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最寄りのバス停から、国立がん研究センター行きのバスに揺られること20分。県民プラザバス停で下車し、そこからさらに歩くこと10分。
近年学園都市として急速に発達してきた街並みを抜け、東大柏キャンパスに隣接する形で音構のオフィスはあった。
「ここオフィスって言うより」
「ま、ラボだな」
全体的に角張ったデザイン。窓が少なく、清潔感溢れる白を基調としたカラーリング。学園都市の中で、かつ大学と隣合う敷地という外的要因も相まって、ジェロムの言う通り音構の建物はまるで研究所の雰囲気だった。
「奏介、さっさといくぞ」
ジェロムが3歩先に立っている。
爽やかさを演出する水色のボタンダウンシャツに、グレーのスラックス。ダークブラウンの革靴とベルト、ビジネスバッグ。首からはIDカードホルダーがぶら下がって胸ポケットにしまわれている。アフロで黒くてマッチョなくせに、そのスマートな装いですっかりベンチャー企業の敏腕ビジネスマンのような出で立ちだった。
一方の自分。制服の無地の白シャツと黒のズボンでごまかしているが、ジェロムとの差は歴然。これではあんまりだったのでジェロムからネクタイを借りたが、「学生のインターンっぽくて逆にいい」と言われた。褒められた気がしない。
「ここでもたもたしている方が怪しまれる」
ビジネスマン・ジェロムはすでにオフィスの敷地に足を踏み入れていた。もう後には退けない。そう自分に言い聞かせて、奏介もジェロムの後に続く。
腕時計を見る。
16:30。
まだ河合との約束の時間よりも早い。でもそれでいい。河合がいない30分で、決着をつけるつもりだ。
「奏介、ここから先はポーカーフェイスだ」
奏介は黙ってうなずく。ぐっと奥歯を噛みしめる。
「行くぞ」
自動ドアが開く。




