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ブラック九州戦国時代〜修羅の国の小大名に染まったら〜  作者: 逆川水府


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第19話 『納采』結婚前の挨拶

1569年2月 筑紫館   筑紫四郎貞治(さだはる)


 年があけて二月となった。里には春の兆しが忍び寄る頃じゃが、田畑はまだまだ霜で白い。来月には祝言が開かれることから城内には明るい様子があった。


「なんだぁ? 孫をつれて」

「お主が帰って来たと聞いて様子を伺いにきたんじゃよ」


 祝言が近づいたことで使者を立て豊後ぶんごの斎藤家へ納采のうさいに伺うことになった。その代表となったのが島じゃ。

 本当ならば儂が行きたいところではあったが、冬の山越えをするのは老骨には堪える。


 島は筑紫館で斎藤殿と刀を向けて対峙したことがある故、御不快を与えるのではないかと思うたのじゃが……。


 殿と島にそのような些細を気にするような御仁ではない、と言われては、島を使者にすることを認めるしかなかった。


 そうした心配もあって豊後から帰って来たばかりのところをさっそく訪ねたわけじゃ。

 孫大夫は後学のために連れてきておる。島は孫太夫を気に入っておるしの。

 さすが儂の孫じゃ。


「昼前には豊後から帰って来たそうじゃな。無事に帰ってきて何よりじゃ。城へ出仕して殿へ報告するのは明日か? その前に話を聞いておこうと思っての」


 儂の隣にいる孫太夫は行儀良く頭を下げて挨拶をする。


「僕は本日お暇をいただいております。決してお邪魔いたしませんのでお話をお聞かせください」

「まぁいい、座れ座れ。白湯でいいな?」


 島がそう言うと使用人を呼んで飲み物を用意してくれた。

 ふぅ、白湯が身に染みるわい。猫舌の孫は口に付けていなかった。


 なんと話を切り出そうかの。島じゃから真っすぐ問いかけた方が良いか。


「それで、斎藤家の様子はどうじゃった? 納采の品は喜んで頂けたかの」

「焼酎、反物、燭台、火縄銃、馬に刀に鎧、大層喜んでいたぞ」


 それはそうじゃろう。一万石も満たない国衆が差し出すにしては随分と豪勢な贈り物じゃからな。


 当家の台所事情をふんだんに示したと言える。

 銭作りで毎月収入が入ってくるからの。

 年に一度の米の収穫だけを頼りにしていた頃と比べれば雲泥の差じゃ。


 贈り物より殿の散財の方が出費が多いほどだ。殿は入るだけ使ってしまって貯めることを知らぬからな……。


 訳の分からぬ高額なものを商人に頼んでおるので心配の種だった。わざわざ遠くから火打石を何百も取り寄せていたりする。

 そのように考えておると島がグッと体を寄せて小声で話してきた。


「ジジイの懸念な。当たっていたぞ。祝言が遅れていた原因は斎藤の姫がごねていたからだ」


「直接お話ししたのか?」


「まさか、顔を拝見しただけだ。斎藤殿も自らの恥を漏らすような御仁ではない。茶屋にたむろっていた下人を捕まえて聞き出したのよ」


 こやつ、意外な特技があるな。


「話によると琴音姫には姉がいてだな、姉妹そろって美しいと大層評判だったんだとよ。それでしばらく前に姉君が嫁に行ったんだが、その時にひと悶着あってな」


「その話なら儂も知っておる。婚約中に姉君が疱瘡ほうそうにかかってしまったそうじゃな。顔が醜くなってしまい婚約相手にお相手を妹君と変えては如何と提案したと。だが婿殿はそれを丁重にお断りし、当初決めた通り、疱瘡にかかった姉君と婚姻を結んだそうじゃな。確か名は吉弘紹運よしひろ じょううん


「なんだ、知っているんじゃねーか。ジジイが知っているとは紹運の野郎、名を挙げたな」

「茶化すでない。姉姫の真心に惹かれて婚約を決めたのだから、容姿が変わろうとも問題はないと言ったそうじゃな」


 今時珍しい出来た若者じゃ。わざわざ調べたのではないぞ。大友の武将を調べる過程で噂が流れてきたのだ。


 頭角を現しつつある、次世代の大友軍の中核になるやもしれぬ人物なのだ、紹運という男は。

 伝手ができるならば早いうちに近づいておきたい。


「立派な話だがな、吉弘家は主君である大友の血が流れている家だ。妹君イモウトギミからすると名家に嫁ぐ機会を不意にされて面子も潰されたわけだ。とはいえ姉妹仲が良かったから、この時には特に問題にならなかった」


 ふむ。紹運殿と婚約者の事に気を取られて妹君の事まで考えが及んでいなかったの。

 儂の興味が出た事を察したのか、島は事の次第を説明始めた。

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