(10)Fランクの贅沢な朝食
数日後。
俺はギルドのセリアに手配してもらった、下町にある小さな一軒家のリビングにいた。
「ダイス様! 朝食のご用意ができました!」
キッチンから弾むような声と共に現れたのは、エプロン姿のエレノアだ。
元聖女の彼女が、甲斐甲斐しくテーブルに並べたのは、こんがり焼けたトーストに具だくさんのスープ、そして絶妙な焼き加減の目玉焼き。
「……なぁエレノア、本当にここで暮らす気なのか? 王宮に帰らなくていいのか?」
「はい! 私は第一王子から理不尽に婚約破棄され、命まで狙われた身です。あんな泥沼のような権力闘争の世界より、ダイス様の側で平穏に生きる方が、百倍、いえ、無限大に有意義です!」
エレノアは胸を張って、満面の笑みで俺を全肯定してくる。
前世のブラック企業では、朝食といえばコンビニのゼリー飲料を流し込むだけだった。異世界に転生して、まさか元聖女の手料理で朝を迎えることになるとは。
「それにしても、このスープ、すごく美味しいな」
「嬉しいです! 隠し味に、昨日ダイス様が『デコピン』で半分吹き飛ばした森の奥から採ってきた、貴重な魔力野草を使ってみました!」
「……あの森、まだ立ち入り禁止になってるらしいから、あまり近づかないようにな」
俺が苦笑いしながらスープを啜っていると、玄関のドアが激しく叩かれた。
バンバンバン!
「ダイスさん! 朝早くからごめんなさい! 緊急事態ですっ!!」
飛び込んできたのは、息を切らせたギルドのセリアだった。
またしても額に青筋を立てた彼女の様子に、俺の平穏アラートが最大の警戒音を鳴らし始める。




