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五月 『GW二日目―二人きりで明日まで過ごせば?(笑)―』

 暑い。うるさい。帰りたい、でも帰れない。

『――手を離さないでね』

 ふと、少女の言葉が頭を(よぎ)る。ここに来る前に言われた言葉だ。彼女のためにも帰るわけにはいかない。

 雲一つない夜空。湖を沿って建設された堤防には、浴衣を着たカップル、友達同士、家族などがいて、今にも湖で何かがありそうな雰囲気を漂わせている。

 周りは人で溢れている。身動きがとりにくい。

 僕は今、目の前に差し出された手をつないで、離さないようにしている。人ごみのせいで腕だけしか見えない。はぐれないように握りしめる。が、次の瞬間、無邪気な子供がぶつかって、繋がれた手が離れてしまう。

「あっ!」

 手が離れてしまったため、少女は口を開けてこちらを振り向こうとしたが、周囲の人たちに呑まれてゆく。人ごみの中から伸ばされた手は僕を待たずにみるみるうちに見えなくなってくる。

「――! ――!」

 ついにその人物は人ごみの中に消えてしまった。

「――」



「――みれ!」

 その瞬間、僕は叫びながら天井に向けて右手を差し伸べていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…。また…夢、か?」

 僕はその右手を顔の前に持ってきて、まじまじと見つめた。

「ああ…だめだ、忘れてしまう。どんな夢だったっけ…?」

 実は、最近こういう夢をたまに見ることがある。だが、毎回すぐに記憶から抹消される。

 気付けば、僕は全身にびっしょりと汗をかいていた。

 今のシーンってよくあるよね。こういうことなんだ。…とりあえずシャワーを浴びてから朝ごはんを食べよう。



「ごちそうさまでした」

 合掌を済ませると、皿を洗い、歯磨きをした。

「今日の天気は…」

 午後は曇りか。降水確率四〇パーセント…あの二人に任せよ――お。

 手に持ってたスマホから着信音が鳴った。

 予期せぬ着信だったため一瞬少しだけ驚いたが、すぐに内容を確認する。

『俺、今日出掛けないといけないからそっち行けねぇわ。ごめん』

 あ、マジか。

 すぐに返信を試みる。

『了解。伊万里(いまり)にも言っておくよ』

 僕が返信すると、吹き出しの横に『既読』と表示された。

『ほんとにすまん。じゃ、よろしく』

 数秒後に(はやと)からの返信が来たので、

『うん』

 とだけ答えておいた。

「さて、伊万里の電話番号は…連絡網どこやったっけ」


 家中のありとあらゆるところを探したが、結局見つからなかった。


『ごめん、連絡網失くしたから電話できない』

 と、隼に返信した。

 『既読』が表示されてからしばらくすると、

『確かまだもらってなかった気がする。英に聞いてみるわ』

 すぐに返信が来た。

「その間何しよっか」

 勉強するのもいいけど…ラノベの続き読もう。


 それから一〇分ほど経過したところでまた着信が来た。

『三組の連絡網作るの遅れてるらしく、まだ持ってないからわかんないだってさ』

 果たして伊万里は来るのだろうか。彼女のことだから来るとは思うけれど。

『了解。伊万里に任せるよ』

 返信してから数秒後、

『おーけー。じゃ、また今度な』

 と返ってきた。

『また今度』

「めちゃくちゃ便利だなぁ」

 電子機器を初めて使った人ような台詞を吐いた僕は、スマホの電源を切ると、窓から空を覗いた。

「…雨、降らないといいけど」



 午後一時。(ゆう)の準備が整ったところで、玄関のチャイムが鳴った。

「やっぱ来たか~」

 玄関のドアを開けて顔を出す。

「あ、優。隼はもう来てるのかしら?」

 目の前には伊万里が立っていた。なにやら大きいかばんを肩からかけている。

「今日は来ないってさ」

「え? え? えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 僕が答えると、彼女は今の位置から半径百メートルの円の中全域に響きそうな声で絶叫した。

 それを目の前で受けた僕の耳は、両手で両耳を防いだのにもかかわらず、しばらく耳鳴りがしていた。

「…ど、どうしたの? そんな絶望感半端ない顔して」

 そんな絶望感半端ない顔をした伊万里は、頭をかかえてその場にしゃがんだ。

「そ、そんなあ…そんなあ…ほんとにそうなら…」

「ねえ、本当にどうしたの? 伊万里」

 僕もしゃがんで彼女の顔と同じ位置まで顔を近づける。

「私の人生が終わってしまうぅ~!!」

 素の喋り方の理解不能な台詞と一緒に僕の右頬にパンチが飛んできた。

「ぐえっ」

 近い距離からの不意打ちだったため、さすがに避けることができなくて、見事に炸裂した。

 僕は殴られたところを両手で押さえ、伊万里を見た。

「いててて…ここで話しててもろくなことがないから、とりあえず上がって」

 伊万里は顔を上げてから立ち上がった。

「わかったわ。あ、パンチ当たったかしら? そうね、許してあげてもいいわよ?」

「ん? え? いや、え? それ僕の台詞じゃないかなぁ?」

「あら? あ、大丈夫かしら? …って言うつもりだったのよ」

 めちゃくちゃ違うじゃん。わけわかんないよ。



「ふぅ」

 伊万里はリビングに足を踏み入れると、すぐさまソファに腰を下ろ…横になって一息ついた。

「まるで自分の家のように扱うのはやめてもらおうか」

「いいじゃない。これフカフカだからお気に入りなのよ」

 ああ…だから伊万里と話してると疲れるんだよ。

「それより、さっき言ってたことの意味がわかんないんだけど」

「ああ、あれね。実は…今日、優の家に泊まろうかと隼と企ててたのよ」

「…………へ?」

 え? なに? 泊まるの?

「いやいやいやいや! ちょっと待ってちょっと待って! おかしいおかしい」

「今更遅いわよ。荷物持ってきちゃったわよ」

 そのデカいかばんには泊まる用の持ち物が詰め込んであるってわけね。納得できねー。

「まずそんなこと隼から聞いてないし! 勝手に泊まるとかマジありえないし! それに中学生だけだし!」

 伊万里はバッ! と上体を起こす。

「え!? 隼から聞いてないのかしら!? 嘘でしょ!?」

 え? もしかして隼が伝えるつもりだったの?

 僕は急いでラインを開き、隼に聞いてみると、こんな返事が返ってきた。

『あ、ごめん。伝えるの忘れとったわ。まあ伊万里来たなら二人きりで明日まで過ごせば?(笑)』

 (笑)って…責任感のかけらも感じない!

「というわけで、最初に戻るけど…隼が来ないってことは…優と私、二人きりで過ごすってことになるのよ。それを隼はわかってるわけで。ほら、これが他の人に知られたら…私…」

「僕に責任は無いからね!? …いや、伊万里。そんな悩まなくても帰れば解決するでしょ」

「それならとっくに帰ってるわよ! それができないから言ってるのよ」

「それはどういうことかな?」

 伊万里はソファに普通に座り、僕を見た。

「両親は姉と祖父母に会いに、実家に帰るからって…今日は家に帰って来ないのよ」

「なんで一緒に行かなかったの?」

「それを知ったのは今日の朝早くで…通信手段は無いし、勉強が大変だからって言って行かなかったわ。それに友達の家に泊まりに行くとも言ったわ」

「…つまり、帰るわけにはいかないと」

「そうなのよ」

「そこをなんとか! ほら、まだ外も曇りかけてるだけで…」

 僕は窓のそばまで歩いて、外を見た。外からはサーという音が聞こえ、窓には無数の雨粒が付き始めた。

 あ…雨が降ってやがる! しかもみるみるうちに強くなってく…!

「伊万里、あれだね。これ、二人で過ごせって言われてるようなもんだね」

「やっとわかってくれたかしら?」

 振り向くと、伊万里は立ってこちらを見ていた。

「ひとまず泊まる件は置いといて…買い物、どうするの?」

 伊万里は僕が立っているところまで近づき、手で窓をそっと触れた。

「そうなのよね。この雨じゃあ、とても行けないわよね」

「やっぱそうなるよね。よかった、保険かけといて」

 彼女は眉を寄せてこちらを向いた。

「保険?」

「うん。今日の天気を見て、もし午後に雨が降ったらってことで午前中に食材とかを買っておいたんだ」

「そ、そうだったの? あんた…すごいわね」

「そうでもないと思うよ。…てことで、買い物の話は解決だね」

「ねえ…ここに泊まらないと、私死ぬわよ?」

「泊まっても死ぬんじゃないの? ごめんごめん、わかったから腕噛まないで。僕が死ぬ」

「ぬぐぐぐ…不味い」

 感想は求めてないから。

「あ、そうそう。言ってなかったけれど、両親が帰ってくるのは明後日よ」 

 ――つまり、二日間二人で過ごすの? もう勘弁してよ。



 そういうわけで、まず、第一目的である勉強会を…二人だから勉強でいいや。二人で勉強を始めた。

 今日も昨日と同じ机を使用し、また、座っている席も同じだ。僕の向かい側の席に伊万里が座っている。

 今日の僕の課題は昨日の時点で終わっているので、僕は一年生の復習をすることにした。伊万里は歴史の課題プリント五枚を終わらせるつもりらしい。

 最初に伊万里が口を開く。

「優、なんで一年の復習なんてしてるのよ?」

 ノートから顔を上げると、伊万里は机に肘を乗せ、(てのひら)に顔を乗せていた。

「今年で受験生だからね。もっと早くから始めればよかったんだけど…他の事でできなかったんだ」

「ふ~ん。あんた…いやなんでもないわ」

「あ、うん」

 それからは、雨の降る音と、シャーペンを滑らせる音だけがこの空間を支配した。

 この静けさなら、とても集中しやすい。

 僕はそう考えながら復習をしていると、いくつか思い出せない部分が見つかり、やっておいてよかったと思わせる復習に感謝までしていた。

 たまに伊万里が聞いてくることがあり、伊万里の回答を見ていると、九割九分僕の答えと合致していた。聞いてくるというより、確認だったのだ。おそらく彼女は社会が得意分野なのだろう。これで国語と英語もよければ、文系ということでラノベ作家にはとても向いているのだろう。

「おーい、優? 聞いてるのかしら?」

 考えごとをしていて伊万里の声が聞こえていなかったらしく、今の台詞でやっと我に返った。

「ん? あ、ごめんごめん。何?」

「ここ、こういう答え方で合ってるかしら?」

 伊万里は優が見やすいような向きでプリントを優に見せ、問題のところに指を差した。

「えーと…うん。僕もこういう答え方をするよ。合ってるかはわからないけど、僕が覚えてる限りでは丸だと思うよ」

「ありがと。優はなんでも知ってるのね」

 彼女はプリントを元の位置まで戻し、僕を見て微笑んだ。

「そうかな…勉強に関しては、今まで習ったことを頑張って覚えてるくらいだから」

「その頑張り、いいわね」

 うん。なんかあれだな。塾の先生か家庭教師みたい…どっちも経験ないけど。

「ありがとう。伊万里も頑張れよ」

「私はやる気とか無いからなあ…」

「やる気とかじゃなくて、どれだけ続けれるか、なんじゃないかな」

 僕はノートに視線を落とし、続ける。

「僕は勉強しないと本当にやばいってのもあるかもしれないけど、別に好きでやってる訳じゃないんだ」

「え? 本当かしら? いつも勉強してるイメージあったから、勉強が好きな変わり者だと思ってたわ」

 変わり者…世の中には勉強が好きな人もいるだろうから、変わり者ではないと思うけど。

「まあ、そうなんだよ。僕は、友達とかゲームとか持ってなかったし、いつも勉強や読書をしてたんだ。それで、親はもういないけれど、せめて天国では悲しませないように勉強を続けてて…今もずっと続けてるんだ」

「なにかしらのきっかけがあると私でも続けることができるのかもしれないわね」

「そうだね。それが原動力となって、勉強を続けることができているのかもね」

「なにかきっかけがあるといいなあ」

「伊万里、ラノベ作家を目指してるなら、伊万里の得意分野である社会と、あと国語と英語は熱心にできるんじゃないかな」

「うん、ありがとう。私、文系を頑張る」

 伊万里はコクっと頷くと、プリントに視線を落とし、再びシャーペンを動かし始めた。



 二人が勉強を始めて二時間が経った。

「伊万里、休憩挿む?」

 集中が途切れかけてると思ったため、一応声をかけてみた。

「いいや、今いいところだから…先に終わらせてしまおうかしら」

 見てみると、課題プリントの五枚目の裏で、しかもあと五問で終わりそうなところだった。

 さすが、得意分野。今日の分はもうすぐ終わりそうだ。

 あと五分もあれば、余裕で終わらせるだろう。僕はそう考え、お菓子とジュースを用意することにした。

「チョコいいかな。クッキーも入れとくか」

 僕はおやつが入った箱を取り出し、伊万里に聞こえない声でつぶやいていた。

 ジュースは…いや、伊万里はココアで僕はコーヒーにしよう。

 僕は昨日とは違って、ちゃんとコーヒーの粉と砂糖、熱湯、牛乳を混ぜてコーヒーを作った。ココアも同じようにして作った。

「よし! 終わった!」

 おやつの準備が終わると同時に伊万里の元気な声がこの空間に響いた。最後の問題に少しだけ時間がかかったらしい。

「お疲れ」

 僕はお盆に、コーヒーが入ったコーヒーカップとココアが入ったマグカップ、チョコとクッキーをきれいに並べた皿を乗せて机まで移動し、それらを机に置いた。

「お、おいしそう…」

 伊万里は目の前に置かれたココアとお菓子を見ながらつぶやいた。

「チョコとクッキーは手作りじゃないけど、許して」

「いいよいいよ。ありがとう! 手、洗ってくるね」

 彼女は立ち上がり、キッチンに移動して手を洗った。

 僕はその間に彼女の課題プリントと筆記用具を片付けておいた。

「あ、本当にありがとう、片付けてくれて」

 伊万里はダイニングまで歩いて戻り、椅子に座った。

「伊万里、疲れたでしょ? だから」

 僕も椅子に座る。

「優しいね。では、いただきまーす!」

 彼女は初めにマグカップに口を付けた。僕もコーヒーを飲み、チョコをつまんだ。

「おいしー!」

 気付いてないみたいだけど、彼女は素の喋り方に戻っている。()()()の伊万里も元気な女子って感じでいい。

「よかった、口に合って」

 彼女はクッキーをポリポリと少しずつ食べている。

「あ、そうだ、伊万里」

「なぁに?」

 伊万里は手を止め、優を見た。

「ちょっと前の話で、スルーしちゃってたんだけど、伊万里ってお姉ちゃんいるの?」

「…うん。いるよ。姉っていっても、三か月の差で、実際は同じ中三なんだけどね」

「え、そうなんだ。…それで、なんで一緒に暮らしてないの?」

「姉は、祖父母の生活を支えたいから、そっちに住んでるの。だから、なかなか会う機会がなくて…」

 伊万里は少し残念そうな顔をした。

「なんかごめんね。せっかく今日、会うチャンスだったのに」

「なんで優が謝るの? 私が決めたことなんだからいいじゃない。それに、また会えるから」

「そうだね」



 お互いの飲み物と、お菓子が無くなったところで、優が口を開いた。

「この後、何する?」

「ねえ…家事手伝っていいかな?」

「え? いいけど、なんで?」

「今日はなんだかやりたい気分なの!」

 伊万里は元気いっぱいの笑顔で答えた。

「そうは言っても、そんなにすることないけど」

「そんなの気にしないっ! さあ何をすればいいの? 教えて!」

「なら…ちょっと掃除を…」

 と、僕が言いかけると、突然、伊万里は空気が抜けた風船のようにしぼんでいった。

「そ、そうじぃ…? もっと、ほかのやりたい。ほら、洗濯物とか…」

「気にしないんじゃないの…? ま、いいけど。それなら部屋干ししてた洗濯物たたむの手伝って」

「はーい!」

 彼女は元の姿に戻り、元気よく返事をした。



「あ、ごめん。下着は僕がたたむから、残りのものはよろしく」

「うんっ!」

 私は今、部屋干しで乾いた洗濯物をたたんでいる。でも、優一人分だけだから、量はかなり少ない。

 私の隣には優が座ってて、自分の下着をたたんでいる。

「優、これ一分もあれば終わる量だよ」

 私はたたみながら彼に話かけた。彼と話すことがとても楽しいからだ。

「そうだね。頼むほどでもなかったね」

 優はいつも言葉を返してくれる。聞き上手なのか、二人きりだからかわからないけど、話相手としては私は優が好きだ。気軽に話すことができる。

 ほとんどたたみ終えたところで、少しちょっかいをかけてみることにした。

「ふわぁ…ごめん、ちょっと寝てい…」

 言葉を言い終わる前に優の肩に頭を寄せて寝たふりをした。

 これは全くの嘘なんだけど、優がどんな反応をするのかが楽しみでやってみた。

「伊万里? 寝ちゃったのかな?」

 優の声が聞こえる。戸惑ってるのかな。

「よし」

 なにをする気なんだろう…?

 そう思った直後、頭から優の肩が消えて、倒れそうになった。が、次に背中と膝裏に温かいものが触れた感触があった。そして、私の体は宙に浮いた。

 これはまさか…世に言う、お姫様抱っこ!?

 私は優に寝たふりをしていることがばれないように目を閉じ続けた。本当は見たかったけれど。

 そして、いつの間にか私は本当に眠りについてしまっていた。



 私が目を覚まして目をぱちぱちさせると、まず最初に天井が見えた。それから周囲を見渡すと、本棚や勉強机、椅子が目に入り、椅子の上に優が座って読書をしていることがわかった。

 上体を起こすと、私はベッドで寝ていたことが分かった。

「あ、伊万里起きたの?」

 優は視線を本から私に向けた。

 さっきの優の行動を思い出して、少し恥ずかしくなってきた。

「もうちょっと横になってるね」

 おそらくこれは優のベッドだろう。ふかふかで気持ちいい。まるで優のように優しくつつんでくれる。

 優は…お兄ちゃんみたいだな…。

 私はまたしても、眠りに落ちてしまった。



「まだ寝てるのかな?」

 僕は料理を始めて十五分ほどたったところでそんなことをつぶやいていた。

 結構寝ちゃってるけど、夜寝れるだろうか。なんだか伊万里が妹みたいに見えてきて、そんな心配をしてしまう。

 今日はさつまいもとかぼちゃを大量に使ったヘルシー(?)料理にした。喜んでもらうとうれしいのだが。

「あ~あ、よく寝た」

 伊万里がそんな台詞をつぶやきながら部屋に入ってきた。

「なんか、かぼちゃとさつまいも? の匂いがすごい」

「よく気が付いたね。その通り、さつまいもとかぼちゃをたくさん使っているよ」

 伊万里はキッチンに足を踏み入れた。

「へえ、おいしそう! 私、さつまいも大好きなの! 期待してるね!」

「それはよかった。あとちょっとでできそうだから、テレビでもつけて待ってて」

「うん! 頑張れー!」

 思ったけど、伊万里があの喋り方じゃないと、ほんとに妹って感じになるね。



 料理ができてから、二人で食べ、その間も伊万里は僕に対して本当の妹のようなしぐさ、振る舞いをしていた。おそらく彼女には自覚は無いだろうから、より兄弟っぽく感じられたひと時だった。

 シャワーを浴びる時間まで二人でテレビを見たり話をしたりして、シャワーは伊万里、僕の順で浴びることにした。


 彼女は布団を持ってきてない(持ってこれるわけないけど)ため、僕のベッドを貸した。僕は他の部屋の押し入れにあった布団を自分の部屋まで持ってきて、伊万里と話してから一緒の部屋で寝ることにした。

「ねえ、優」

「ん?」

 僕が布団を敷いている間に、伊万里が声をかけてきた。

「私の喋り方さ、今の素の方か、もともと喋ってた方どっちが好き?」

 ベッドの上で横になっている。

「僕は…今のがいいかな」

「そう? ならこのままにするね」

 布団を敷き終えた僕は、布団の上に座る。

「いいけど、他のみんなはどうするの?」

「そうだね…優君だけと話してる時にこれで喋るね」

「わかった」

「それと」

 伊万里はベッドをぽんぽんと叩き、優に尋ねた。

「なんで、躊躇いなく私にこのベッドを貸してくれたの?」

「そりゃあ、僕だけベッドで寝るのが申し訳ないからだよ。一緒に寝るわけにはいかないからさ、優先的に伊万里にベッドを使わせることにした」

 僕がそういうと、伊万里は「ふぅ~ん」と口にしてから、むくっと体を起こした。そして、次の瞬間――

「うわっ!」

 僕の胸元に飛びついてきた。彼女に抱かれた。

 彼女は顔を上げ、上目遣いで言った。

「ふふ…優、ちょっとやってみたいことがあるの」

読んで頂いて誠に感謝致します。

GW二日目の話でしたが、いかがでしたか? 次回もおたおしみに!

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