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俺が最も愛するゲームの推しが画面の外に出て目の前に存在しているのだが!?  作者: 内山スク
栗編

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12/15

推しに会う

 秋月生徒会長に連れられて、俺は廃工場の前に来ていた。

 錆びついた工場の門には立ち入り禁止と書かれた看板が下がっていたが、秋月生徒会長はそんなものは見えないと言わんばかりに、門をよじ登り工場の中に侵入した。


「何してるの? 篠節くん。早く来なさい」


 学校では規則にうるさい秋月生徒会長は堂々と不法侵入したうえで俺にも強要してきた。


「は、はい・・・」


 俺が工場の門をよじ登り中に入ったことを確認すると、秋月生徒会長は廃工場の奥へと進んでいった。

 廃工場の奥に進む度に鼻につく鯖の匂いと、建物が軋む音が響いてくる。

 まるで仁侠映画の撮影場所のようだ。

 いや実際にヤクザとかが使ってたりして。

 長い廊下を抜けると、倉庫のような広い場所に出た。

 そして秋月生徒会長が立ち止まった。


「ここよ。篠節くん・・・あなたも私と同じ体験をしていれば彼のことも信じられるはずよ」


「・・・彼?」


 秋月生徒会長の言葉に首を傾げると、廃工場の天井から軋むような音が響いてきた。

 誰かが天井を歩いているような足音とともに、軋む音が強くなっていく。


「おお、そいつが霞が言っていた男か!」


 天井を見ると誰かが飛び降りて来た。

 夕焼けに照らされた黒い影は秋月生徒会長と俺の前に着地するとゆっくりと立ち上がった。

 明るい茶髪の髪に、茶色の薄いレンズが入ったサングラス。

 ワイシャツのような制服を着崩して着た不良のような姿をした青年だった。

 見るからにどこにでもいそうな不良そのものだが、俺はその顔と声、そしてその姿に見覚えがあった。


「もしかして・・・『不良探偵栗島くん』の主人公、栗島瞬鬼くりしままたたき?」


 俺の反応を見ると、栗島瞬鬼くりしままたたきは歯を見せて嬉しそうに笑みを見せた。


「おう、そうだ。俺の名前を知っているとは俺も有名になったってことか、ガハハ」


「本物なの? 秋月生徒会長」


「ええ、本物の瞬鬼様またたきさまよ」


瞬鬼様またたきさま?」


「そうよ! 私の推し栗島瞬鬼様くりしままたたきさまよ!」


 秋月生徒会長は目を見開き、俺の近くに来ると目の前にいる栗島瞬鬼くりしままたたきについて熱く語り始めた。

 クールで落ち着いているいつもの秋月生徒会長とは思えないほど早口で。


瞬鬼様またたきさまは今絶賛放送中のアニメ不良探偵栗島くんの主人公! 不良ながらに曲がったことを許さず自慢の洞察力と観察眼、そして推理力で事件を解決していくの!!」


「へ、へぇー」


瞬鬼様またたきさまは一見悪そうで怖そうな印象を受けるけど、被害者や仲間、ヒロインに見せる優しさや気遣いが良くて、ギャップというのかしらそういうところが瞬鬼様またたきさまの魅力なの!!」


 興奮した様子で栗島瞬鬼くりしままたたきに語る秋月生徒会長は我に帰ると、本人の目の前で語ったためか顔を赤らめていた。

 側にいる当の本人、栗島瞬鬼くりしままたたきも顔に手を当てていた。


「で、なんでその栗島瞬鬼くりしままたたきがこんなところにいるの?」


 俺の質問を聴くと栗島瞬鬼は髪を掻きむしるように上げた。


「あーここにいるのは霞の家には居られなくてなぁ・・・」


「家族に言い出せなくて、瞬鬼様またたきさまにはこの廃工場に住んでもらってるの」


 恥ずかしそうに話す秋月生徒会長に俺は喉の先まででかかった「こっそり買ってる捨て猫か!」という言葉を飲み込んだ。


「いやそうじゃなくてなんで栗島瞬鬼くりしままたたきがこの世界にいるの?」


「俺にもわからん。突然霧が漂ったような白い空間に飛ばされたと思ったら霞の目の前に立っていた」


「そう・・・私が瞬鬼様またたきさまのアニメをリアルタイムで視聴している時、テレビが光出したと思ったら瞬鬼様またたきさまが立っていたの」


 東雲桃しののめももがこちらの世界に来た時はスマホからだったが、どうやら栗島瞬鬼くりしままたたきはテレビの中から、正確にはアニメの中から出て来たようだ。


「篠節くん・・・あなたも私と同じ体験をしてると瞬鬼様またたきさまが推理しているけどどうなのかしら?」


「推理?」


 頭に疑問符を浮かべる俺に栗島瞬鬼はズボンのポケットに手を入れて、ガラの悪い不良のように説明し始めた。


「まずお前の従兄弟だと学校に来た話を聴いてから、この世界の住民じゃないと思ってた・・・そこでお前らを観察して、振る舞いや声、仕草から東雲桃しののめももである可能性が高いと判断した」


「観察・・・って俺と桃の生活見てたの!?」


「外での振る舞いだけな、プライベートは見てねぇよ。安心しろプライバシーは配慮する男だ俺は」


 サングラスをクイっと上げて自信満々に話す栗島瞬鬼の推理は当たっている。

 いや推理というか考察の域だが、確信に迫っている。

 これ以上隠しても意味ないし正直に話すことにした。


「・・・そうだよ。俺の推し東雲桃しののめももも現実世界に出てきたよ」


「やっぱり! 瞬鬼様すごい!!」


「ドンピシャだぜ!」


「でも帰り方を俺は知らないよ。俺の推しはスマホから出てきたし、今もこの世界にいるから・・・」


「いや俺は帰り方を知りたいんじゃない」


「・・・え?」


 栗島瞬鬼の言葉に俺は驚いた。

 てっきり桃のように元の世界への戻り方を知りたいと思っていたからだ。

 栗島瞬鬼は俺の目を真っ直ぐと見つめた。

 その目は何かを決意したような、覚悟を持った目をしていた。


「俺はこの世界に居続ける方法を知りたいのさ・・・」

栗島瞬鬼のキャラプロフィールその1

 曲がったことは大嫌い、仁義を通し約束は守り抜く。それが栗島瞬鬼という男。

 彼はその性分と推理で数々の事件を解決していくぞ。

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