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「よって本法案を可決する!」  作者: ミスター&ミセスX
17/19

⑯人知れず…

―――20××年、×月×日、都内某所、情報管理局にて。


薄暗く、人気のない静かなオフィスにカタカタカタ、チチチ…、時々ブオオンッと機械を冷やすための冷送風機の稼働音が響く。


その24時間フル稼働しているコンピューターの名をαS13アルファエスサーティーン―――の、此処にあるのは数ある枝機(えだき)の内の一台だが―――という。先頃、科学技術省で各省庁の情報統合化を目的として新たに研究開発された日本が世界に誇る最新鋭のメガコンピューターだった。


此処ではその枝機を介し、管轄内各部署から更新されたデータを親機であるメガコンピューターへ送り、逆にメガコンピューターから送られてきた一部情報を精査分別し、必要な情報を然るべき部署、人へと迅速に配信する。


そうしたデータのチェックとウイルスの除去、情報の枝配信を行う分岐基地(アンテナ)局(情報管理局)は現在、全国各地に点在しており、今尚増加の一途を辿っていた。



その枝機(えだき)から無数に伸びた長いコードが白い壁状のパーティションの下を潜り抜け、二分割された向こう側の部屋にずらりと並ぶ長机の上、設置された子機PC約180台に繋がれていた。

その画面上―――空中に浮かんだ緑印字の透明ディスプレイ―――にはメガコンピューターの親機と枝機、枝機と各所間でリアルタイムでやり取りされている情報が、しかも一台一台すべて違う内容が、目まぐるしい速さと勢いで流されていく。


そして、その中の一画面にそれは映し出された。



ブン…。


『宛、関係者各所 様。 種、W-22 個人情報更新。


題名、PコードNo/L636451WZ923-7 氏名、三島亜季人(29)について、以下の通り記載情報を更新する。


20××年、×月×日、△△△刑務所を○時○分頃、出所した三島亜季人(29)、前科二犯、住所不定、無職は東京都××区×○番地‐号にて営業中の居酒屋店『うろこ家』で友人らと飲食後、×時×分頃一人で店を出た後、消息を絶つ。


刑務所を出所後から居酒屋店に至るまでに確認された足取りは以下の通り………。また、現在確認されている身元不明遺体に該当者はなく、追加の目撃情報も報告されていない。その後の足取りは依然として不明。現在、鋭意捜索中である…』


画面手前に該当者の半3D画像(顔面アップと全身像)が固定で映され、その後ろに下から上に緑色の文字列が自動で流されていく。

そして、


ピッ、『New!!』新たに追加された項目のところに差し掛かると一旦停止。その下の更新文字は緑色から臙脂(えんじ)色に変わり、その新項目にはこう書いてあった。


『逮捕令状―――罪状、並びに逮捕理由―――度重なる裁判所への出頭要請、召喚命令を無視した事による第○○条、法令違反。及び第○○条に抵触した罪により……』


他にも服役中の態度や刑罰など様々なことが事細かに書き連ねられ、最後にそれらを理由にこんな文章が書き添えられていた。


『……尚、これまでの犯罪の悪質さ、再犯率の高さ、逃亡の可能性等を考慮し、犯人が武器を所持し抵抗してきた場合その生死は問わない』


そして更に画面右寄りに新たに、顔写真付き《全国指名手配書》の小画面が立ち上がり、コンマ一秒遅れて下部欄にスラスラと手書きのデジタル署名がサインされると、―――ピッ。


『―――送信しました―――』



送信完了、確認画面が表示される。

そこからまた画面は直ぐに次の案件に切り替わるが、この間僅か5秒間ほど。驚くべき処理能力の速さだ。


が、人ひとりいなくなっている割にはちょっと安易で事務的過ぎやしないか。今のこの光景をもしも今尚、必死で行方不明者を捜している彼らの家族や近親者たちが見たらどんなに怒り、嘆き、悲しむだろうか。そうでなくても不快には思うのは間違いない。


だが、それも一つの時代の風潮(ながれ)なのだろう。現在、日本では毎日、邦人、外国人問わず、数え切れないほど多くの人間が何かしらの事件に巻き込まれ、或いは自らの意思で姿を消し、消息を絶っているのだ。そのいちいちに首を突っ込み、構っていられるほど日本の警察も暇ではないし、そんな余裕も持ち合わせていない。


ただ一つ言わせてもらえば、そうして嘆き悲しんだり、怒ったりしてくれる家族(みかた)がいる内は警察も容易に見切りを付けたり、行方不明者を犯罪者扱いしたり出来ない。また、そこまで非情にもなれなかった。


その辺りから考慮しても男、三島は正に自業自得の極みであり、そうなるべくしてなった、としか言いようがない。救いようがない、とも言う。


こうして男の更新記録は誰の目に触れる事も無く、その他大勢のアップデート情報と共に光の速さで処理され、流れていった。


また、その事を依然囚われの身である三島自身が知る由もなく。

それでも世界は今日も平和に回り行く。




いつもお読みいただきましてありがとうございます。

今話でスッキリしていただけた読者様には次話はもしかしたら読まない方が良いかもしれません。(まあ、作者は基本平和主義なので書いたとしてもそこまで過激な事にはならないかと思いますが)…という事で、一応ご注意のほど宜しくお願いいたします。

<(_ _)> by 作者

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