メタモルフォーゼ
「お嬢様、一緒に戻りましょう。」
「断る。僕はもう公女クリスティーヌではなくクリスチャン、ただの小学校教師だ。クリスティーヌは死んだとでも言ってくれ。」
しかし一向に使用人は引き下がらない。
「大公妃様はお嬢様の婚約の準備を進めておりまして、相手方もフランスにいらっしゃるそうです。両家の間で話がまとまれば式はすぐに執り行われるでしょう。」
(結婚からはもう逃げられないのか?)
ふと隣にいるフランソワーズを見る。
「分かった!!だか条件がある。」
クリスチャンの条件はこうだ。戻るのは今すぐではなく次の日曜であること。
それで使用人を納得させ帰ってもらった。
その傍ら今起こっている出来事に驚きを隠せず1人放心状態の者が1人。フランソワーズである。
クリスチャンはフランソワーズの元へと駆け寄る。
「フランソワーズ、君は僕のお嫁さんになるんだよ。」
フランソワーズには分からなかった。一体自分に何が起きるのか。ホテルから逃げてきたところを身なりの良い青年に助けられ、その青年は実は大公妃の子供で女の子、そして私に結婚を申し込んできた。
「あの、クリスティーヌ様、いえクリスチャン様?」
「クリスチャンでかまわないよ。どうした?」
聞きたいことらはたくさんあった。だけど話が唐突過ぎて何から聞いたらいいか思い付かない。
「あの、私」
「ごめんね。当然こんな話になって。」
クリスチャンは日曜に大公妃に会いに行く。そこでクリスティーヌのふりをして自分を婚約者だと紹介してほしいというのだ。結婚相手が他にいると分かれば大公妃も諦めると思ったのだ。
「勿論タダでとは言わない。報酬は出す。」
仕事がなくて困っていたフランソワーズには願ってもない話だ。
「分かりました。私やります。」
「よしじゃあおいで。」
そうと決まれば話は早い。クリスチャンはフランソワーズを自室に連れていき持ってきたドレスをフランソワーズに着せる。淡いブルーのドレスだ。
「あのいいんですか?こんな素敵なドレス」
さっきホテルで着せられた白のドレスよりもずっと上質だ。
「ああ、君は今日からベルサイユの令嬢クリスティーヌだよ。さあ座って」
クリスチャンは今度はフランソワーズの髪をとかし始める。フランソワーズの髪はクリスチャンと同じブロンド髪だ。
「さあおいで」
とかし終わると姿見の前に連れていく。
「これが私?」
生まれて初めてのドレスに胸をはずませるフランソワーズ。その隣ではクリスチャンも驚いていた。
「素晴らしい。僕が女だったの雰囲気とそのままだ。」
(女だった頃?一体どう言う意味なのか?)
「あの、執事の方はあなたをクリスチャン、しかしさっき来た屋敷の使用人はクリスティーヌと呼んでました。どちらが本当のあなたなのでしょうか?」
フランソワーズに尋ねられふと思い返した。
「ごめんね。フランソワーズ。君に一方的にお願いして何も話していなかったね。僕のことしっかり知ってほしい。」
クリスチャンは自分の生い立ちを話し出した。




