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俺が最も愛するゲームの推しが画面の外に出て目の前に存在しているのだが!?  作者: 内山スク
柿編

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推し異世界より舞い戻る

 梅雨が終わりを迎えた六月下旬。

 季節は夏を迎えようとしていた。

 夏入りしたことを地球が訴えるように日本は灼熱の熱帯地帯と化していた。

 それを示すように日差しが煌々と大地照らし、俺の立つアスファルトの温度を上げていた。


「あ、暑い・・・まだ六月だぞ。地球どうなってんだよ」


 六月の下旬だというのに外は茹(う)だるような暑さだった。

 風すらも熱波のような暑さを帯びており、身体中から汗が滝のように流れて止まらない。

 世間では熱波襲来と騒がれているらしい。


「今日・・・バイトなくてよかった。早く家帰ってクーラーにあたろう・・・」


 炎天下の中、汗をダラダラと垂らしながらアパートへと歩みを進める。

 一歩踏み出す足がとても重く感じる。

 暑さのせいもあるが、自分の体力の無さをこんな時に自覚する。

 真面目に体育の授業を受けるんだったと少し後悔した。


「た、ただいま・・・」


 汗が滝のように流れる身体でなんとかアパートへと辿り着いた。


「お帰りなさい奏殿・・・すごい汗ですね」


「暑すぎる・・・外は天然のサウナだよ」


「サウナ? なんですかそれは」


「温泉とかプールとかにある体を温めて血行を良くする場所・・・」


「ほう、入ってみたいです」


「まぁ・・・サウナより今はシャワー浴びたい」


 身体が汗でびっしょりで気持ち悪いし、何より汗臭いと桃に思われたくない。


「着替え用意しておきますね」


「うん・・・ありがとう桃」


 シャワーで汗を流して、桃が用意してくれた着替えると桃がいるリビングへと向かった。

 リビングは冷房を使っているためか、涼しくまるで別世界のように感じるほど外との温度差があった。

 リビングでは桃がテレビを齧(かじり)り付くように見ていた。


「何見てるの?」


 声をかけると、桃は俺に気がついたのか、可愛らしい笑顔を見せながら振り返った。


「シャワー出たんですか奏殿。なんでもコスプレ会場の様子を中継しているそうです」


「へぇーコスプレ会場」


 テレビの画面を見てみると真夏のコスプレ祭りと見出しが画面の端にテロップが出ていた。

 テレビの画面にはアナウンサーと様々なコスプレイヤーが映っていた。

 会場にも見たことあるキャラがちらほらいる。

 空神雷音(からかみらいね)や夕紅光(ゆうべにひかる)のコスプレをした人も映っている。


『夏の暑さにも負けず、ここコスプレ祭りではコスプレイヤーが生き生きと自慢のコスプレを披露しています』


 アナウンサーが言うように本当にコスプレイヤー達は生き生きとしていた。

 砂漠のような猛暑の中、コスプレをしているだけでも暑いはずなのに、笑顔で写真対応をしてポーズを取っている。

 汗ひとつ流さずに好きなキャラになりきる姿がとても美しく見える。


『ここで参加者の一人にお話を伺ってみましょう。そこの方少しお話しいいでしょうか?』


『私(わたくし)でしょうか?』


 アナウンサーに話しかけられたのは黒いドレスを着た十代半ばの女性だった。

 漆黒の長髪をたなびかせ、怖さと美しさを掛け合わせたような笑みをカメラに向けていた。

 鋭く細い目から見えるトパーズのような朱色の瞳がテレビカメラを通して、こちらを見つめているようだった。

 その姿は誰もが一目でわかるようなキャラデザインだ。

 悪役令嬢のコスプレだ。


『何のコスプレをされてる方ですか?』


『コスプレ? あぁ・・・私(わたくし)が出てる作品、『人生に一度の不幸を体験したら後はオールハッピーな人生の悪役令嬢』のコスプレですわ』


『私(わたくし)が出てる? なるほど役に入り込んでいるのですね。お名前は何と言うのですか?』


『リオン・ラック・パーシモンと申しますわ。お見知り置きを』


 テレビに映ったリオンと名乗る女性はスカートの裾を持ち貴族のように綺麗なお辞儀を披露した。

 立ち振る舞いも気品に溢れ、顔も西洋人のような顔つきで美しく整っている。

 本当に作品の中からそのまま出てきたような完成度の高さだ。

 というか、このリオンという悪役令嬢ーー


「本人じゃね?」


「本人? どういうことですか?」


「いや多分この人、桃とか栗島瞬鬼と同じ体験をしている人だと思うんだけど・・・」


「・・・といいますと、つまりーー」


 桃が言葉の続きを言おうとした時、テレビの画面に映るリオンの声が響いてきた。


『私(わたくし)は明日もこの会場にいますわ。私(わたくし)と会いたい方はぜひお越しになってくださいまし!』


『えぇっと・・・会場からは以上です。スタジオにお返ししますぅ』


 アナウンサーがそう話すと中継はスタジオへと切り替わった。


「・・・だってさ。行ってみる?」


 俺の問いかけに桃は目を輝かせていた。

 まるで未知の世界を見つけた無垢な子供のように目を輝かせていた。


「行きます!」


「じゃあ明日会場行ってみようか」


「はい!」


 桃が張り切る姿を見て、俺も少し楽しい気持ちになった。

 その前にあのリオン・ラック・パーシモンというキャラについて調べてみるか。

 スマホを操作し、キャラの名前を入力する。

 すると、何件か検索にヒットし先程テレビであの悪役令嬢が言っていたタイトルが画面に出てきた。


「あった! へー原作は小説なんだ。まだ漫画化してそんなに経ってないのにキャライラストが沢山ある」


 漫画化したのは五月の上旬であり、話数も十話ほどしかない。

 それなのに漫画が掲載されているサイトにはコメントが千件に上るほど書き込まれている。

 とりあえずあらすじを読んでみようと画面をスライドした時、ある気になる文章が俺の目に写った。


「・・・女性会社員が転生した悪役令嬢!?」


 もし、テレビに映ったリオン・ラック・パーシモンが本人なのだとしたら、彼女はつまりーー


「異世界から現代に戻ってきた悪役令嬢ってことか!?」

人生に一度の不幸を体験したら後はオールハッピーな人生の悪役令嬢

あらすじ

 普通の生活をする女性会社員、柿本李恩(かきもとりおん)は仕事が終わり家で眠りにつくと悪役令嬢リオン・ラック・パーシモンとして異世界に転生していた!?

 悪役令嬢に転生した柿本李恩は身に覚えのない濡れ衣を着せられ国外追放されてしまう。

 しかし、その人生最大の不幸を清算するように幸運なことがリオンの元で巻き起こる。

 国外追放を受けた先でどのような出来事が巻き起こるのか、そしてリオンは異世界でハッピーに過ごせるのか。

 幸運に愛された悪役令嬢の物語が今始まる!!

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