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ワールズエンドの歌姫  作者: 染島ユースケ
4.旅立ちの歌姫
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 教室の外に出れば、街に出れば、気が晴れると思った。

 むしろ逆だった。

 反戦デモの群衆と、鳴りやまないシュプレヒコール。

 MiXの音楽を爆音で流して集団で踊り狂う大学生。

 道の真ん中でケンカする通行人と、それをはやし立てる野次馬の輪。

 それらをまとめて駆逐しようとする、パトカーのサイレン。

「今日はまた、一段とやかましいね……」

「だな」

 1ヶ月前なら異常事態に思える街の狂騒も、今となってはすっかり日常の一部だった。偶然か必然か、彼方がいなくなった日を境に世の中はおかしな方向に進み始めたらしい。

 国内では、暴動やテロ、凶悪事件が全国各地で起こるようになった。昨日は渋谷駅前で通り魔事件が起こり、多数のけが人が出たという。年間自殺者数が7月時点ですでに昨年の数を上回ったという話もある。

 しかし、それでも日本はまだマシな方だ。世界情勢に目を向けると、至る所で硝煙の臭いが立ちこめている。

 一度は鎮静化していたはずの中国の内戦。最高指導者が銃殺され、とうとう分裂を始めた旧北朝鮮。ウクライナのクリミア半島奪還作戦。中東ではイスラム系武装勢力により拡大される戦線。欧州で頻発する自爆テロ事件。

 全て、1ヶ月以内に駆け巡ったバッドニュースだった。MiX不在を嘆く教室の空気をそのまま膨張させて、世界中にばら撒いたかのように。

 四方八方から降り注ぐノイズをかいくぐり、お互いに寄り添って奏介と梨音は駅前へと続く大通りを歩く。途中、大きな機材を抱えたカメラマンとすれ違う。

 何も言わず、2人はカフェライナーへと向かう。

 そこだけが、1ヶ月前と変わらない。

 変われない自分達を優しく受け入れてくれる、オアシスだった。

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