表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールズエンドの歌姫  作者: 染島ユースケ
4.旅立ちの歌姫
PR
67/177

 話は1ヶ月前に遡る。つまり、ミューサン当日。

 最強のライブを大舞台で見せつけた4人は、最高に浮かれきっていた。

 他のバンドの音楽を楽しみ、食べ歩き、フェスの空気を余すところなく満喫した。ジェロムに至っては、ライブハウスでたまたま出くわした外国人と意気投合。最後にはお酒を奢られそうになっていた。その現場を目撃した3人が全力で止めたのは、言うまでもない。

 結局、フェスはライブハウスでの打ち上げまで楽しんで、締めくくりはもちろんカフェライナー。

「今日はいいライブ見せてもらったから奢るよ!」

 という夏樹さんのお言葉に甘え、それぞれが食べたいメニューを食べたいだけもりもり食べる。食べる。食べる。

 みんなここぞとばかりに皿を空け、一番ガタイのいいジェロムはもちろん、一番小柄で少食な彼方の前にも大皿が積み重なっていた。

 そして、最後は終バスに乗って帰る彼方を3人で見送った。

「ありがとう。今日は……最高の1日だった」

「何言ってんだ、これが俺達ジェロムズのスタートだ!」

「そうそう、新曲も増やさないとだし、今日のライブをきっかけにライブとか音源リリースのオファーが来るかもだし!」

「急にそこまでおいしい話はないだろー?」

「何今さらちっちゃいこと言ってるのよ! 夢は大きくでしょ!」

「そうだベリオンの言う通りだ! ドリームズ・カム・トゥルー! ネバー・ギブアップ! イエス・ウィー・キャン!」

「いろいろツッコミ入れたいけどまずベリオン言うな!」

 やたらとやかましい3人(主犯は2人だと奏介は主張したい)に対抗してか、「間もなく発車します」というどこまでも平坦で事務的なアナウンスが響く。

「それじゃあ彼方、また明日」

 奏介の別れの言葉に、彼方はうなずいた。控えめだけど、屈託のない笑顔で。

「うん、また明日」

 バスのドアが、炭酸の抜けたような音を立てて、境界線を引く。二度と開かないまま、彼方を連れていく。

 最後、確かに彼方は「また明日」と言っていた。

 だけど、その明日がジェロムズに訪れることはなかった。


 翌日、彼方は学校を休んだ。

 さらに次の日、その次の日も。彼方とはずっと連絡がつかず、学校に来る気配もなく。

 そして、休み始めて4日目。帰りのホームルーム。

 担任から無情な宣告が突きつけられた。

「残念なお知らせだが……遠野彼方さんは家庭の都合により、転校することになった」

 ジェロムズの、終わりの始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ