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俺が最も愛するゲームの推しが画面の外に出て目の前に存在しているのだが!?  作者: 内山スク
栗編

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17/22

推し潜入作戦を開始する

 秋月生徒会長の家に殴り込むのはまずいので、秋月家に忍びことになった。

 場所は栗島瞬鬼が知っているため、案内してもらったのだが。


「・・・で、でかい」


 大人四人分の高さはありそうな、コンクリート塀と重厚そうな鉄の門。

 まるで漫画の中に出てくるお金持ちの家がそのまま出てきたような家だ。

 夜の暗闇に包まれて、どこまで塀が続いているのか正確にはわからないがその存在感は夜でも伝わってくる。


「ここが霞の家だ」


「これどうやって入るの?」


「誰かが外出の時に門を開けるからその時に入るしかないな。東雲桃の認識阻害の陰陽術で」


 栗島瞬鬼の言葉を聴いて、桃は胸をドンと叩いてみせた。


「おまかせを栗島殿!」


「本当に便利だね。桃の陰陽術」


「えへへ、それほどでもないです!」


 桃は役に立ったことが嬉しいのか胸を張って嬉しそうに笑っていた。

 嬉しそうに胸を張る桃も可愛い。


「おい、門が開いだぞ」


 桃に見惚れている俺を栗島瞬鬼の声が現実に引き戻した。

 鉄の門が開き、高級そうな車が門を通過した。


「よし、行くぞ」


 栗島瞬鬼の合図とともに、服にお札を貼り付けて門へと走り出した。

 門が閉まる前に中に入ることはできた。

 しかし、俺には桃と栗島瞬鬼の姿が見えているのだがこのお札は本当に効果あるのだろうか。


「・・・ねぇ、桃このお札って本当に効果あるの? 普通に俺から二人とも見えてるんだけど」


「大丈夫です、認識阻害のお札をつけている者同士は見えるのです。バッチリ他の人からは見えていませんよ」


「そ、そうなの?」


 さっきの車の横を素通りした時も、特に何も起こらなかったしちゃんと見えていないのだろう。

 もし、見えていたら不法侵入で捕まっていただろうし。

 いや今、現在進行形で不法侵入しているか。

 玄関を開けて、中に入ると玄関の前には大広間のような空間が広がっておりその中心には階段があった。

 屋敷の中まで漫画に出てくるような屋敷の内装のようだ。

 広くて迷ってしまいそうなのに、栗島瞬鬼は何の躊躇いもなく階段を登っていた。


「こっちだ。霞の部屋は二階にある」


「なんで知ってるの?」


「なんでって? 俺がこの世界に初めて出てきたのはこの家だぜ。部屋の場所ぐらい知ってる」


「あ、そうか」


「ん? なら瞬鬼殿はどうやってこの屋敷から抜け出したのですか?」


 桃の質問に栗島瞬鬼は黙り込んだ。

 確かに入り口が一つしかないのに、どうやって栗島瞬鬼は外に出てあの廃工場に匿われてたのだろう。


「ゴミに紛れて外に出たんだよ・・・家電ゴミと一緒に・・・」


「生ゴミじゃなくてよかったですね」


「いや、そういう問題じゃないでしょ!」


 能天気な推しの一言に思わずツッコミを仕入れてまった。

 そりゃ家の中にいないはずの人間が玄関から堂々と出て行ったら捕まるだろうしそうするしかないよな。

 栗島瞬鬼の後に続いて廊下を歩いていく。

 廊下にはドアがいくつもあり、部屋の数も異常に多い。

 しかし、栗島瞬鬼は迷うことなく廊下を進んでいく。

 一回来ただけなのによく迷わずに進めるものだ。

 推理による感と記憶力の賜物なのだろうか。


「着いたぞ・・・ここだ」


 栗島瞬鬼が立ち止まった部屋のドアはほかと変わらない普通のドアだった。

 だがほかの部屋と明らかに違う点が一つあった。

 それは中から女性が泣く声が聞こえてきたことだ。

 栗島瞬鬼は優しくドアをノックするとドアノブに手をかけた。


「・・・俺だ霞・・・開けるぞ」


 栗島瞬鬼がドアを開けると、部屋の中にはベッドに凭れ掛かるように座りながら泣いている秋月生徒会長がいた。


「瞬鬼様!? どうしてここに!」


 俺たちに驚いた秋月生徒会長はこちらを向いた。

 秋月生徒会長の頬にはぶたれたような赤い痕があった。


「秋月生徒会長! そのほっぺどうしたの!?」


「あぁ・・・これはお母様と言い争いになって、お母様にぶたれたの」


「何があったの?」


 秋月生徒会長は溢れ出る涙を手で擦ると、気持ちを落ち着かせるように話し始めた。


「ショッピングモールに行った日あったでしょ。その時、瞬鬼様と一緒にいるところをお母様に見られていたらしいの・・・」


 秋月生徒会長の声色は普段とは比べものにならないほど低く、そして哀しそうだった。


「それでお母様に秋月家の人間として、ふさわしくない人間関係を作るなと怒られて、口論になったの」


「ふさわしくない人間関係・・・」


 霧島から聴いた秋月家はお堅い家柄だという話が頭をよぎった。


「それで瞬鬼様と篠節くん、桃さんのことを悪く言われたくなくて反論したら転校させるって・・・」


「転校!?」


 娘の人間関係が気に食わないからって転校は常軌を逸している。


「・・・わかった、霞。もう泣かなくていいぞ」


 栗島瞬鬼の手に力が入り拳を握りしめていることに気がついた。

 それと同時に栗島瞬鬼の顔は鬼の形相と表すに相応しいほど怒りに満ちていた。

 そんな時突然ドアを勢いよくノックする音が響いた。


「霞! 部屋に誰かいるの? 男の声が聞こえてきましたけど」


「認識阻害のお札効いてるんじゃないの? 桃!」


「ん? 部屋に入った時から切れてますよ?」


「早く言ってよ!」


「みんなクローゼットの中に隠れてて!」


 秋月生徒会長に押し込まれるようにクローゼットに俺と桃は押し込まれるが、栗島瞬鬼はその場から動こうとしなかった。


「何してるの! 早く隠れなきゃ」


 俺の言葉は聴こえているはずなのに、栗島瞬鬼は微動だにしなかった。


「俺は霞の母親に言っておきたいことがある。お前らだけで隠れてな」


「何言ってーー」


 言葉を遮るようにクローゼットが閉まった。

 それと同時に部屋のドアが開き、秋月生徒会長の母親が部屋に入ってきた。


「何なの? あなたどこから入ってきたの?」


 俺と桃はクローゼットの隙間から外の様子を覗いた。

 栗島瞬鬼の顔は先ほどのような怒りに満ちた鬼の形相ではなかった。

 理性というなの仮面で怒りを押さえ、冷静にそしてただ一言力強く秋月生徒会長の母親にこう言った。


「俺は・・・秋月霞の一番の推しだ」

秋月霞の秘密その4

 秋月霞は心の奥では自由を求めいた。何者にも縛られず、誰にでも公平に、等しく与えられる自由を欲していた。

 その想いがーーその願いがーー栗島瞬鬼というキャラを現実世界に呼び寄せたのかもしれない。

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