運命の賭け
すごく久しぶりの投稿です。
「わたくしはそなたには聞いていない。」
そう言ってクリスチャンのウィッグを外す。
「わたくしの娘クリスティーヌ。」
母である大公妃には全てお見通しだったようだ。
フランソワーズの様子は使用人達が見ていた。それを随一報告してくれたのだ。
「一体何の真似であろう?クリスティーヌ。こんな街娘に自分の振りをさせて屋敷に入れるとは。」
「では母上こそどういうおつもりですか?私の許可なく縁談話を勝手に進めるとは。一言相談してくださっても良いのでは。」
母と娘の関係はあまりよろしくないようだ。
フランソワーズはその様子を傍で見ていた。
「王家の婚姻には当人同士の承諾など必要ないであろう。」
「母上、どちらにせよ僕はもう男です。だから結婚はできません。」
両者ともお互いの主張を譲らないようだ。
しかしクリスチャンの次の一言がフランソワーズの運命を変えることになった。
「でしたらこのフランソワーズを僕の代わりに嫁がせればいいのです。どうせ先方は僕の顔なんて知らないから分かりませんよ。」
(私がハプスブルク家に?!)
そう期待したのもつかの間だった。
「何ふざけたことを言っておる?こんな宮廷の作法も知らぬ娘がハプスブルク家になど嫁げるはずがない。大公家、いえフランスの恥じゃ。」
やっぱりそうだ。貧民の娘が王族に嫁ぐなんて夢のような話があるわけない。しかしクリスチャンから出てきたのは意外な言葉だった。
「母上、もしフランソワーズに宮廷作法が身についていれば宜しいのですか?」
「お前も見て分かるであろう。この娘に礼儀作法などないことぐらい。」
「ないなら身につけさせれば良いのです。僕が彼女を社交界一の華形令嬢にしてみせますよ。それができたらハプスブルク家との縁談は白紙にして頂けますね?」
クリスチャンは母である大公妃と約束した。2カ月後に開かれる王妃の舞踏会にフランソワーズを連れて出席すること。舞踏会で貴族の娘としての振る舞いができていればクリスチャンは自由の身。しかしフランソワーズが平民の街娘と知られたらクリスチャンはクリスティーヌに戻りハプスブルク家との縁談を受けること。
「そんな約束をされたのですかご主人様は」
アパートに戻って執事のロバートに話すと呆れたような返事が返ってきた。
「仕方ないだろう。ハプスブルク家との縁談を解消するにはそれしかないと。」
「そうかもしれないがフランソワーズはどうするんだ?利用してることになるんだぞ。」
その時奥のドアが開きフランソワーズが現れた。
「ロバートさん、私利用されてるなんて思ってません。」
「そうだ、フランソワーズだってそう言っている。」
「だって一流の令嬢になればハプスブルク家の王子様と結婚できるんですよ。そしたらドレス着て宮殿を歩き、舞踏会やお庭でお茶会だって。」
フランソワーズは目を輝かせ語り出す。
「そういうことだ。僕が学校に行っている間は彼女のこと頼んだよ。」
「分かりましたよ。」
ロバートは半ば呆れ気味に答えた。
言い出したら聞かない性格はクリスティーヌの頃から変わっていないのだ。
次回からはプリンセスレッスンに入っていきたいと思います。




