい」


 そう呟いた夫は私ではなく暗闇をじっと見つめていた。


 ゾクリとする、冷たい、氷の様な目だった。


 女の身でどこまで見定められているのか分からないけど、ただの勘だし、そう思いたいだけかもしれないけど。

 目の前の男性は私の知っているどの殿方よりも大きいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ