五月 『GW三日目―思考回路がまったく読めない(二人目)―』
「へぇ…! やるじゃん! ありがとっ!」
直後、僕の右腕に彼女の左手が飛んできた。
バシィ!
「いったあ!」
と、叫んでしまうほどの大打撃だ。…いや、それ以前になんで叩くんだ!?
「え? なんだって? もう一回? しょうがないなぁ~」
え、ちょ、待っ…! 『いったあ!』=もう一回、なんて聞いたことないぞ!?
ガッ!
…いや本当にそう聞こえたんだって。空耳じゃないって。
「か、肩が…」
「え~? なになに~? 聞こえなぁ~い」
ゴッ!
心が泣いてます。体が悲鳴を上げています。さて、どうすればいいでしょう?
答えは簡単――
「本当に痛いからやめて! お願いだから! 右腕がやばいんだって!」
とまあ、こう言えばいいでしょ。
「あははっ…君、最高だよ! ボクに仕えてくれ! ボクと付き合ってくれ!」
相手がそれを止めるなんて言ってない。
そして左腕にも彼女の手が飛んできた。だが、今回は無事にキャッチできた。
「『右腕はやめて』って意味じゃないから! 暴力をするのをやめてって意味だから!」
僕は安心する暇もなく彼女に訴える。
「ええ~? 今日は今まで生きてた中で一番テンションが高いんだから暴れずにはいられないんだよお~」
なんてひどい理由なんだ!
「君のその馬鹿高いテンションのせいで僕は被害を受けてることをその理由で治めたくないんだけど!」
「馬鹿高いなんて失礼な! 是非世界一高いと言ってくれ!」
何のプライドじゃ。
「ま、でもボクにしっかり教えてくれたから許す!」
「僕は助かってないから許せない!」
だめだ…勝手すぎる。
「もういいよ。僕はもう帰るよ…」
「ここ、優君の家だけどね」
今まで黙ってたすみれがフォロー…ではないけど、まあ、つっこみを入れた。
関係ないかもしれないけど、右手が痛すぎて忘れてたということにしておこう。
ちなみにここはリビングだ。
「というわけで、早く帰ってよ。クルミ」
「な、なんだと~!? それはボクに対して帰れと言っているのか?」
クルミはわざとらしく後ずさりをしながら、わざとらしく動揺して、わざとらしく確認をとった。
「いや、うん。はい」
うん。言いたいこといっぱいあるよ。
「ボクの彼氏はなんて残酷なことを…」
優はそれを聞いた瞬間立ち上がり、玄関の扉と同じくらいの大きさの窓を開けた。そして、客に接するような笑顔で言った。
「こちら、クルミ様限定の特別な帰り道となっております。早く帰れますし、なにより安全ですよぉ」
「帰らせる気満々じゃないかっ! …行くけど」
クルミは(自分の靴が玄関にあり、今裸足というのにもかかわらず)そのまま窓の外へ飛び出た。
「…まったくわからん」
僕はため息と一緒にその台詞を吐いた。そして、サッ、と窓を閉め、施錠した。
「よし」
「優君容赦ないね」
「それ前にも誰かに言われた気がする」
ドンドンと窓を叩く音が聞こえた。もちろんクルミだ。優が鍵をかけたことにようやく気付いたのだろう。
「ちょ、なんで閉めるの!」
こうなることくらい予想しようや。さて、と。
僕は机に置いてたスマホを手に取り、電話のアプリを開いた。そして、クルミに見えるように電話番号を入力する。
一、一、〇。
それを見たクルミは時折後ろを見ながら、あああ、と口を大きく開け、窓を叩く速度を上げた。
「やめてえ! なんでよお! ちょっと叩いただけでしょお!」
いや、ちょっと叩いただけって…。
僕は構わず電話をかける。
「…あ、警察の方ですか? すいません、僕の家に不審な人物が来てるんですよ。はい、場所は――」
「優君悪魔みたい」
すみれの心に突き刺さるつっこみを耐えつつ、警察に場所を教える。
クルミは涙目になり、さらに窓を叩く速度を上げた。
「ほんとごめんって! もう一生しないから! 反省するから! お願いやめて!」
窓割れちゃうんじゃないか?
「…今の言葉、本当だね?」
「え? ああ、うん。マジ」
僕は開錠して、窓を開けた。
「ごめんごめん、警察に通報したのは冗談だよ。ほら、あがって」
「もう、ひどいよお! 冗談だめっ!」
やりすぎたかもしれないことは認める。
「あ、やっぱ待って。タオル持ってくるからまだ上がらないで」
「へーい」
こうなった経緯を説明しよう。
午後四時頃にすみれが僕の家を訪ねてきた。
「優君…! お願い! 力を貸してほしいの!」
彼女に抱き着かれながら言われた台詞だ。
「ちょ、そんな慌ててどうしたの?」
「だってぇ! クルミちゃんがあ!」
すみれは後ろを指差し、もう一人の人物の存在を露にする。
「…ふっ、気付かれてしまったのか。しょうがない」
とまあ、男っぽい口調でそこに姿を現した女子が、すみれの言うクルミちゃんだ。キャリーバッグを引いている。…なんで?
「誰?」
僕はクラスの人だろうと思いながら、尋ねた。
「誰とは失礼なっ! ボクは知る人ぞ知る、あの胡桃沢優那だぞお!」
クルミは腕を組み、あたかも自分が有名人のような自己紹介をした。
「僕はその『知る人』に入ってないんだ」
あの、なんて言われても僕は知らない。残念だけど。
「なんだとっ? 貴様は同じクラスの倉ノ下君だろぅ? なぜボクを知らない!」
やはりクルミは三年三組のクラスメイトの一人らしい。
「そりゃ、今まで僕の前に姿を現さなかったからでしょ」
すみれは僕からそっと離れて、一息ついた。
「クルミちゃんはね、普段こういう性格してないの」
苗字の胡桃沢の胡桃からとってクルミね。
「だよね。変だと思った。いつもこんなのだったらすぐ目に付くだろうし」
「自慢じゃないけど…ボクは、学校ではいつもこんなバカみたいなやつじゃないんだぞ」
自虐してるぞ。あと認めてるんだ。
「それ、さっきすみれが似たようなこと言ったよね」
「まあまあ、最後まで他人の話をよく聞け」
「…………」
僕は黙って聞こうとしたのだが。
「なんか言えよー!」
「さっさと話進めてくれ!」
「しょうがないなあ」
伊万里と同じように話してて疲れる相手がもう一人増えた。そして思考回路がまったく読めない。
「ボクは学校ではこんな性格じゃないん――」
長くなるのでカット。
「てなわけで、頼みごとがあるわけよ!」
玄関でクルミの話が始まってから三〇分経過して、彼女の話し方に慣れてきた頃、やっと本題に入った。だが、その三〇分の中で、クルミのハイテンションな理由はわからなかった。ほとんど同じようなことを繰り返し繰り返し聞かされ続けたからだ。でも、彼女は学校ではいつも静かに読書などをして過ごしているらしい。だから、初めて会った時が今のクルミだった僕は、想像もつかない。
「ふっふっふっふ…それはだな」
クルミは手を腰に据えて、反対側の手でビシィ! と、僕を指差した。
「ボクに勉強を教えてほしいっ!」
「すみれ、力を貸してってそういうことね」
優は肩をすくめた。
「うん。私じゃわからないから」
「というか、なんで僕なんだ? 他にもいると思うけど。それに僕は男子だし」
「ごめん、それは私が勧めたの。私の命が危なかったし」
「最後の発言の意味はわからないけど、とりあえず勉強教えないといけないってことね…」
すみれはコクっと頷いた。
僕は後ろを向いて、リビングに向かって声を上げる。
「伊万里ー! 勉強教えるの手伝ってー!」
「え? 伊万里いるんだ」
「僕の家じゃないとやる気でないから…って言ってた気がする…」
昨日家に泊まって、今日も泊まるからなんて言えない!
だが、いくら待っても返事が帰って来なかった。
「伊万里?」
僕がそうつぶやいたと同時に、黒い影が高速で僕の隣を通り過ぎて行った。
「買い物行ってくるから頑張るのよ~!」
捨て台詞を吐きながら、すごい勢いで自転車に乗ってどっかへ行ったのは伊万里だった。
くっそお…階段に隠れてずっと話聞いてたのか? ずるいぞ…。
「てことで、ボクに勉強を教えてくれ!」
「優君…私を殺されたくなかったら大人しく従ったほうがいいと思うよ」
ドラマとかで犯人が人質を捕まえたときに言うような台詞を、犯人ではなく、人質が言った。
「もう…避けようがないのか…」
僕はすみれの忠告を聞いて、諦めた。
「さあて! 早速教えてくれぃ!」
僕たちはリビングの机を囲んだ形で座った。
「教えてって言われても、まずどの教科か教えてくれないと…」
「そうだねぇ。教科は…理科、だあ!」
いちいち言動と行動がうるさいなぁ。
「いいじゃん優君、たまにはこういう息抜きも必要なんじゃない?」
「僕ってそんなにストレス溜まってるように見える?」
すみれは、ふふふ、とだけ口にして黙り込んだ。
「ボクはここが苦手なんだっ! イチから説明してくれば助かる!」
「それなら『苦手』じゃなくて『できない』って言ってくれ…」
それから約三〇分が経過して、クルミがわからなかったところをイチから教えることができた。
「へぇ…! やるじゃん! ありがとっ!」
直後、僕の右腕に彼女の左手が飛んできた。
バシィ!
「いったあ!」
――という感じで今に至る。
「はい、しっかり足拭いて」
「うんっ!」
ほんっと、千穂理と伊万里が合わさったような性格だな。…あの暴力を除けばだけど。
「いやあ…倉ノ下君は面白いのお~! わしゃ気に入ったぞい! 結婚しないかのう?」
注意。クルミの台詞です。
「さっきから付き合ってとか彼氏、結婚しないって、言わなきゃならなかったってことだよね?」
優は極めて真剣な顔でクルミに尋ねた。
クルミはうつむいてしばし黙り込んだ。
「それにしてもこの家、庭がすごいし、すごくきれいで気に入ったから今日からボクはここに住む!」
はぐらかした…か。
「私もクルミと同意見だよ~」
すみれは気付いていないのかな? まあ、おふざけはここら辺にしといて。
優はスマホを起動し、あるアプリを開き、その画面を見た。そして――
「すぅ……勝手に他人の家の庭に上がって隠れてないで出てこいよ! 不審な人物!」
空いていた窓の外に向かって、思いっきり叫んだ。
「優…君…?」
「はぁ…はぁ…」
やがて、庭に植え付けてある木の陰から、帽子をかぶった男性が現れた。
「そんな大声で叫ばないでくれるかなあ…」
その声で、すみれとクルミは窓の外を見た。
「だ、誰!?」
「ストーカー…?」
やはり、間違いじゃなかったようだ。
「ここでばれてしまったか…それなら、こうするまでだ!」
その男性は、右手にナイフ、左手に縄を持ち、僕たちに向かって走り出した。が――
「いっ!?」
その場で倒れ、顔面を地面に強く打ち付けた。
「あ~あ…僕の庭を荒らさないでくれるかな? おっさん」
「て…めえ…!」
男は立ち上がり、また走り出す。
なんて無能なんだ…。逃げようとしないのか? まあ逃げようとしても無駄なんだけどね。
僕は網戸を閉めた。
「うらあ!」
男は勢い余ってナイフを網戸に突き刺した。次に、網戸を開けようとした。
「来ないで! 変態!」
クルミは顔を青ざめて、身を引いた。僕はそれを見て、次は窓を閉め、施錠し、呆れ顔で男性を見た。
「ねえおっさん。大人なのに、もうちょっとマシな判断はできなかったの? 頭、使おうよ」
とりあえず煽ってみた。
「くっ…!」
男は狼狽えた。優の家は高さが大人の身長ほどある木製のフェンスで囲まれていて逃げ道は一つしかないため、男はその方向へ走って逃げた。
「優君! 追いかけなくていいの!?」
「そうだね。外に出てみようか」
僕たち三人は玄関の扉を開き、外に出てから男が逃げた方向を見た。
「警察…?」
クルミは驚きの表情を隠せないままでいる。
「優君、もしかしてさっきの通報って…」
「うん、そうだよ。ストーカーがいることはなんとなく気付いてたからね。いやぁ、近くに警察署があるっていいね」
「動くな! そのナイフを下ろして手を上げろ!」
「くっ! 捕まるもんか!」
男は警察の発言に背き、優たちがいる玄関に向かって走った。
「二人とも、下がってて」
僕は玄関から出る前に手に取った、少し大きめで軽い水鉄砲を構えた。ちなみに水鉄砲の先端と構造は少し改造していて、威力が高く、速度も速くて、発射後に水が徐々に前方に広がっていくようになっている。見た目ではわからないが、人に向けて撃つと危なっかしい代物だ。だけど今回は訳が違う。
標的を定めると、僕は水を発射した。
水鉄砲から水が発射され、とてつもない早さで放射された水が男の目に直撃し、広がった水は男の上半身をびしょびしょに濡らした。最初に当たった水は、おそらくクルミに殴られたときと同じくらいの痛みだろう。
「うああ!!」
男はその場で止まり、目を押さえた。
「よっしゃあ、ヒット!」
僕は思わずガッツポーズをしてしまった。
警察は今だとばかりに、その男の身柄を拘束した。
「君たち大丈夫かい? 君、名前は?」
警察官の一人が優たちの下へ駆け寄った。
「あ、先ほどそちらに通報させていただいた、倉ノ下、と申します」
「君が倉ノ下君? …倉ノ下? いや、まあいいか。お手柄だったね。ありがとう」
「いえいえ、たまたまですよ」
「あの射撃がたまたまなわけないでしょ。それに庭でストーカーが転んだの、あれすごい不自然だったんだけど」
すみれはあの瞬間をよく見てたらしい。
「実は、たまたまあの場所にだけ透明の糸が張ってあったんだ」
「透明の糸?」
すみれに代わってクルミが問う。
「うん。防犯用って言って、父さんが庭に何本か設置していたんだ。でも、親がいなくなって僕が庭の手入れをするようになってから、動きにくいからその糸はほとんど処理したんだ。でも、残ってたやつがこうして役に立ったんだからラッキーだったよ」
「なるほどねぇ…」
優は右手に持っていた水鉄砲を自分の目の前に持ってくる。
「ちなみにこれは、護身用で――」
「護身用つよっ! 一体どうなってんの!?」
クルミはまるで男の子がヘラクレスオオカブトを捕まえたときのように目を輝かせて水鉄砲を見た。
「護身用が水鉄砲って…」
警察官は半ば呆れ顔でこちらを見ている。
「じゃあ見ててくださいよ。あちらに的が見えるでしょう?」
僕はそう言って、フェンスに設置された一つの的を指差す。
「いきますよ」
僕の声と一緒に発砲された水は、真ん中は渦を巻いて直進する高威力の水と、シャワーのように徐々に広がっていくがそれでも並みの水鉄砲に劣らない威力を持った水に分かれ、それぞれ的に直撃した(後者の水は的全体を覆うようにして的に中った)。
「え? なにその水鉄砲」
警察官は口をポカン、と開けてその水鉄砲を見ている。
「だから、護身用と言ってるんですよ。単に改造しただけです」
「単にって…普通の人はしないことじゃないかしら?」
気が付くと、すぐそこに袋を手に提げた伊万里が立っていた。
「あれ? 伊万里? いつの間に…」
「さっきからいたわよ。帰ってきたら警察のサイレンがうるさくて心配したわ。でも今のを見て思ったけど心配は無用だったようね」
クルミは伊万里の近くに寄り、小さい声で伊万里にささやいた。
「へぇ…心配、したんだ…」
「そ、そりゃあクラスメイトなんだから心配するわよ!」
「それ以前に、なんで倉ノ下君の家から出てきたのかなぁ?」
「うっさいわね。教えないわよ」
伊万里は僕たちを見た。
「優の射撃術、どう見ても素人じゃないわよね」
「ああ、それは私も思ったよ」
「…昔、父さんが警察の仕事をしていたときに、水鉄砲で射撃の方法を教えてもらってたんだ」
と、突然、警察官に肩を掴まれた。
「ま、まさか! もしかして君のお父さんって昔、巡査長をお勤めに?」
「ええ、そうですけど…」
「やはり! てことは、つまり君は元巡査長の息子さんなんだね?」
目の前の警察官は目を輝かせて幾度も尋ねる。
「はい。そうです」
「私は長谷部雅功、倉ノ下元巡査長と一緒に行動していた者です」
長谷部さんは目を潤ませた。
「よかった…よかった…」
「うわっ」
僕は抱かれていたことに気付いた。いや、昨日からこれで三回目なんだけど。
「私は、あなたのお父さん…倉ノ下元巡査長に助けていただいたことがあるんだ…。でも、感謝の気持ちを伝える前に逝かれてしまった。だから、せめて君に…」
長谷部さんは僕から離れ、涙を拭って敬礼をした。
「倉ノ下巡査長! ありがとうございました!」
「え? え?」
周りで捜索をしていた警察官や、僕の家の前を通っていた歩行者が驚きの表情でこちらを見ていた。
「倉ノ下君、本当にありがとう」
「え、あ、まあ、どうも…」
と、ほっ、と息をついたのも束の間、次々と警察官や歩行者が周りに集まってきた。
「え!? 元巡査長の息子さん?」
「あら~大きくなったわね~」
「一目見たかったんだ!」
「女の子を三人も連れてるなんて、幸せ者だね~」
うわああ…これマジで苦手。前みたいに気絶して熱を出したくない!
僕は急いで家の中に隠れた。
玄関の扉を隔てた先からは、わいわいがやがやといろんな声が聞こえてくる。
「…父さん、そんなに有名だったんだね…」
父の知られざる一面を知ることができ、なんだか心がほっこりしていた。
「優君、私たちを置いて家に逃げ込むなんて…ずるいよ!」
すみれは玄関の扉を開いて僕の家に入り、続いてクルミと伊万里も入ってきた。
「ああ、ごめん」
「今日はここで夜を過ごすよ!」
「それなら私も親に許可を取ってくるよ」
「私も一緒にいていいかしら?」
僕の周りの人は止めても聞かない人たちだから、もう止めないよ。
「今から夕食作るから、好きにして」
「わーい! やったあ!」
「…クルミってこんな性格だったかしら?」
「今とってもハイテンションなのです!」
「人格変わったわね…」
マジでそうなんだ…。
今は午後七時。みんなで料理を食べている。今日はアジの塩焼きを主菜とする、和風定食だ。といっても量は多過ぎず少な過ぎず、みんなに聴き回ってそれぞれ適量を用意した。
ちなみに、すみれは親の許可が下りたらしい。『私合わせて女子が三人いるから大丈夫、なにかあったらすぐ帰って来れるし』という理由で許可をもらった、と彼女から聞いた。食事中に聞いたことなのだが、クルミは中学生にしてモデルをやっているらしく、最近、スートカー行為をされているような気がしていたらしい。クルミの容姿はモデルとしては十分過ぎる。
そんで、クルミに今日泊まることを親に言わなくていいのか聞いてみたところ、僕と同じで両親ともにおられないらしく、しかも家がないため、あのキャリーバッグに物を詰め、友達の家で泊めてもらっているらしい。そのため、今日は僕の家で過ごすと言っていた。ちなみに今日まではすみれの家にいたらしく、旅行も一緒に行ったと聞いた。だから一緒にいたのか、と納得したよ。伊万里のことは本当のことをかくかくしかじか説明して、すみれがなにかをすごく我慢しているのを見た以外には何もなかった。
で、クルミのテンションが馬鹿…世界一高い理由は、初めて友達と一緒に旅行へ行って、しかも誕生日プレゼントを買ってもらった、というものだ。昨日はクルミの誕生日だったらしい。覚えておこう。
「ほら、倉ノ下君もそんな顔しないでさあ!」
そんなふうに考え事をしていると、隣に座っていたクルミが僕の背中を叩いた。
「がはっ」
思わず食べたばっかりのアジの身を出しそうになったが、ギリギリセーフだった。けど、そのかわりむせた。
「ごほっごほっごほっ…」
「あ、ごめん」
隣に座った僕が悪かった。というか、反省してないようにしか感じられない!
夕食を食べ終えた優たちは、それぞれの時間を自由に過ごした。いつかここのシーンも描写したいと思う。今日はまだ続く。なぜならここに来てまた事件が起きたからだ。それは――
「なんで僕が浴場にいること知ってて入ってきてるんだ!」
「ええ…? だって、なんか面白そうだったもん」
優は、タオル一枚で体を隠しているすみれを見てそう叫んだのだった。
読んで頂き誠に感謝いたします。
作者は優が持ってる水鉄砲が欲しいです。植物の水やりが楽になるかも。
次回もお楽しみに!




