下町の乙女
クリスチャンは今日が初出勤。小学校には6才から10才までの子供達が通っておりクリスチャンは一番下の6才の子供のクラスを任された。
その日は子供達の前で教科書を読んだりフランス語の書き方を教えたりするだけで終わった。
子供達が帰ると書斎で1人授業で使う教科書の整理をしていた。すると学院長先生が入ってきた。年配の男性の先生だ。
「クリスチャン先生、初日はどうでしたか?」
子供達は皆元気がいい、そして自分の話にも興味を持ってくれて教室での時間は楽しくてあっという間であった、だけどクリスチャンは1つだけ疑問に思うことがあった。
「勿論子供達は元気があって素晴らしいです。ですが1つ気になることがありまして。」
「何かね?」
「僕のクラスは皆男の子ばかりでしたが女の子は他のクラスなのでしょうか?」
「先生、この学校に女の子なんていませんよ。読み書きなんて習う必要はありませんから。」
「ですが修道院では貴族の令嬢達は皆読み書きや礼儀作法、それからダンスも」
「先生、外は外、ここはここです。そのうち慣れるでしょうから。頑張って下さいね。期待してますよ。」
それだけ言うと学院長先生は書斎を後にした。
クリスチャンは帰り道学院長先生に言われたことが頭から離れなかった。
(女の子は読み書きなんて必要ない。)
本当にそうだろうか?自分は少女時代から家庭教師の先生がいていろんな物語に触れてきた。当然家庭教師も女性でフランス語の綴りだって教えてくれた。だから物語の世界にだって触れることができたのに。
そんなことを考えていると1人の少女がもの凄いスピードで走っきた。
「きゃっ」
少女はクリスチャンにぶつかり二人は倒れてしまう。
少女は間近で見ると胸元の空いた白いドレスを着ている足は膝のあたりまで見えている。娼婦なのだろうか?それにしてはまだ表情はあどけない。
「大丈夫か?」
クリスチャンは少女に手をさしのべる。
「ありがとうございます。」
少女はお礼を言って足早に立ち去ろうとした。
「いたぞ!!」
貴族のなりをした男達が少女を追ってくる。
「助けて下さい。追われているんです。」
何か事情を察したクリスチャンは少女の手を取り走り出す。
「こっちだ!!」
2人は路地裏に隠れ男達から逃げきった。
「ありがとうございます。」
「いいんだ。君こそ何があったんだ?」
クリスチャンは少女を連れて自宅に帰ると執事のロバートが出迎えてくれた。
「ご主人様、この娘は?」
「さっき街で出会った。貴族の男達に追われていたから連れてきた。」
「君名前は?」
「フランソワーズです。」
少女はそう名乗った。
フランソワーズは17才の少女。彼女は元々花屋で働いていたがお店に借金があり閉店。仕事を探しているところに1人の男が声をかけてきた。それがさっきの貴族の男だ。彼はフランソワーズにホテルの仕事を紹介すると言ってきた。華やかな衣装で働けると言われ誘いにのった。
次の日男のもとを訪れるとすぐに胸元の空いた白のドレスを着せられ客室へと連れて行かれた。そこには客の男がいた。状況を察したフランソワーズは一目散にホテルから逃げてきたのだ。
その時アパートの扉を叩く音がした。ロバートが出る。そこには大公妃の使いで来た使用人がいた。
「お嬢様はこちらにおりますよね?」
使用人はロバートが止めるのも聞かず部屋に入ってくる。
「クリスティーヌお嬢様、大公妃様がお待ちです。今すぐお戻り下さい。」
部屋に入るや否や使用人はクリスチャンに告げる。




