(11)引きずり出された「新人」
「今度は何があったんだ、セリアさん。俺は今日、家で一日中ダラダラする予定なんだけど……」
「そんなこと言っている場合じゃありません! 先日のアバドン討伐、表向きは『結界の暴走』で処理したと言いましたよね? だけど、王都から派遣されてきた『最高位の特級鑑定官』が、現地の痕跡を見て気づいちゃったんです!」
セリアは頭を抱えながら、絶望的な事実を口にした。
「『これは結界のエネルギーではない。あらゆる因果を無視して、対象の存在そのものを消滅させる、未知の神級魔法の痕跡だ』って……! 現在、ギルドにいる全冒険者の魔力検査と、再度の面談が行われています。ダイスさん、あなたの番はあと一時間後です!」
「げぇっ」
またあの魔力測定をやったら、今度こそ一発でバレる。
せっかく手に入れた「偽装Fランク」のニート生活が、わずか数日で終わってしまう。
「ダイス様、ご安心ください。その鑑定官とやらがダイス様の邪魔をするなら、私が聖女の権能をもって、その者の社会的地位を『消去』して差し上げます!」
「物騒なこと言わないで、エレノア! 穏便にいこう、穏便に!」
俺は急いでローブを羽織り、セリアと共にギルドへと向かった。
ギルド内は、いつも以上の重苦しい緊張感に包まれていた。
中央には、豪奢な白のローブをまとった眼鏡の男――王都からの特級鑑定官、ルシウスが、冷徹な目で冒険者たちを値踏みしていた。
「ふむ……次だ。おい、そこのFランクの新人。前へ出ろ」
ルシウスの視線が、俺のところでピタリと止まった。
その目は、蛇が獲物を睨みつけるかのように鋭かった。




